加藤雅彦『ドナウ河紀行』岩波新書、1991年
ドナウ河はドイツのシュバルツバルトの森から2900km,8つの国を通過して旧ソ連のウクライナまで流れる大河です。
著者はこの河をくだりながら,諸民族の興亡,文化の往来,何よりもかけがえのない人々の生活を見つめています。冷戦で引き裂かれた世界が民主化の波で揺り戻しを受け,眠っていたドナウ世界が浮きあがってきました。著者は,それをまず確認しています。
国別の章立てになっていますが,「ドイツ」では源流を巡る論争,「ニーベルンゲンの歌」の解説が興味をひきます。
「オーストリア」ではワインの産地ヴァッハウ,ウインナ・ワルツ,ウィーン料理(レティコバ夫人)の魅力とともにハプスブルク家盛衰の記述が面白いです。
「チェコスロバキア(本書執筆当時)」では「プラハの春」を忘れてはならないと語っています。あわせて大戦後のドナウ改造計画の失敗が紹介されています。
「ハンガリー」ではブダペシュトの美しさが語られています(わたしは25年ほど前、そして4年ほど前に訪問)。
「ユーゴ」では色濃いトルコの影響とともに,諸民族を国という単位でまとめる難しさを痛感しました。
「ブルガリア」では正教の布教に使われたキリール文字に関する知見を得ました。
「ルーマニア」ではローマの影響の強さを再認識しました。
そして,ソ連。豊かなドナウ下りが愉しめる一冊です。
ドナウ河はドイツのシュバルツバルトの森から2900km,8つの国を通過して旧ソ連のウクライナまで流れる大河です。
著者はこの河をくだりながら,諸民族の興亡,文化の往来,何よりもかけがえのない人々の生活を見つめています。冷戦で引き裂かれた世界が民主化の波で揺り戻しを受け,眠っていたドナウ世界が浮きあがってきました。著者は,それをまず確認しています。
国別の章立てになっていますが,「ドイツ」では源流を巡る論争,「ニーベルンゲンの歌」の解説が興味をひきます。
「オーストリア」ではワインの産地ヴァッハウ,ウインナ・ワルツ,ウィーン料理(レティコバ夫人)の魅力とともにハプスブルク家盛衰の記述が面白いです。
「チェコスロバキア(本書執筆当時)」では「プラハの春」を忘れてはならないと語っています。あわせて大戦後のドナウ改造計画の失敗が紹介されています。
「ハンガリー」ではブダペシュトの美しさが語られています(わたしは25年ほど前、そして4年ほど前に訪問)。
「ユーゴ」では色濃いトルコの影響とともに,諸民族を国という単位でまとめる難しさを痛感しました。
「ブルガリア」では正教の布教に使われたキリール文字に関する知見を得ました。
「ルーマニア」ではローマの影響の強さを再認識しました。
そして,ソ連。豊かなドナウ下りが愉しめる一冊です。