【岩崎俊夫BLOG】社会統計学論文ARCHIVES

社会統計学分野の旧い論文の要約が日課です。

時々、読書、旅、散策、映画・音楽等の鑑賞、料理とお酒で一息つきます。

ヨーロッパのたえなる大河-ドナウ

2009-02-26 00:30:50 | 旅行/温泉
加藤雅彦『ドナウ河紀行』岩波新書、1991年

        
       

 ドナウ河はドイツのシュバルツバルトの森から2900km,8つの国を通過して旧ソ連のウクライナまで流れる大河です。

 著者はこの河をくだりながら,諸民族の興亡,文化の往来,何よりもかけがえのない人々の生活を見つめています。冷戦で引き裂かれた世界が民主化の波で揺り戻しを受け,眠っていたドナウ世界が浮きあがってきました。著者は,それをまず確認しています。

 国別の章立てになっていますが,「ドイツ」では源流を巡る論争,「ニーベルンゲンの歌」の解説が興味をひきます。

 「オーストリア」ではワインの産地ヴァッハウ,ウインナ・ワルツ,ウィーン料理(レティコバ夫人)の魅力とともにハプスブルク家盛衰の記述が面白いです。

 「チェコスロバキア(本書執筆当時)」では「プラハの春」を忘れてはならないと語っています。あわせて大戦後のドナウ改造計画の失敗が紹介されています。

 「ハンガリー」ではブダペシュトの美しさが語られています(わたしは25年ほど前、そして4年ほど前に訪問)。

 「ユーゴ」では色濃いトルコの影響とともに,諸民族を国という単位でまとめる難しさを痛感しました。

 「ブルガリア」では正教の布教に使われたキリール文字に関する知見を得ました。

 「ルーマニア」ではローマの影響の強さを再認識しました。

 そして,ソ連。豊かなドナウ下りが愉しめる一冊です。