ボーっとするチョウ
ボーっとすることをウチナーグチ(沖縄口)ではトゥルバルと言う。ボーっとしている人のことはトゥルバヤーと言う。トゥルバヤーはのんびり屋を罵る時にも使う。
「ィエー(おい)、トゥルバヤー、ヘークセー(早くしろ)!」などと、子供の頃、父によく言われた。そのように、私は名前では無くトゥルバヤーと呼ばれることがよくあった。自覚はなかったが、周りから見ると私はトゥルバヤーだったのだろう。そういえば大学生だった頃、井の頭公園のベンチに座って、ずっと池面を眺めていたら、「よくそんなボーっとしていられるね。」と隣に座っていた友人に言われたことがある。子供の頃だけでなく青年になっても私はトゥルバヤーだったみたいだ。もしかしたらオジサンとなった今でも、私はトゥルバヤーかもしれない。自覚はほとんど無いのだが。
チョウの中にもトゥルバヤーがいた。イシガケチョウ。このチョウは飛ぶ姿ものんびりしていて、目で追うのも比較的易しい。止まったところへ近付くと、翅を広げてジーっとしている。カメラをぐっと近づけても逃げない。トゥルバヤーだ。
イシガケチョウ(石崖蝶):鱗翅目の昆虫
タテハチョウ科。前翅長35ミリ内外。方言名:ハベル(チョウの総称)
名前の由来は見た目。イシガケは石崖のことで、石崖は「岩山の側面。また、堤などの側面に石を積み重ねたもの。」(広辞苑)のこと。本種の翅の模様が「堤などの側面に石を積み重ねたもの」に似ていることからイシガケチョウという名。
翅模様に特徴があって、ヒラヒラとのんびりした飛び方をするのですぐに気付く。木の葉に止まると翅を広げてじっとしていることが多いので写真も撮りやすい。
幼虫も独特の姿をしている。独特なので図鑑を見てすぐに本種の幼虫と判明した。頭部に2本、背中に1本、お尻に1本の黒色の角がある。
前翅長35ミリ内外。成虫の出現は3月から12月。成虫は花の蜜も吸うが、動物の死体や糞にも集まる。給水行動も見られるとのことだが、私はまだ見ていない。
幼虫の食草はイヌビワ、オオイタビ、ガジュマルなどのイチジク属の葉。終齢幼虫の体長、文献には44ミリとあったが、私が見たものは60ミリほどあったと思う。
本州以南、琉球列島、台湾、東南アジアなどに分布。
成虫翅表
山原産
幼虫
文献に体長45ミリ内外とあったが、この固体は70ミリ程。食べているのはガジュマルの葉。
記:ガジ丸 2009.4.26 →沖縄の動物目次 →蝶蛾アルバム
参考文献
『ふる里の動物たち』(株)新報出版企画・編集、発行
『沖縄大百科事典』沖縄大百科事典刊行事務局編集、沖縄タイムス社発行
『沖縄昆虫野外観察図鑑』東清二編著、(有)沖縄出版発行
『名前といわれ昆虫図鑑』偕成社発行