ヤシの木の敵
これまでいくつものヤシを紹介してきたが、シンノウヤシ、アレカヤシ、トックリヤシなどといったもっとも身近なヤシを、写真は載せているが、その記事を書き忘れていることに気付いた。で、今週からそれらの紹介をしている。そしてまた、ヤシの紹介をする上で欠かせない昆虫を紹介し忘れていることにも気付いた。それが今回紹介するタイワンカブトムシである。沖縄では、ヤシを枯らすことで有名である。
沖縄には街路樹や公園木にヤシの木は多くある。ヤシの木はウチナーンチュにとって身近な植物である。そのヤシの木を枯らすタイワンカブトムシも、植物に少々興味のあるウチナーンチュならたいてい、その名前くらいは知っている。
私もタイワンカブトムシという存在は何年も前から知っていた。が、その実物を見たのは去年の夏が初めてだった。職場の庭に落ち葉のかき集められた場所があって、そこを掃除していた同僚から声がかかった。「カブトムシがいますよ」と。
その時、それがタイワンカブトムシであることは知らなかったが、声をかけてくれた若い同僚も知らなかったが、古株のSさんが、そうであると教えてくれた。
「ヤシの木を移植すると、移植する前に切った根の切り口から出る匂いを嗅ぎ分けて、タイワンカブトムシはやってくるみたいだ。」ともSさんは教えてくれた。
タイワンカブトムシ(台湾兜虫):甲虫目の昆虫
コガネムシ科 南大東島、沖縄島以南、台湾、東南アジアに分布 方言名:不詳
カブトムシは広辞苑に名前の由来があり、「角の形が兜の前立てに似るからいう」とのこと。台湾に多いか、台湾で発見されたか、台湾から進入してきたか、いずれかの理由でタイワン(台湾)とついているものと思われる。
甲虫(こうちゅう)と言えば真っ先にカブトムシが連想されるが、本種はコガネムシ科カブトムシ亜科に分類されている。「なーんだ、カブトムシってコガネムシの子分だったんだ。」などと思ってはいけない。カブトムシは漢字で兜虫と書くが、また、甲虫とも書く。パソコンでkabutomusiと打って漢字変換したらその字が出てくる。カブトムシと言えば甲虫ということになる。やはり、カブトムシこそ甲虫の親分なのだ。
体長37~47ミリ内外。角はごく短い。胸背中央から前方が窪んでいるのが特徴。草や木の葉が溜まって腐葉土になったようなところを掘ると本種の幼虫を発見することがある。白いイモムシで体長は50ミリほど。ヤシ科植物の根に入り込み食害する。で、ヤシの害虫として有名。成虫は樹液を吸う。出現は7月から8月。
横から
タイワンカブトムシ幼虫
幼虫は白いイモムシで体長は50ミリほど。
記:ガジ丸 2008.3.29 →沖縄の動物目次
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『沖縄身近な生き物たち』知念盛俊著、沖縄時事出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行
『日本の甲虫』(株)北隆館発行