おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ほえる犬は噛まない

2021-11-17 07:54:52 | 映画
「ほえる犬は噛まない」 2000年 韓国


監督 ポン・ジュノ
出演 ペ・ドゥナ
   イ・ソンジェ
   コ・スヒ
   キム・ホジョン
   キム・ジング
   ピョン・ヒボン

ストーリー
ユンジュ(イ・ソンジェ)は学者だが今は失業中で、大学に雇ってもらおうとコネを頼って就活をおこなっているがなかなかうまく行かない。
妻のウンシル(キム・ホジョン)が身重にもかかわらず働いていて、何とかマンションの家賃などの生活費をまかなっているので、ユンジュは彼女には頭が上がらず、妻のDVにも耐える毎日を送っている。
ある日、マンションで飼われている犬の鳴き声に気が立ったユンジュは、その犬を屋上から落とそうとするが、住人の老婆(キム・ジング)に見られたために断念して地下室へ行き、そこに棄てられていた衣装タンスに犬を閉じ込めて立ち去る。
ところが吠えていたのは別の犬だと知り、ユンジュは閉じ込めた犬を解放するために地下室へ戻ると、犬はマンションの警備員(ピョン・ヒボン)に食べられてしまっていた。
おまけに地下室には隠れて住んでいた住人(キム・レハ)に襲撃され何とか逃げ出したが、吠える犬への怒りはさらに高まることとなった。
ユンジュは吠える犬を見つけ、捕まえて屋上から投げ落としたが、それを別の建物にいたヒョンナム(ペ・ドゥナ)と友人のチャンミ(コ・スヒ)が偶然見ていた。
ヒョンナムはユンジュを追いかけたが取り逃がしてしまう。
ウンシルが仕事帰りに買ってきた犬をユンジュが散歩させていたところ、ちょっと目を離した隙に行方不明となってしまった。
妻に責めたてられたユンジュは必死に犬を探すが中々見つからず、手がかりを得るために張り紙をしていたところへヒョンナムが居合わせ捜索の手助けをすることになった。
彼女は地下室の住民が屋上でウンシルの犬を食べようとしている現場に出くわした。


寸評
オープニングで「ちゃんと管理して使ってます」なんてメッセージが流れるが、動物愛護協会や愛犬家が見ると卒倒しそうな内容で、もしかしたら動物虐待は行われていたのではないかと思ってしまうシーンが続く。
物語の舞台はあるマンションで、そこの住人の大学教授になれずに妻に食べさせてもらう男ユンジュと、管理事務所に勤めるものの上司や同僚から冷たい視線を浴びせられる女ヒョンナムという、ダメダメの男女を中心に話が展開するので中身はコメディである。
コメディなのでそんなバカなと思うシーンがありながらも、カメラワークを始めしっかりと描いているのでドタバタ的な軽さはなく本格ドラマの雰囲気を同時に有している不思議な作品となっている。

ユーモアはブラックでディテールを使った笑いを誘うものとなっている。
ユンジュに「韓国は昔から規則を守らない国だ」と言わせたりしているが、韓国人の多くがそのように思っているのだろうと想像する。
いっそ、「大統領も国家間の約束を守らない」と言わせてほしかった。
ユンジュが教授になる為の行為を見ていると、どうやら韓国社会はワイロ社会であることを感じる内容である。
一方で、コンビニまでの距離を測るのにトイレットペーパーを転がしてみたり、老婆の遺言状にあったのが「私の切干大根を食べて」だったりするクスクス笑ってしまう小ネタも多い。
コンビニまでの距離を測る賭けに負けたユンジュが妻のウンシルをお姉さんと呼ぶようになるのも可笑しい。
登場人物のキャラクターは笑うしかない。
ウンシルはひたすらクルミを食べる妻で、夫のユンジュを顎で使っている。
マンションの警備員は地下室で犬を食べているのだが、韓国って犬を食べる文化があるのかな?
ヒョンナムの女友達のチャンミは太目で、二人はまさにデコボコ・コンビといった風である。
チャンミはヒョンナムに「あのアマ!」とかつぶやいていて、仲がいいのか悪いのか分からない愉快な友達である。
地下室にはボロ布に紛れて住み込んでいる住人がいるが、彼も犬を食べようとしているから、やはり韓国には犬を食べる文化があるのだろう。
「ネギ゙を入れればもっと美味しいのに、馬鹿だなあ」と言って、鍋をつっつくシーンには笑てしまう。

この映画に出てくる人々は、みんな日常を生きているフツーの人たちで、特に中心人物の二人は、ダメな日常を送りながら、なんとかそこから脱却したいと思っている。
普通の人々の日常の中での幸せや怒り、悲しみといったものを抑制的に描いていて、単なるコメディとしていないのはホン・ジュノ監督の力量を感じさせる。
後半では、ユンジュとウンシルの夫婦の絆や、ユンジュの改心の情などを見せて観客をグッと感動させるツボも心得たものとなっているが、ひとひねりしたユーモアを組み入れてコメディ・スタイルを崩していない。
可愛がっていた犬が見つからなければ食事もできないと言っていた少女が、そんなことも忘れて新しい小犬を連れまわしている姿は、人はどれだけいい加減な動物であるかを言っているようだ。
ラストシーンではダメな生活から抜けだそうとする二人への光明を感じさせるが、しかしユンジュの姿は彼が日本人であれが、きっと、これでいいのかなあと思ってしまうだろう。
韓国は僕から見ればやはり変な国に思える。


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