ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

ヂーアンダ

2011年03月28日 | 飲食:食べ物(料理)

 ちょっとしかない珍味

 私が東京に住んでいた頃、もう30年ほど前の話だが、近辺の肉屋さん、あるいはスーパーの精肉コーナーでも、骨付きの豚肉を見た記憶が無い。沖縄には昔から、私の記憶でも私が物心ついた頃から骨付き豚肉は普通にあり、普段口にもしていた。
 骨付き豚肉で双璧を成すものがソーキとテビチ。ソーキは豚のあばら骨の部分で、ソーキ汁、煮付け(ソーキソバの加薬として有名)、バーベキューなどで食される。ソーキは最近では、リブステーキとして倭国でも有名。肉屋にもあるかどうかは不明だが。
 ※加薬(かやく)=うどんなどに入れる肉・野菜などの具のこと(広辞苑)
 テビチは豚の足、主に膝から下、つま先までの部分で、テビチ汁、煮付け、おでんの具などで食される。これは豚足(とんそく)という名で、私が東京にいた頃から珍しいものをおいてある飲み屋さん、中華料理店などにあった。茹でた豚足に辛子味噌をつける。私も2、3度食べたことがある。豚足に脂が多く残っていて、あまり美味しいものでは無かったと記憶している。しかし、沖縄のテビチは、どの料理も私は大好きである。

 「骨の髄まで」という言葉がある。「体の奥の奥まで。転じて、徹底したさま。とことん。」(広辞苑)ということだが、「髄」とは「骨の中の腔所を充たす結合組織で、黄色の柔軟物。」(同)のことで、「骨の髄まで」は文字通りに訳すと「骨の中の腔所を充たす結合組織である黄色の柔軟物まで」ということになる。
  ソーキの骨には無いが、テビチの太い骨の中にはある程度まとまった量の髄が入っている。ある程度まとまった量というのは、食べて、その味を感じられる量ということで、だいたい直径が3ミリ以上、長さが1センチ以上のことを、ここでは言う。
 その量のものを見つけたら、私は決まってそれをスップル(口で吸うという意のウチナーグチ)か、箸でほじくって取り出し、食べる。これが旨いのである。子供の頃から好きであった。とろっとした食感と、旨味のエキスが詰まったような味。味は、カニ味噌に近いのではないかと私は感じている。「骨の髄まで」という文字通りの意味で、私はテビチを食い尽くしているというわけである。
 友人のE子が首里の生まれで、彼女の母親が首里方言を良く知っている。で、訊くと、骨の髄のことをウチナーグチではジーアンダというらしい。沖縄語辞典にもジーアンダは載っていて、「骨の髄にある油」とあった。油は脂の誤記だと思われる。
 「ジーアンダ、クジティ、スップレー。」と、E子の母親はよく言っていたとのこと。骨の髄をほじくって、吸い込みなさい、という意味。

 ちなみに、骨付き鶏肉は倭国でも普通で、沖縄にも普通にあり、牛肉ならTボーンステーキなるものがレストランに行くとあった。アメリカ産の食品を扱っているJスーパーに行けば、Tボーンステーキが入手でき、家で味わうこともできる。沖縄で普通に食されるもう一種の獣肉、ヒージャー(山羊)も、汁用はたいてい骨付きである。ただ、それらのいずれにも、食べるのに適した骨の髄は、少なくとも私は見たことが無い。
 

 記:ガジ丸 2008.2.2 →沖縄の飲食目次