チラッと見た
台風13号が沖縄島へ最接近した翌日、鹿児島から遊びに来ていたNとヤンバル(山原と書く、沖縄島北部の通称)観光をした。じつは、水納島観光の予定だったのだが、さすがに波が荒くて、水納島への船は全便欠航であった。
渡久地港から海洋博公園方面へ向かう。公園をちょいと過ぎたところに備瀬のフクギ並木という観光名所がある。備瀬の海岸沿いに、フクギの木を防風林にした一角があって、そこの景観が倭国では見られないような独特のものなのである。
道は幅2~3メートルの細い道、白いコーラルの道。背の高いフクギが両側に聳えている。薄暗い場所も多くあって、蚊に数箇所食われてしまった。
6月に愛媛の松山でコムラサキの写真を撮ったが、沖縄には生息しない蝶なので単独では紹介しづらい。そこで、リュウキュウムラサキの写真が撮れたら一緒に紹介しようと考えていた。7月に宜野湾市でそれらしきものを車の運転中にチラッと見た。50メートルほど先に駐車できる場所があったので、停めて、戻ったのだが、既に姿は無かった。備瀬のフクギ並木を歩いている時にもまた、リュウキュウムラサキらしきものををチラッと見た。今度は徒歩である。追いかけた。フクギの木の高い枝の上に止まった。12倍ズームで写真を撮る。翅表の写真を撮ろうとじっと待つ。が、しばらくして飛び立った蝶はさらに高く飛び、見えないところへ消えてしまった。翅表の写真が撮れなかったので確信は無いが、たぶんリュウキュウムラサキであろう。
リュウキュムラサキ(琉球紫):鱗翅目の昆虫
タテハチョウ科 東南アジアからオーストラリア北部に分布 方言名:ハベル
リュウキュウと名が付いているのに沖縄には分布せず、迷蝶としてやってくる。琉球列島に毎年のように迷ってくるので、「琉球(八重山諸島では特に多いとのこと)でよく見られる紫の蝶」ということなのであろう。
「八重山諸島では特に多い」と書いたが、同属のヤエヤマムラサキもまた迷蝶で、これは「特に」がもっと「特に」となっていて、八重山という名前らしい。
海岸線で多く見られるとのこと。私が見たのも備瀬のフクギ並木、海のすぐ傍。
前翅長47ミリ内外。成虫の出現(迷って来る)は春から秋。成虫は花の蜜を吸い、幼虫の食草はサツマイモ、ツルノゲイトウなど。
那覇産成虫
山原産成虫
西原町産1
西原町産2
コムラサキ(小紫):鱗翅目の昆虫
タテハチョウ科 北海道から九州、ヨーロッパ、シベリアに分布
成虫の出現は5月から9月。幼虫の食草はヤナギ科のヤナギ類。
雄の翅が光にあたると紫色に光る。
倭国産成虫
記:ガジ丸 2006.9.24 →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行