パリにある七つの美術館の訪問記。
その七つの美術館とは、ドラクロワ美術館、ピカソ美術館、エスパス・モンマントル=サルヴァドール・ダリ美術館、ブールデル美術館、クリュニー美術館、マルモッタン美術館、モロー美術館。このうち五つの美術館には行ったことがあり(訪れていないのはピカソ美術館、ブールデル美術館)、親近感を覚えるし、著者の語り口に実感をともなって、その場所を思い描ける。
ドラクロワ美術館はなかなか見つからない場所にある、クリュニー中世美術館の荘厳な建物、マルモッタン美術館との関係でとりあげられているジヴェルニーのモネの家の庭園のすばらしさ、モロー美術館の内部の独特の空気、このあたりはみなソウソウうなずきながらの読書だった。
それぞれの美術館がその特徴、雰囲気、そこに展示されている個々の作品をとおして、的確に、いきいきと描かれている。同時にそれらの美術館がある地域の様子も細かく描写され、これによってまたそれぞれの美術館の個性が際立つしかけになっている。
新たにいろいろ新しい知識も得た。モンマントルのテルトル広場にいる似顔絵描きは登録制である、ダリ美術館はパリっ子がそこをパーティで貸し切りで使うこともあるらしい、マルモッタン美術館の傍にあるラヌルグ庭園にある像は羅・フォンティーヌ像である、ブールデルはベートーベンに傾倒していた、マレ地区はユダヤ人の街でファラフェルという食べ物がお勧め、などなど。
パリの街をしりつくした著者が伝える、パリの香りがいっぱいの素敵なガイドブックだ。