ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

オキナワクワゾウムシ

2011年07月23日 | 動物:昆虫-甲虫目

 ゾウのダンス

 大学生の頃、井の頭公園は遊び場所であった。友人たちと連れ立って夜通しギターをかき鳴らし歌ったことを覚えている。またある日、桜吹雪の舞う中をボートに乗った。その時、相手は男の友人であったが、沖縄から来た青年二人は初めて見る桜吹雪に感動したことを覚えている。それからまた別の日に、夏の日差しの中をボートに乗った。その時の相手は女性であった。高校生の頃から好きな人であったが、ずっと「好き」と言えなかった人である。食事して、散歩して、ちょっと飲んで、駅で見送るまで8時間か9時間も一緒にいたのに、その時も言えなかった。見送ってから後悔したことをよく覚えている。
 というような思い出がいくつもある井の頭公園、ある冬の日、一人で隣接する動物園へ出かけた。公園には一頭のゾウがいた。ゾウはその足を鎖で繋がれて、前後左右に数歩しか歩けないような状態であった。冬の日、風が冷たい日、南国生まれのゾウは寒かったのであろう、まるでダンスをするかのように前後左右に数歩ずつステップを踏んでいた。恋人のいない青春を送る淋しい青年は、それを見て歌を作った。
 井の頭の寒い空に 陽だまりの ゾウのダンス
 子供たちが会いに来るので いつも愉快に踊りだす。
 (中略)
 二百円の回転木馬と フルーツケーキに ゾウのダンス
 マフラー風になびかせる 笑い声が 空を翔ける
 一つ覚えの ゾウのダンス 前へ三歩 後ろへ三歩
 足の鎖も スローワルツ 寒い空に 踊ろうか

 つい最近ニュースで知ったが、井の頭公園の象は名前を花子と言い、今年で60歳になるらしい。私が見た頃はまだ三十代だったわけだ。その歳で独りは淋しかっただろう。
 昆虫のゾウムシは、ゾウと名がつくが、大きいというわけでは無い。口吻が長く突き出ていて、それをゾウの鼻に見立てての名前らしい。ただ、その象という字から、オジサンは井の頭公園の象を思い出し、そして、青春の頃を思い出した。ちょっと切ない気分を味わった。11月最後の土曜日のお昼前のことであった。

 
 オキナワクワゾウムシ(沖縄桑象虫):甲虫目の昆虫
 ゾウムシ科 奄美諸島以南、琉球列島に分布 方言名:不詳
 名前の由来は広辞苑に「象の鼻状に長く突き出した口吻をもち」とあり、そこからゾウムシとなったのであろう。広辞苑には別称として象鼻虫ともあった。
 シマグワの害虫ということだが、シマグワが枯れるまで食い荒らすことはないらしい。子孫のことまで考えているわけだ。足るを知るおりこうさんな虫。
 危険を感じると葉から落下し、死んだ振りをするとのこと。テントウムシなどにも見られるそういった行動のことを擬死というらしい。また一つ勉強になった。
 体長13~15ミリ内外。成虫の出現は周年。寄主はシマグワ。なお、体長13~15ミリ内外とは文献にそうあったのだが、私が見たものは20ミリ以上あったと思う。というわけで、もしかしたら、写真のものは本種では無いかもしれない。
 
 交尾

 記:ガジ丸 2006.11.28 →沖縄の動物目次

 参考文献
 『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
 『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
 『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
 『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
 『日本の甲虫』(株)北隆館発行