蜜の味
先日、行きつけの喫茶店で、「この間、M夫妻と三人で飲みに行った。その時の彼らの皮肉の言い合いが面白くて、楽しい飲み会となった。」という話をした。聞いていた常連のオバサン連中の中にはMのことを知っている人もいて、
「Mさんは優しそうな人に見えるけど、そんな皮肉も言ったりするの?」と訊く。
「いやー、今まで違う環境で生きてきた人間が中年になって一緒に暮らすようになったんだ。そりゃ、いろいろ我慢できないこともあるんだろう。しかし、さすが中年で、お互いの皮肉の一つ一つがなかなか面白くて、美味しい酒の肴になったよ。」
「心の傷付け合いを楽しんだわけね。他人の不幸は蜜の味ってわけね。」
他人の不幸を蜜の味に感じるのは、それが小さな不幸である場合に限られよう。電車の脱線事故で無くなった人たち、イラクで拘束された重症の人などのことを蜜の味と感じる人は、まずいるまい。中年新婚夫婦の皮肉の言い合いは甘い蜜の味だったわけだが、二人はその間、ちょっと不幸だったかもしれないが、それはまったく生きていればこそのちょっとした、しかも一時的な不幸だ。それを喜んでも罰はあたるまい。
さて、今回の『蜜の味』はそんな比喩的な意味の話ではなく、本物の花の蜜のこと。
先月、職場の庭にあるサンゴジュの花が満開となった。満開の花に虫たちが集まって来た。アパートのトベラの木が満開だったときも、その花に虫が多く集まった。トベラに比べると花の量がその半分も無いサンゴジュなので、数としては少ないが、トベラよりも虫の種類が多い。蜂が2種、アブのような虫もいる。そして、蝶が3種いた。
蜂はトベラにやってきたのと同じ2種、クマバチとミツバチ。アパートのトベラにはやってこなかった蝶は、オウゴマダラ、イシガケチョウ、アカタテハの3種。
それにしても、たくさんの花をつけていたトベラには蝶はやってこず、トベラの半分の量しかないサンゴジュには3種の蝶がやってきた。蜜の味に違いがあるのだろうか。そういえば、蜂蜜は、ミツバチが吸う花の蜜によって、その味に違いがあるということを聞いたことがある。ということは、花ごとに蜜の味は異なるということだ。
蜂はいろんな蜜を吸うようだ。だから、サンゴジュにもトベラにもやってくる。蝶はその蜂よりもいくらかグルメに違いない。トベラの蜜は「美味く無ぇ」のだろう。
オウゴマダラ →極め付きの偏食家
イシガケチョウ →ボーっとするチョウ
アカタテハ(赤立羽):鱗翅目の昆虫
タテハチョウ科 前翅長32ミリ内外 方言名:ハベル(チョウの総称)
名前の由来は文献に無かったが、翅表の一部に赤い模様があるタテハチョウの仲間なのでアカタテハであろうと想像される。
翅表の模様はヒメアカタテハにも似ているが、私はテングチョウと見間違う。
幼虫の食草はノカラムシ、イラクサなど。ノカラムシの巣は目立つとあるが、私はまだ発見できていない。ノカラムシはあちこちにあるので、今度探してみよう。
本土での成虫の出現は3月から11月とあるが、沖縄では周年、少ないけど冬場でも見ることができる。成虫は花の蜜も吸うが、樹液、果実、動物の糞にも集まる。雄は日没時になわばりを作り、他の蝶を追い払うとのことだが、私はまだ見ていない。
北海道から沖縄、北アフリカ、ヨーロッパ、中央アジア、東アジアなどに分布。
沖縄産1
沖縄産2
八重山産1
八重山産2
記:2005.5.13 ガジ丸 →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム
訂正加筆 2009.4.19
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行