おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ええじゃないか

2023-09-08 07:32:36 | 映画
「ええじゃないか」 1981年 日本


監督 今村昌平
出演 桃井かおり 泉谷しげる 緒形拳 露口茂 草刈正雄 樋浦勉
   丹古母鬼馬二 火野正平 倍賞美津子 田中裕子 寺田農 倉田保昭    
   池波志乃 高松英郎 伴淳三郎 三木のり平 小沢昭一 殿山泰司

ストーリー
慶応二年、日本は激動期の真只中にあった。
源次(泉谷しげる)はそんな江戸へ六年ぶりにアメリカから帰って来た。
上州の貧農の出の源次は横浜港沖で生糸の運搬作業中に難破し、アメリカ船に救けられ、そのまま彼の地に渡っていたのだ。
その間、妻のイネ(桃井かおり)は、病身の父(伴淳三郎)に売られ、現在、東両国の“それふけ小屋”(ストリップ劇場)で小紫太夫と名乗って出演している。
源次はなんとかイネを発見、六年ぶりの再会に二人は抱きあった。
源次はイネと再会したのち、千住の女郎屋の遣り手・お甲(倍賞美津子)にかくまわれる。
見せ物小屋の立ち並ぶ東両国は、芸人、スリ、乞食、ポン引きなどアブレ者の吹き溜り。
源次は三次(樋浦勉)、ゴン(丹古母鬼馬二)、孫七(火野正平)、卯之吉(野口雅弘)、旗本くずれの古川(緒形拳)など、したたかな連中に混ってそこに居ついてしまう。
そして、金蔵(露口茂)がここら一帯を取り仕切っている。
自由の国アメリカが頭から離れない源次は、イネを誘いアメリカ渡航を計るが、結局、彼女はこの猥雑な土地を見捨てられず、彼もイネの肉体にひかれて残ってしまう。
この頃、幕府と薩摩、長州連合の対立は抜きさしならないところにきており、金蔵は薩摩の伊集院(寺田農)などの手先となって、一揆の煽動など、天下を騒がす仕事に飛びまわっていた。
「ええじゃないかええじゃないか」と〈世直し〉の幟やムシロ旗を立てた群衆は次々と豪商の倉を襲っていった。
この群衆の中に、金蔵配下の源次、ゴンたちがアジテーターとしてまぎれこんでいた。
更に、この騒ぎの中に、親兄弟を虐殺された琉球人のイトマン(草刈正雄)が仇の薩摩藩士の姿を求めて鋭い目を光らせていた。
そして、「ええじゃないか」の勢いは止まるところを知らず、群集は、歩兵隊の制止も聞かず、大橋を渡ろうとした。
「死んだって ええじゃないか」源次がたおれた。
数日後、復讐をとげたイトマンの舟が琉球へとすべり出した。
舟を見送るイネ。その翌年、元号は明治となるのだった。


寸評
「ええじゃないか」騒動は江戸時代末期の慶応3年(1867年)に、近畿、四国、東海地方などで発生し、「天から御札が降ってくる」という話が広まるとともに民衆が仮装するなどして囃子言葉の「ええじゃないか」を連呼しながら集団で町々を巡って熱狂的に踊ったというものだが、この「ええじゃないか」騒動がこの映画でも最後を締めくくる形で描かれる。

セットは立派だしエキストラも多くて製作費をかけて丁寧に描いていて、庶民が苦しいながらも頑張って生きていこうとしている姿を映し出しているのは分かるが、それだけに留まっていてストーリーが発展しないので、結局のところ何だかよくわからない。
上映時間の割に、中身は散漫であいまいなままで終わってしまっている。タイトルとなっている「ええじゃないか」騒動は最後に少しだけ描かれるが、同じく最後に少しだけ「ええじゃないか」騒動が描かれる作品として、僕は黒木和雄の「竜馬暗殺」における描き方の方が、はるかに民衆の生活苦、幕府への不満、怒り、押さえつけられていたそれらのエネルギーの爆発を感じ取れた。
幕末の「ええじゃないか」騒動は世の中がひっくり返る間際の民衆蜂起であったと思うので、タイトルから連想したのは「ええじゃないか」に名を借りて現代に潜む問題をあぶりだすという内容であったのだが、結局何を描きたかったのだろうと言う印象のまま終わってしまった。
ただし、カメラはイイ。
夜のシーンが多くて暗い画面が続くが、その暗さが雰囲気を醸し出し、橋のあっちとこっちで生活する人々や、人々が入り乱れる雑多な空気感が絵に見事に出ている。

露口茂の金蔵は紛争を引き起こしたり煽り立てたりして距離を得ている軍需産業のような人物である。
騒動の当事者双方から依頼を受け、一方で騒動を扇動し、一方で騒動を鎮圧する画策を行っている。
この男の破滅を描くのかなと思っていたら、琉球人のイトマンが迫害に対する復讐を遂げ、最後が源次とイネの愛情物語だったので、「結局なんだったんだ」と叫びたくなった。


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2 コメント

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これはダメでしたね (指田 文夫)
2023-09-08 17:20:07
私は、今村昇平は、戦後の監督で最高だと思っていますが、これは感心できませんでしたね。
元の、横浜映画放送学院でやった芝居は良かったらしいですが。ここには、後にスターになる長谷川初範が主演で非常に良かったらしいですが。
映画には、ぜんぜんエネルギーがなかったですね。
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キャストは豊富 (館長)
2023-09-09 11:24:41
キャストのメンバーは面白いと思うのですが、結局なんだったんだとの印象がある作品でした。
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