礫川全次のコラムと名言

礫川全次〈コイシカワ・ゼンジ〉のコラムと名言。コラムは、その時々に思いついたことなど。名言は、その日に見つけた名言など。

国家儀礼としての学校儀式・その3(桃井銀平)

2019-04-01 07:30:47 | コラムと名言

◎国家儀礼としての学校儀式・その3(桃井銀平)

 桃井銀平さんの論文「国家儀礼としての学校儀式」を紹介している。本日は、その三回目で、「2,2011年3~4月の都立高校の例-某区9校」の「(2) 入学式-4月」を紹介する。

(2) 入学式-4月 〔全体像は別紙資料2〕
① 会場配置図から
 資料fは会場配置図の代表例である(卒業式の例と同じ年、同じ学校)。場所は当該校の体育館である。〔12〕また、卒業式と同様に通例は、正面をのぞく3面の内壁が紅白幕で飾られるなどして、儀礼の空間の荘厳・画定が行われている。
 壇上正面に中央の国旗を挟んで右に校旗、左に都旗が掲示されている。新入生は壇の下、最前部にクラスごと横5列縦6列で座席が配置されている。担任団は生徒の左に縦1列で5名並んでいる。その後ろに一般教員が横二列で縦に長く配置されている。その最後尾に副校長席がある。壇上向かって左面に、奥から都教委席・校長席・経営企画室長席が左に斜めに配置されている。同じく右には主要な来賓4名の席が奥から右斜めに配置されている。国旗に正対する配置である。都教委席の明示がある6例の全てが学校側座席の最前部で、校長の前である。
 この例でも注意すべきは、卒業式と同じく一般教員席の右に以下の注意書きがあることである。「生徒・保護者のイスの向きは全て舞台正面に向ける。(この図では左方が舞台正面)来賓・教職員のイスは45度内側に向ける。」舞台方面中央への正対を徹底させる趣旨である。このような例は他に1例ある(卒業式の例と同じ学校)。図の例の他に壇上に都教委・校長等および来賓の席を配置する例が3あるが、いずれも正面中央に向かって斜めに配置されている。さらに教師の位置・方向の異様さにも注意されたい。全校において、新入生や保護者の側面に着席し正面の国旗を向いたままであって、生徒と同じ方向を向いている。新入生担任がそれぞれ自分のクラスの近くにいるわけでもない。
① 式次第・司会進行表から
 全例が卒業生の入場に続いて「開式の辞」が発語され、7例が「閉式の辞」に続いて卒業生が退場する(残る2例は式次第終了後に「生徒会歓迎挨拶」実施、各種撮影実施)。これが、儀礼の時間の画定となる。全体として、卒業式と同じく異様に思えるほどの画一性が支配している。国歌・校歌の他に歌を歌う例はない。式次第外に「生徒会歓迎挨拶」を配置しているのが1例、他に職員紹介を式次第外に配置しているのが1例。来賓祝辞を省略した例は1例あるが、「東京都教育委員会挨拶」は全例でそれも「校長式辞」の直後に配置してある。校歌紹介は教職員・生徒有志の斉唱によるものは2例(うち1例は式次第外の「生徒会歓迎挨拶」で実施)、吹奏楽部の演奏が1例、CD又はテープが5例、形式不明が1例である。
1) 冒頭の<国旗に正対し起立して国歌斉唱>
 卒業式と同じく9校全てで冒頭に開式の辞の直ぐ後に国歌斉唱が行われている。参列者全ての座席は正面または正面中央に向いている。式次第の諸儀礼行為では、通達と職務命令によって特に強く一律に規定されている部分である。通達には冒頭という位置は明記されていないが、通達発出以前の強制的指導による定式化と儀式事前のチェックによって例外が許されないものとなっている。このときの儀礼行為は、例外なく無人の壇上正面に向かって行われている。9例中7例はここで「礼」が行われる(卒業式と同じ学校)。国旗の位置は向かって右に並んだ都旗とのセットが3例、向かって右に校旗・左に都旗の中央に置かれているのが6例である(学校ごとの差異は卒業式と同じ)。
2) 入学許可
 学校教育法施行規則第九十条第1項に「高等学校の入学は、第七十八条の規定により送付された調査書その他必要な書類、選抜のための学力検査(以下この条において「学力検査」という。)の成績等を資料として行う入学者の選抜に基づいて、校長が許可する」と規定されている(第78条は中学校校長の調査書等送付に関するもの)。入学許可の方法についての規定はない。入学式における「入学許可」宣言は、すでに行われた校長による入学許可とその通知を前提に行われる慣行上の行為でしかない。しかし、卒業式と似た儀礼行為が例外なく行われている。進行表に呼名方法の例示のない1校をのぞいて8例等しく生徒一人一人を「君」「さん」付けのない呼び捨てで呼名し起立させ、「計○○」というようにまとめて「入学許可」を宣言している。
3) 国旗を背に語る人物  
 9例すべてで、校長、教育委員会職員と来賓は壇上で国旗を背に語りかける。新入生代表の宣誓では全例が登壇して壇上正面の校長(国旗が背後)に向かって行う。
4) 閉式の辞
 9例中7例が、「一同起立」-「閉式の辞」-「礼」-「着席」という儀礼行為を遂行する。残る2例は、「礼」はない(学校ごとの分布は卒業式に同じ)。全例が壇上正面には人がいない状態。国家儀礼行為としては、国旗に向かっての「礼」がある方がより完成態であるといってよい。

5) 起立斉唱へのこだわり
 10.23通達と職務命令によるこの部分の教職員への義務づけと懲戒処分の主対象である点は、卒業式と同じである。卒業式と同様に、生徒の起立斉唱も重視していることが、司会進行表でわかる。以下、9例全てについて司会の発言等の記載を資料gに列記した。
 なお、入学式でもH校の場合は、保護者への対応も予定していることに注意されたい。I校の場合は、生徒だけでなく参列者一般に起立を促す趣旨だろう。

注〔12〕当該校の体育館が7例。他は定時制校の一部で当該校の音楽室または視聴覚ホールである(卒業式と同じ学校)。

 

*このブログの人気記事 2019・4・2(時節がらか年号関係が多い)

 

コメント    この記事についてブログを書く
  • Twitterでシェアする
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする
« 国家儀礼としての学校儀式・... | トップ | 国家儀礼としての学校儀式・... »
最新の画像もっと見る

コメントを投稿

コラムと名言」カテゴリの最新記事