おじさんの映画三昧

旧作を含めほぼ毎日映画を見ております。
それらの映画評(ほとんど感想文ですが)を掲載していきます。

2010年

2021-08-14 07:53:37 | 映画
「2010年」 1984年 アメリカ


監督 ピーター・ハイアムズ
出演 ロイ・シャイダー
   ジョン・リスゴー
   ヘレン・ミレン
   ボブ・バラバン
   ケア・デュリア
   ダナ・エルカー

ストーリー
ボーマン船長が、モノリスが木星を回っているのを発見し「何てことだ。星がいっぱいだ」という言葉を残し行方不明となってしまってから9年が経った2010年。
ディスカバリー号の計画責任者で元アメリカ宇宙飛行学会議議長のヘイウッド・フロイド博士、HALの生みの親チャンドラ博士、ディスカバリー号を再生させる訓練を受けたエンジニアのカーノウの3人は、ソビエトのタニヤ船長らと共に宇宙船レオーノフ号に乗り込み、木星へと向かった。
世の中は、米ソ間の緊張が高まっていた。
やがてディスカバリー号とのランデヴーに成功したところで、カーノウは宇宙遊泳してディスカバリー号に乗り移り、ディスカバリー号を再始動させ、そしてチャンドラ博士の手でHALが蘇る。
いよいよ、木星軌道上でモノリスの調査の準備が始まった。
しかし、モノリスに近づいたソビエトの隊員のポッドが吹き飛ばされてしまった。
その頃地球では、米ソの関係が悪化し、いつ宣戦布告があってもおかしくない状況に陥っていた。
ついにはディスカバリー号とレオーノフ号に米ソの隊員が分かれる命令まで下された。
そんなある日、フロイド博士は、ボーマンの亡霊からの声を受けとった。
声は「あなたたちは2日以内にここを離れなくてはいけない」「すばらしいことが起ころうとしている」とくり返した。
すると突然モノリスが姿を消し、同時に木星表面に見慣れぬ黒斑が生じて巨大化していた。


寸評
「2001年宇宙の旅」がなければ普通のSF映画だと思うが、「2001年宇宙の旅」の続編だと思えば興味を維持させながら見ることが出来る内容となっている。
前作の経緯が語られた後、メインテーマである「ツァラトゥストラはかく語りき」に乗ってタイトルバックが流れ始めると、もうそれだけでワクワクしてしまう。
哲学的な謎を秘めていてあれこれ考えさせた前作に比べると「2010年」は分かりやすい。
ソ連が崩壊してしまって今となっては信憑性に乏しいが、米ソが一触即発という政治的背景が面白く取り入れられていて、宇宙空間における政治と科学のぶつかり合いは映像に加えてもう一つの見所となっている。

宇宙に行ったことがない僕は、画面に広がる宇宙空間に酔いしれる。
レオーノフ号とディスカバリー号の間に渡されたブリッジのシーンにおける、足元に広がる宇宙空間の無限の広がりを目にすると、僕もあのブリッジを歩いてみたいと思ってしまう臨場感だ。
チャンドラ博士とエンジニアのカーノウがドッキングしたディスカバリに入り、宇宙服のヘルメットを開けたとたんに変な匂いを嗅いで、もしかすると死体が腐敗した匂いではないかと気味悪がるが、それは食料の肉が腐った匂いだったというような人間臭いエピソードが盛り込まれているのも前作との違いだ。
不気味だったコンピューターのHAL9000は事態の真実を語ってくれたチャンドラ博士に感謝の意を示したように、今回は人間に対して従順である。
HALの反乱の原因も明かされるが、僕にはそれが劇的なものに感じ取れなかった。

ディスカバリー号の近くには9年前にボーマンが接触した巨大なモノリスが浮遊していて、ソ連側は作業ポッドで調査に向かうが、突如として放射された電磁波によって乗り込んでいたブライロフスキー共々破戒される。
ポッド消滅後に実体のないボーマン船長は地球に到達し、人間だった時の大切な人である元妻を訪ねているので、電磁波の正体はモノリスとの接触で実体を持たないエネルギー生命体となったボーマン船長だと思われる。
元妻が再婚していて幸せな生活を送ている事を確認しボーマン船長は宇宙へ帰っていくのだが、この一連の流れは分かりにくく、僕が想像を巡らせて理解するのに時間がかかった。

HAL9000は「自身の遺棄」という自殺に等しい命令に従うが、取り残されたHAL9000が実体のないボーマン船長と再会することでこの映画のメッセージが我々にも届けられる。
そのメッセージとは、「これらの世界は全てあなた方のもの。ただしエウロパは除く。エウロパへの着陸を試みてはならない。全ての世界を皆で利用するのだ。平和のうちに利用するのだ」というものである。
これを受けて米ソは和解を見せる。
モノリスは平和を愛する知恵の化身だったのではないか。
ディスカバリー号は破壊されてしまうが、HAL9000はモノリスによって導かれ、ボーマン船長と共にその一部となったのだろう。
エウロパには湿地帯が出現しジャングルが生い茂っているが、その中に一体のモノリスがそびえていて、その姿は月で人間と接触したように新たな知的生命体がやって来ることを待ち望んでいるようでもある。
もしかするとエウロパは原始地球の姿なのかもしれない。


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