白も緑も美味い
実家の台所の、流しの下に缶詰をストックする引き出しがあった。ストックされている缶詰はだいたい決まっていた。トゥーナー(ツナ缶)、ストゥー(シチューの缶詰)、ポーク(ランチョンミート)、ポーク&ビーンズ、キャンベルスープなど概ね父好みの洋物が常備されていて、たまにはクジラの大和煮など和物の缶詰もあった。
アスパラガスの缶詰が、洋物なのか和物なのか、今となっては調べようもないが、それもたまに引き出しの中にあり、たまに食卓に並んだ。そのままマヨネーズをかけて食うことが多かった。ということで、私がアスパラガスを初めて食べたのは子供の頃である。どのくらい子供だったかは覚えていないが、缶詰の白いアスパラガスが初体験。
以来、長い間缶詰に入った白いアスパラガスしか見なかったので、アスパラガスは元々白いものだと思っていた。それが、たぶん大人になって(どのくらい大人だったかは覚えていない)からだと思うが、緑色のアスパラガスを見て驚いたことを記憶している。
太陽の下で自然に生育させればアスパラガスは緑色である、ということは、緑色のアスパラガスを見て驚いた時にたぶん、誰か(誰かは覚えていない)に教えられている。太陽の下で日に焼ければ緑色になり、太陽に当てず地下、または日除けして育てれば白くなるということもその時に教わっている。日焼けしない人の肌が白いようなもの。
白いアスパラガスをホワイトアスパラ、緑色のものをグリーンアスパラと通常呼んでいる。ホワイトアスパラは傷みやすいせいか概ね缶詰である。が、生のホワイトアスパラも私は見たことがある。いつどこでだかは覚えていない。おそらく旅先であろう。アスパラガスは沖縄でも生育するが、沖縄産ホワイトアスパラは見たことが無い。
沖縄産グリーンアスパラはスーパーでつい最近見たことがある。もっとも、それよりずっと前に、従姉の亭主が自分の庭に植えていて、何年かは数本ずつ収穫できたと聞いていた。それを聞いて、新鮮なアスパラガスを食ってみたいと私は思い、従妹の家に出かけたのだが、私の父が雑草だと思って引っこ抜いた後だった。その後、株を別の場所に移したのだが、やはり沖縄では気候が合わないのか、いつのまにか枯れてしまった。
アスパラガス(asparagus):茎野菜
ユリ科の多年草 南ヨーロッパ原産 方言名:なし
茎が食用になる。広辞苑に「軟白して缶詰にする」とあったが、軟白は「ウド・アスパラガスなどの野菜類の茎葉の白く軟らかな部分。また、日除けや地下栽培などで、それをつくること」(同じく広辞苑)とのこと。後者のように作られたのが缶詰のホワイトアスパラ。軟白しない若い茎もグリーンアスパラという名でよく親しまれている。
→植物としてのアスパラガス
記:ガジ丸 2010.8.29 →沖縄の飲食目次