キンタマ虫
沖縄には面白い地名がいくつもある。「面白い」というのは、地元のウチナーンチュにとっては普通だが、沖縄の言葉に慣れない倭人にとっては「面白い」ということ。たとえばオンナソンインブ。想像力の豊かな人は女村陰部、あるいは女尊陰部などを思い浮かべるかもしれない。女だらけの村の陰部、または女の尊い陰部とかである。実際は、オンナソンインブは恩納村伊武部と書く。沖縄の歴史ある地名である。まことに由緒正しい字である。これら恩納、伊武部から私は、邪なイメージは何も思い浮かばない。
筋玉虫という字を貴方はどう読むだろうか?下品な私は、キンタマムシとつい読みたくなる。キンタマムシと音だけを聞くと、いったいどんな虫?と下品な興味がふつふつと湧き上がる。のであるが、筋玉虫という字を考えると、「あー、筋のあるタマムシだな」と容易に想像がついてしまう。漢字は人の想像力を狭めてしまうようだ。
アヤムネスジタマムシ(綾胸筋玉虫):甲虫目の昆虫
タマムシ科 紀伊半島以南、南西諸島、台湾に分布 方言名:不詳
名前の由来は資料が無く不明。タマムシは広辞苑にあり、玉虫、または吉丁虫と漢字表記され「タマムシ科の甲虫の総称。また、その一種」とあり、その一種は「(体は)金属光沢のある金緑色で・・・美しい」とのこと。玉には「美しいもの」(広辞苑)という意があるのでタマムシという名前が付けられたのだと思われる。アヤ(綾)は「物の面に表れたさまざまの線や形の模様。特に、斜めに交差した模様」(〃)で、本種の胸に斜めの筋がはいっていることからアヤムネスジとつくものと思われる。
『沖縄昆虫野外観察図鑑』に「アオムネスジタマムシに酷似」とあったが、別種であることは素人の私でも判った。でも、初めは図鑑の写真と実物を間違えた。本種の方がより光沢がありきれいに見える。また、体も一回り小さいとのこと。
体長20ミリ内外。成虫の出現は4月から8月。寄主はイタジイ、マテバシイなどカシ類の枯木。アオムネスジタマムシは海岸近く、本種は林に生息とのこと。私の職場は林と呼ぶほど木が生い茂っているわけでは無いが、そこで数回発見した。
記:ガジ丸 2006.11.28 →沖縄の動物目次
2014.7.28訂正加筆
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『日本の甲虫』(株)北隆館発行