フェロモン
同僚のOさんは、私と同年代のオジサンである。私は平均して月に2、3回しか現場に出ないのだが、彼は現場の人間である。出勤の日は毎日汗をかいている。夕方、現場から帰ってきたOさんとすれ違うと臭い。若いMやYなどは爽やかな汗の匂いだが、Oさんは酸っぱい匂いがする。カレイ臭という奴である。魚のカレイのような匂いがするからその名が付いているわけでは無い。漢字で書くと加齢臭。齢とると付いてくる匂い。
その匂いが私にもあるということに最近まで気付かなかった。でもやはり、私もちゃんとオジサンなのであった。どうやら臭いようである。しかしながら、数人の女子高生にすれ違いざま、「臭いオジサン」と囁かれようがどうしようが、私はコロンなるものを使用しない。若い頃ちょっと使ったことがあるが、20代後半からは使っていない。自分には男のフェロモンがあると思っていたのと、つけるのが面倒だったからである。
ジャコウアゲハの雄はとても良い匂いを出すらしい。なので、ジャコウ(麝香)という名が付いている。フェロモンなのである。雌を引きつける匂いは雌と交尾するという目的のためにある。ということは、フェロモンが消えて、加齢臭となってしまったオジサンはもう、女性と交わる資格も失ったということであろうか。・・・淋しい。
ジャコウアゲハ(麝香揚羽):鱗翅目の昆虫
アゲハチョウ科 本州以南、南西諸島、台湾、朝鮮などに分布 方言名:ハベル
ジャコウ(麝香)とは「香料の一種。ジャコウジカの麝香嚢から製した黒褐色の粉末で、芳香が甚だ強く、・・・主に中央アジア・雲南地方などに産する」(広辞苑)のこと。ジャコウネコというのもいて、これもまた同じく麝香を持つ。ジャコウアゲハの雄が香気を発するところから麝香という名前がついているものと思われる。
広辞苑に別称としてヤマジョロウとあった。山女郎とはいったいいかなることか、その由来には大変興味がある。山に生息する女郎(ジョロウとは言葉が悪いね。花魁がいいね)のような良い香りのするものという意味だと推測されるが、正確なところは不明。
南西諸島産は数亜種(奄美沖縄、宮古、八重山)に分かれるとのこと。文献に「防風防潮林、山林の林縁部などに普通に見ることができる」とあったが、私はまだ、沖縄では発見できていない。写真は愛媛県松山市の道後温泉で撮ったもの。
前翅長49ミリ内外。成虫の出現、本土では4月から10月らしいが、沖縄では周年とのこと。幼虫の食草はウマノスズクサ科のコウシュンウマノスズクサ、リュウキュウウマノスズクサなどとあるが、これらの草を私は認識できない。
雌1
雌2
雄1
雄2
倭国産
記:ガジ丸 2006.9.24 →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行