海の匂いの澄まし汁
何年か前に渡名喜島を訪れ、しばらく滞在した。宿泊した民宿の食事に私の好きな汁物がたびたび登場した。海の匂いがする澄まし汁。名をアーサ汁という。アーサはウチナーグチ(沖縄口)で、和名をヒトエグサといい、ヒトエグサ科の海藻。渡名喜島はその産地であり、また、ちょうどその収穫時期であった。観光地化されていない渡名喜島の海はとてもきれい。その海で育てられた採りたて生のアーサ、旨くないはずが無かった。
今からだいぶ前、アーサ(ヒトエグサ)の収穫が始まったとのニュースをテレビでやっていた。アーサはワカメより、コンブより、モズクよりも私の好きな海草だ。しかも、渡名喜島で生アーサの美味しさを覚えている。それにも関わらず、ニュースを聞いてからたぶん2ヶ月以上が過ぎた昨日(24日)、やっと生アーサを買った。
スーパーに行くと生アーサ、以前からあるにはあったが、そのパックの表に「解凍」と書かれてある。つまり、いったん冷凍したものであることを示している。つまり、ひょっとしたら去年のものかもしれないのだ。今時期なんだから、そのうち「解凍」と書かれていないアーサも出てくるに違いないと信じ、ずっと買わずにいたのであった。ところが、2ヶ月以上が過ぎても「解凍」の書かれていないアーサは出てこない。そして昨日、ついに諦めて、「解凍」と書かれてある生アーサを買ったのであった。
生アーサは酢の物にしても美味しい。単独でもいいが、キューリやレタス、ダイコンといった野菜、またはマグロ、タコ、帆立貝などの魚介類と和えた酢の物にしても良い。しかしながらやはり、アーサ料理の王道はアーサ汁。海の匂いがする汁物は、人によってはキツイと感じるかもしれないが、さっぱりしていて旨い。私の大好物となっている。
時期でないときにもアーサ汁は食卓にのぼる。乾燥アーサを使う。乾燥アーサは年中スーパーにある。私もアーサが食べたい時は主に乾燥アーサを使っている。海の匂いは乾燥アーサの方がどちらかというと生アーサより強い、と私は感じている。太陽に干されて、その海の成分をより凝縮しているからに違いない。それもまた、私は好きである。
アーサ:和名ヒトエグサ(一重草)
ヒトエグサ科の1年生海藻。四国、九州の太平洋沿岸、沖縄、台湾などに分布する。採取期は2月から4月。その名前からアオサと混同されたりするが、私も今までそう思っていたが、広辞苑によると、アオサは青海苔の代用となるアオサ科の海藻とあった。
記:ガジ丸 2005.4.25 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行