鳥も大好きな甘酸っぱさ
職場のアセローラ、歳は15歳以上であるが、実の付きは悪い。園芸に造詣の深いTさんが会社を辞める前は、彼が管理していて、毎年たくさんの実をつけていたが、彼が辞めてからは年に数個しか実がつかない。それも、ちょうど食べ頃になると、鳥か何かに食べられてしまって、人間の口に入ることは滅多に無い。
そんな中、去年は1個の実を収穫できた。毎朝出勤して確認し、その後、1時間おきにも確認して、帰る前にも確認して、ある日ある時、「よし、今だ!」と、さっさともぎ取る。たった1個であったが、「鳥に勝ったぜ!」という満足感も得る。
その前年までは1個も収穫できず、去年はたった1個の職場のアセローラ、今年はしかし、去年よりは少しいいかもしれない。まだ4月だというのに、すでに3個の実が付いている。去年収穫したのは8月であった。
金曜日の職場の向かいにある民家に、枝が大き く四方に張り広がったアセローラの木がある。その家の隣は児童公園になっていて、アセローラは児童公園の敷地にまで張り出している。職場のアセローラを収穫した同じ8月、台風の強風圏に入って、強い風にさらされた数日後のこと。児童公園のアセローラの傍を通ると、たくさんのアセローラの実が落ちていた。見上げると、ごちゃごちゃと入り組んだ枝には、あちこちにまだ多くの実がついていた。枝が大きく広がっているのは手入れしていないからである。ということから考えると、アセローラの実は古い枝につきやすいのかもしれない。
アセローラは成長が速く、分枝も多いので形が乱れやすい。形を整えるためには年に数回の剪定を必要とする。職場のアセローラは、社長か、あるいは社員の誰かが時々剪定しているようである。たいていこじんまりとまとまっている。それが実付きを悪くしている原因なのかもしれない。おそらくTさんは、実の付きそうな枝を残し、そうでない枝を切っていたのだろう。そうすることで形を整え、なおかつ、実付きを良くしていたのだろう。実の付きそうな枝はどれなのか、今は社員の誰も知らない。残念。
アセローラはビタミンCの王様と言われている。その通りビタミンCの含有量はレモンのそれを遥かに超える。しかしながら、レモンほど酸っぱいという感じは受けない。糖分の含有量も多いからであろうと思われる。つまり、甘酸っぱいのである。鳥たちもその辺のことはご存知のようで、レモンは食わなくても、アセローラは大好きなのである。人間が食べても、まあまあ旨い方の果実であろう。ただ、収穫してからの劣化が速いので、生の果実がスーパーに並ぶということはほとんど無いらしい。
アセローラの日というのがある。5月12日。収穫の始まりとのことである。
→記事(植物としてのアセローラ)
記:ガジ丸 2006.4.23 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行