ガジ丸が想う沖縄

沖縄の動物、植物、あれこれを紹介します。

油味噌

2011年03月20日 | 飲食:食べ物(料理)

 保存しなかった保存食

 旅に出ると、今まで食ったことの無い珍しい食い物に出会うことがある。その食い物が例えば、土地の人でもそう食わないようなシロモノである場合は別にして、少なくとも、酒飲みが喜んで食うようなものであれば、とりあえず挑戦してみる。私は食に関しては好奇心の強いほうで、嫌いな食い物もほとんど無いといっていい。
 こんな私と遺伝子がどう繋がっているのか知らないが、私の父はたいそうな偏食家である。実家に帰ると、食い物はたいてい決まっている。野菜が少ない、魚も少ない、納豆も無ければ漬物も無い。そこにあるのは、どこにでもある肉料理がほとんど。

  そんな父の得意料理がある。それはアンダンスー、和語にすると油味噌。彼の作り方は、豚ばら肉を炒めて、豚の脂が十分に出切ったところで味噌と砂糖を加えたもの。実家に帰ると、食卓の上に、父の作ったアンダンスーが小鉢に入って、いつも置いてある。
 アンダンスーは保存食となるので、倭国に住む息子や娘のために母親が作って送る沖縄料理の筆頭といってもよかろう。私も学生の頃よく送ってもらった。私は父のよりも母が作るアンダンスーが好きで、それを送ってもらった。食い物が送られてきたなんて情報が流れると、飢えた友人たちが集まってきた。アンダンスーなんてわけの分からない食い物を、倭人の友人たちも美味しいといって食った。保存食はその日のうちに消えた。
 
 アブラミソ(油味噌):保存の効く家庭料理
 ご飯のおかずに合い、酒の肴にもなる保存食。方言名:アンダンスー
 作り方が簡単で、材料も家庭常備の油と味噌と砂糖で間に合うので、沖縄の代表的な家庭料理となっている。よって、各家庭で作り方や味に違いがある。私が子供の頃、おにぎりの具としては人気ナンバーワンであったと思う。その甘辛さが美味しくて、ごはんがすすむ。甘辛さが染みた豚肉もすごく美味しい。甘辛さによって保存食となる。
 保存食をあまり必要としない現代では、特に若い家庭ではあまり作られていないのかもしれない。私も(若くは無いが、保存食を要しないので)ほとんど作らない。ここ20年ばかりは作っていないが、私なりのレシピはある。たっぷりの油(元は豚脂、最近はヘルシーなサラダ油を用いたりする)で茹でた豚肉の塊(カレー用の大きさ)を軽く炒め、すぐにたっぷりの味噌を加え、砂糖(私は黒砂糖)で味を調える。味噌が、甘い味噌なら砂糖は少なめ、辛い味噌なら多めとなる。豚肉は三枚肉でもいいが、私は腕肉を使う。
 
 
 

 記:ガジ丸 2005.8.25 →沖縄の飲食目次

 参考文献
 『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行