書名で手に取ってしまい、読んでみて、著者・安里賢次さんの破天荒な人生に驚き、彼の人生哲学に納得しました。沖縄県那覇市で「まさかやぁー」という太鼓ライブのお店の店主であり、琉球民謡の歌手の安里さんは中学卒業後、様々な職に就くも、酒癖が悪さから喧嘩早く、アウトローの道に足を染めました。
その当時の逸話で、彼の母親の息子への愛が身に染みました。安里少年が喧嘩に負けて、やり返そうと思い、家へ戻り、包丁を手に持ったところ、母が様子を尋ねます。彼は「殺しに行く」と正直に告げます。すると、母も台所から包丁を持ち出し、一緒に行くと言い出す。
「おまえがそれくらい思いつめるほど苦しんでいるのなら、私もそいつらが憎い。だから私も殺す。ひとりよりふたりがいいよ。さあ、行こう。」「おまえは金(きん)なんだよ。鉛みたいな人間とどうして命を替えるのか。」
こんなに母親から愛されている彼が本書の中で悟っています。
「無条件の肯定は、どこかで自分の人生を支える強さにつながっている。」
そして、彼の人生観の根底には「他利」が息づいています。「今生(こんじょう)での自分の役回りは人助け。命はそのためにある。」生きる意味に気付いて、人生が豊かになる。歩んできた経験だけでこれだけの生き様が語れるのは素晴らしい。読めば、必ずポジティブになれます!
『人生には「まさか」の坂がある』(安里賢次著、二見書房、本体価格1,200円)