昔からのインスタント
私の実家では、風邪をひいた時の食事は熱々のお粥と梅干、そして、これもまた熱々のカチューユーと相場が決っていた。3つともに胃に優しい食い物。内臓に余計な負担をかけず、体中の免疫細胞を風邪退治に集中させることができる理に叶った食事だ。栄養補給の面でも、おそらく事足りている。熱々を食って、体を温め、薬を飲んで寝る。寝ている間にいっぱい汗をかく。これを何度か繰り返して、数日後にはケロっと治る。
カチューユーとは鰹湯とでも漢字では書くのだろうか。どんぶりにたっぷりの鰹節を入れて、お湯を注ぎ、蓋をして、しばらく蒸らした後、醤油で味付けしただけの汁物。家庭によっては味噌を入れたり、ニンニクやネギを入れたりする場合もある。
今朝(14日)、朝飯にカチューユーを飲んだ。別に風邪をひいたわけでは無い。久々におでんが食いたくなって、今日の晩飯はおでんに決めた。おでんのツユには、私はたいてい鰹の二番出汁を使っている。吸い物の出汁を取った後の鰹節をたいてい使うのだが、今朝は吸い物を作っている時間が無くて、簡単にできるカチューユーにしたのだ。
どんぶりいっぱいに残った鰹節、使うのは夕方なので、傷まないようにできるだけ汁気を無くしておきたい。どんぶりを左手で掴み、右手に持った箸で鰹節を押さえながら、どんぶりを持ち上げ、傾けて、小さな汁碗に絞り汁をこぼす。
その時、何とも不思議なことが起きた。右手にグイっと力を入れた瞬間に、どんぶりが割れたのだ。4つに割れて、テーブルの上に落ち、鰹節が顔に、胸に、腹に、腿の上に、テーブルの上にも床にも飛び散った。さらに、思いっきり力を入れていた右手の箸先にあった鰹節たちは、天井までは届かなかったが、正面の壁と右手のガラス窓にたくさん飛び散り、かたまりとなって、あるいは細かくなって、無数に貼り付いていた。
吸い物を作る時間をけちってのカチューユーだったが、飛び散った鰹節を拭き取るのにはその数倍の時間がかかってしまった。お陰でその朝は、髭も剃らず、雲子もせず、モーニングコーヒーも飲まずに出勤する羽目になってしまった。
割れた食器を葬るための粗忽塚、過去11年間で収められた食器は6個だったのだが、12年目の今年はまだ一月半も経たないうちに2個。何か災いの予兆であろうか。あるいはまた、 男の更年期障害で、ホルモンバランスが悪くなって、手足の筋肉が思ったように動かない、なんてことだろうか。いやいやいや、手の力で食器を割るなんて和田アキ子じゃあるまいし、どんぶりには、気付かなかったが、きっとひびでも入っていたのだろう。災いの予兆でも更年期障害でもあるまい。たまたま割れたのだ。
どんぶりに鰹節をたっぷり入れて、お湯を注ぎ、蓋をする、その前に生卵1個を落とすとなお美味しい。子供の頃はよくそうしてもらった。が、今はやらない。鰹節には少量の玉子が付着して残り、2番出汁を取るときに、その匂いが気になるからだ。
さっき、晩飯におでんを食った。おでんは、鍋に入れて、暖めるだけで済む袋入りの出来合いのものを買った。おでんは食ったが、今日は休肝日なので、酒は無し。
記:ガジ丸 2005.2.18 →沖縄の飲食目次
参考文献
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行