ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

変身!紅娘

2007年05月11日 | 通信-その他・雑感

 伊賀の里において隠然たる影響を持つ忍者の頭、服部全蔵には娘が一人いた。名をお文(ふみ)と云う。お文は男勝りの腕力と度胸で、幼き頃から兄たちに負けないほど忍者としての才能を発揮した。父もその才能を認め、最強の九ノ一とするべく鍛え上げた。
 お文は期待通り成長した。15、6にもなると、その力は誰もが認めるところとなる。忍として動いている際は常に紅色の装束を着衣していたため、いつかしら紅娘(くれないむすめ)と呼ばれるようになり、その名は、忍の世界で知らぬ者は無いほどとなった。
 しかしながら、そのお文が17歳になったある日、突然、恋に落ちた。恋の相手は敵方の侍、大楠為衛門という名の若頭だった。為衛門を騙すために町娘となって近付いた。お文にとっては偽りの恋のはずだったのだが、会っていくうちにいつしか本物の恋へと変っていった。初恋の感情は押さえようが無かった。お文は、親を裏切り、忍を捨てた。
 相思相愛、恋に盲目となった若い二人は駆け落ちした。男にとってはただの駆け落ちだったが、お文にとっては“ただの”では無い。頭の娘とはいえ例外ではない。お文は、“抜け忍”となったのである。忍の掟では“抜け忍”は許されないこと。死罪となる。
 二人は伊賀の忍者たちから追われる身となった。常に命を狙われた。逃げた。京、大阪から長州へ、さらに筑後、備中、豊前から薩摩へ至る。それでも尚、追っ手は付いて回る。そして、ついに二人は、南海の島々を伝って、琉球へと辿り着いた。

 命を掛けるほど好きだった為衛門ではあったが、琉球へ辿り着いた頃には既にお文の恋は冷めていた。見た目にはイイ男の為衛門は、しかし、意志薄弱の軟弱男だった。駆け落ちしたのもお文に引っ張られてのこと。逃避行の途中から駆け落ちを後悔し、「何で俺はこんなことしているのだろう」と愚痴ばっかしこぼしていた。自分のせいでと責任を感じていたお文であったが、泣き言ばかり言う男に、ついに我慢も限界に達し、「私は一人で首里に行く。そして強く生きてみせる。あんたはここで屁でもこいているといいわ」と言い残し、為衛門を名護の地に捨て置いて、一人首里へ向かって力強く旅立った。
 首里の地でお文は変身する。名を綾(あや)と改め、表向きは士族何某の養女という身分となる。だが、綾には裏の顔があった。紅の頭巾をかぶり、忍の技を駆使し、琉球の平和のために活躍する正義の味方という顔であった。首里に上る途中で町奉行、伊木九斎親方(ウェーカタ)が山賊に襲われているところを助けた縁から、伊木親方に認められ、その手足となって働いたのだ。彼女は、琉球の歴史の裏舞台にその名を残すことになる。
 変身紅娘の活躍の話は、いつかまたお話する機会もあろうが、今回はここまで。

 先々週、知己の21歳のカワイイ娘から久々にメールがあった。デートのお誘いメールだった。有頂天になったオジサンは「行きます、行きます、行きます。」と三連呼の返事と共に、「何処へ?何日?」などの質問も合わせて返信した。以来、それへの返信をワクワクして待っているオジサンなのだが、オジサンのあまりの喜びようを重荷に感じたのか21歳は、いつまでたってもヘンシンクレナイ娘なのであった。

 記:2005.4.5 ガジ丸