おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

ある子供

2024-04-10 06:56:15 | 映画
「ある子供」 2005年 ベルギー / フランス


監督 ジャン=ピエール・ダルデンヌ / リュック・ダルデンヌ
出演 ジェレミー・レニエ デボラ・フランソワ
   ジェレミー・スガール ファブリツィオ・ロンジョーネ
   オリヴィエ・グルメ ステファーヌ・ビソ
   ミレーユ・バイィ アンヌ・ジェラール

ストーリー
舞台はベルギー東部の鋼鉄産業の町シラン。
20歳の青年ブリュノと18歳の恋人ソニアの間に子供が産まれる。
ブリュノは手下のように使っている少年スティーヴたちと共に盗みを働き、盗品を売った金でその日暮らしをしている身だ。
ブリュノは真面目に生計を立てるより泥棒や乞食をした方が楽だと思っている無責任男である。
ソニアは彼に真面目に働いて欲しいと頼むが、ブリュノにその気はなく、職業斡旋所に並ぶ列から離れ、なんと子供を金で売ってしまう。
子供の売買は寂れた建物の中の一室で、仲介者を介してお互いの顔を見ずに行われた。
赤ちゃんを売るという信じられない行為にソニアはショック状態となり卒倒したソニアは病院に運ばれる。
足がつくのを恐れた買い手のおかげでなんとか子供は取り戻せたものの、意識を戻したソニアは警察にことの次第を話していた。
ソニアは相変わらず軽い態度のブリュノに怒りを燃やし、彼を自分の家から追い出す。
ブリュノは仲介者の男たちから、儲けそこなったと違約金を脅し取られるようになる。
金に困ったブリュノは、スティーヴと共にひったくりを働きスクーターで逃げるが、執拗に警察に追い掛けられ、スティーヴが補導されてしまう。
まもなくブリュノは自首。
やがて服役中のブリュノのもとに、ソニアが訪ねてきて、ブリュノは思わず嗚咽をあげるのだった。


寸評
この映画は評価する人と酷評する人に二分されているようで、評価する人はこの作品にカンヌの金賞を与え、キネマ旬報社のベストテン投票で4位の座を与えた。
僕は酷評しないまでもこの作品を評価しない。
なにを描きたいのかはボンヤリと分かるのだが、結局は「ダメ男のダメな生き方を描いただけ」という気分に行きついてしまうのだ。

ブリュノは大人になりきれないまま子供を授かった青年(少年と言っても良い)だ。
自分の気分のままに生きていて、他人の気持ちを思いやるような所がない。
生まれたばかりの自分の子供を売るという考えられないような行動を取るのだが、自分のしたことを悪いと思っていないので、普通の会話をするようにソニアに「売ったよ、また作ればいい」と告げる。
彼は自分のしたことの意味が分かっていなくて、ソニアがショックのあまり気絶してしまったことで初めて事の重大さを知るのである。
まずいことをしたのだと悟ったブリュノは赤ちゃんを取り戻す。
ブリュノはその場限りの行動を取る男なのだ。

乳母車で散歩に出れば道行く人に小銭をせびるし、年下の少年を使って盗みを働きそれを売りさばく。
その場その場の生活をしているのだが、手に入れた金で、ソニアにそろいの服を買ってやったりもするし、少年たちにも分け前を与えてやっている。
ブリュノはダメ男だが根っからの悪ではないので、自分の手下になっている少年を見捨てるようなことはできない。
川の中に逃げ込んで溺れそうになった少年を必死で救ってやるし、警察に補導された少年を棄てておけず、自分が首謀者だと自首してくる分別は持っている。
それでいながら平気で悪事を働くから、まったく道徳感のない男なのだ。
ソニアに対しても平気でうそをつく。
その内容は、子供を売り飛ばそうとしているのに、「公園を散歩している」などというものである。
してもいいことと、やってはならないことの判別が全くついていない男なのだ。

ではなぜこんな男が出現してしまったのか?
ベルギーの失業率が高くて若者の働き口がないせいなのか。
そんな社会に未来を見いだせないでいる若者の苛立ちの為なのだろうか。
映画はそんな若者社会で生まれてしまった子供を救えない政治を告発していたのだろうか。
あるいは、そんな不安定な精神状態の若者を描いただけの作品だったのだろうか。
色々考えたりもしてみたが、しかしそれでも「何なんだ、この男は!」という嫌悪感しか湧いてこなかった。
見ているうちにブリュノに対して可哀そうとかの同情はなく、徐々に高まっていく嫌悪感だけを感じていた。
僕は悪意のないブリュノのとる行動に共感できなかった。

う~ん、どこを評価したのかなあ・・・カンヌは?


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