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ささやんの天邪鬼 ほぼ隔日刊

世にはばかる名言をまな板にのせて、迷言を吐くエッセイ風のブログです。

野獣を監視下におくために

2016-12-09 16:13:13 | 日記
よろこばしい知らせを「福音」と言うが、これは福音に当たるのだろ
う。ネット上に掲載されていた、産経新聞のニュースである。

「相模原市の障害者施設殺傷事件を受け、再発防止策を検討してきた
厚生労働省の有識者チームは8日、措置入院した全患者の退院後の支
援計画を都道府県や政令市が作るよう求める報告書を公表した。患者
が転居しても支援が確実に引き継がれる仕組みも提言。厚労省は早け
れば来年の通常国会に、こうした内容を盛り込んだ精神保健福祉法改
正案を提出する。」(産経新聞12月8日配信)

つまり、野に放つと危険なヤバい野獣を、野放しにせず、きちんと監
視下におくための計画案が、厚労省によって提出されたというのであ
る。かつて私は、相模原市の障害者施設大量殺傷事件を受けて、本ブ
ログで次のように書いたことがある。

今後、この種の事件の再発を予防しようと思うなら、措置入院に伴う
入退院の見きわめのあり方について、根本的な検討を欠かすわけには
いかない。

こう書いた私が、この報を「福音」だと思わないわけはない。今回
の、厚労省による報告書は、措置入院の後、「他者に危害を加える恐
れがなくなった」と診断され、退院した者を、きちんとフォローアッ
プの対象にしようという提言である。

ところがこのもっともな提言に対して、あろうことか、計画の実施主
体になる自治体の側から、困惑とも苦情ともつかぬうめき声が出され
ているという。こんな具合である。

最終報告では、自治体が措置入院した患者の退院後の支援計画案を作
成し、退院後は計画に沿って支援を継続していくことが盛り込まれ
た。しかし、措置入院の件数は自治体ごとに大きく異なる。負担が増
える自治体から人手不足との声も聞かれた。
(中略)
ある自治体の担当者は「現状では保健所の人手がとても足りない」と
打ち明ける。この自治体には措置入院後の支援についてのガイドライ
ンがあるが、「人手が足りない保健所は、支援まで手が回っていない
のが現状だ」と明かす。別の自治体の担当者も「予算がないと動けな
い。補助金が出るのか。それで足りるのか」と不安をのぞかせた。
(産経新聞12月8日配信)

残念なことだが、一度措置入院の対象になった者は、「他者に危害を
加える恐れがなくなった」と診断されて退院した後でも、つねに再発
の可能性を有している。彼/彼女は、いつ野獣に戻るとも分からない
動物なのだ。

やれやれ、予算不足による人手不足ですか。なるほど。でも、それを
理由に、潜在的野獣を監視下におく体制が組めないというのなら、無
用なハコモノなど作るまえに、予算の使途をもっと精査すべきだろ
う。

地方自治体の苦しい会計事情は分かるけど、ハコモノを作るより、
人件費に予算を使ったほうが、地方の活性化にもつながるし、そ
のほうが良いと思うんだよね。
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日露会談のゆくえ

2016-12-08 13:45:37 | 日記
プーチン・ロシア大統領の来日が近づき、北方領土問題をめぐって、
巷(ちまた)では期待と心配の声が渦巻いている。期待があるから、
心配もする。「山口まで来るからには、色よい返事がもらえるのだろ
う」と思うから、「でもなぁ、難しい問題だから、そうは問屋が卸さ
ないかもなぁ」と考えてしまうのだ。

安倍首相とプーチン大統領との首脳会談の成り行きが心配で心配で、
夜もおちおち眠れない人のために、気休めになるかもしれない(な
らないかもしれない)一文を、世に放つことにしよう。

結論から先に、端的に言う。この会談によって北方領土が日本に返還され
ることは、まずあり得ない。
私はそう断言する。

考えてもみよう。

安倍首相は考える。「私の故郷の山口まで来てくれたのだから、ウラ
ジーミルは色よい返事を私にしてくれるはずだ。長年念願だった北方
領土の返還を、彼はきっと了承してくれるはずだ」

一方のプーチンは、こう考える。「わざわざシンゾーの故郷のヤマグ
チまで来たのだから、シンゾーは色よい返事を私にしてくれるはずだ。
私は2018年に、大統領選挙を控えている。国民の支持を失うわけには
いかない。そんな私の立場を察して、シンゾーは、私がニェットと言う
しかない北方領土の問題を、持ち出すようなことはしないだろう」

こういう考えを持った二人が顔を突き合わせて、いくら話し合っても、
実りのある答えが出るわけがない。

だから、この会談に期待するのは間違っている。心配も無用。
それよりも、経済協力が活発になって、国境の壁が無意味化するのを
待つほうが賢明だと、私は考える。
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外交的敗北だって?

2016-12-07 14:36:44 | 日記
ネットの森を散策していたら、あるブログ記事に出会った。これを読
んで、私は腹が立った。無性に腹が立った。なぜなのか。読者諸賢に
も、まずはその記事を読んでいただこう。

共同通信の大スクープで注目すべきは、オバマ大統領が安倍首相に不
快感を抱いた理由として、単にトランプ会談で現職大統領の面目をつ
ぶされただけではなく、度重なる要請を無視して安倍首相が対ロ融和
政策に固執したこともあるという。
(中略)
そしていま我々は目撃している。
日米関係を損なってまで安倍首相が固執したプーチン大統領の訪日
は、肝心の北方領土問題解決の進展が見通せないまま、完全な失敗に
終わろうとしている事を。
米国の信頼を失い、ロシアとの関係強化も見通せない安倍首相。
(中略)
これ以上の外交的敗北はない。
この共同通信の大スクープは内閣総辞職ものだ。
(天木直人《安倍・トランプ会談によって決定的に終わった安倍・オ
バマ関係》)

このブログ記事の筆者である元外交官の天木氏によれば、内閣総辞職
に値する安倍首相の外交的敗北は、トランプ会談と対ロ融和政策に
よって、オバマ・アメリカ現職大統領の信頼を失い、それによって
「日米関係を損な」うとともに、加えてロシアとの関係にも難渋し、
北方領土問題解決の進展が見通せないことだというのである。

おいおい、馬鹿も休み休み言えよ。
私の考えを分かりやすくするために、単純な図式化を行うことにしよ
う。
ここにあるのは、O(オバマ)、A(安倍)、P(プーチン)、T(トラ
ンプ)という4つの項である。OはTともPとも対立・敵対関係にある。
こういう対立関係があるとき、Aの前には、「Oを取ってTとPを捨てる」
か、それとも「Oを捨ててTとPを取る」かの選択だということにな
る。

Aが下した選択は、「Oを捨ててTとPを取る」という判断だったが、
これが誤った判断だと言えるのだろうか。口先だけで何もしない(でき
ない)まま政権を去ろうとしているオバマ大統領との関係を捨てて、ア
メリカの次期大統領に決定しているトランプや、現にロシアで権勢をふ
るっているプーチンとの関係を構築しようとすることは、日本の政治的
リーダーとしては、きわめてまっとうな選択ではないだろうか。現実的
で、前向き志向の、ごくごくまっとうな選択ではないだろうか。

天木氏が安倍首相の「政治的敗北」だとしているのは、トランプが
TPP離脱を表明したことや、プーチンが北方領土の返還を表明しな
いことを指しているのだろうが、TPP問題は、まだ解決のとば口に
立ったに過ぎない。北方領土をめぐるロシアと日本の戦いの歴史は長
いが、歴代政権が解決の見通しすら得られなかったこの問題に、安倍
首相は融和的首脳外交でのぞみ、なんとか風穴をあけようとしている
のだ。端緒段階の一局面をとらえて、それがすべてであるかのように
断じるのは、早計であり、独断というものだろう。

誤解されたくないので、一言付け加える。私は政治家としての安倍首
相をべつに擁護しようとしているわけではない。むしろ安倍内閣は「総
辞職ものだ」と思っている。ただ、その理由は、彼の「外交的敗北」に
あるのではなく、(本ブログで既述したとおり)カジノ法案に見られ
るような、公私混同のゴリ押し的手法にあると、私は言いたいのであ
る。
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国家の論理 そのゆくえ

2016-12-06 15:17:18 | 日記
国家は自己の論理に従って、国益の増大をめざす。その結果、国家同士の衝突が
避けられないが、それが端的に具体的な形をとるのが、領土をめぐる紛争である。
日本の場合、まだ紛争と呼ぶまでには至らないものの、北方四島(「国後島・択捉
島・色丹島・歯舞群島)をめぐるソビエト連邦(現・ロシア)との間の争いや、
尖閣諸島をめぐる中国との間の争いなどがそれに当たる。

ロシアとの関係といえば、ロシアのプーチン大統領が近々来日し、12月15日に、
安倍首相の故郷である山口県で会談することになっている。安倍首相は北方領土問題
の解決に向けて、長年にわたりプーチン氏との個人的な信頼関係を築き上げてきた。
今回の首脳会談はその総決算となる。安倍首相からすれば、ロシア大統領との個人的な
信頼関係を深めれば、北方領土問題の解決は日本側の思惑通りに進むはずだ、との思い
だろう。

ロシアとの間では、首脳同士のこうした信頼関係だけでなく、相互の経済協力の機運も
高まっている。グローバル化の波に押されて、企業の経済活動は容易に国境の壁を超え
るようになっている。両国間の経済活動の活発化が両国間の壁を低いものにすれば、両
国間にある領土問題の深刻度もそれだけ小さいものになり、問題の解決を阻む障害は
(つまり障壁は)減るに違いない、という期待混じりの見通しが、(特に日本側に)あ
ることは否定できない。

国境の壁を築く国家の論理と、その壁を無意味化する経済の論理。これら二つの論理の
葛藤は、それぞれの国家首脳の心の内部にもあるはずだ。来たるべき日露首脳会談では、
この葛藤がどういう展開をもたらすかが見どころになる。

アメリカのトランプ次期大統領は、経済の論理を国家の論理の内部へと取り込むことに
成功した(ように今のところは見える)が、さてさてロシアのプーチン大統領はどう出
るのか。まずはお手並み拝見である。
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国家と国民の絆

2016-12-04 16:33:22 | 日記
国家の民、国民であるとは、どういうことなのか。たとえば、中国と日
本。この二つの国は現在、友好関係とはほど遠い関係にあるが、両国の
国民同士が、親密な友好関係を結んでいる場合がある。

東京新聞のきょう(12月4日)の社説《週のはじめに考える 地方が支
える日中関係》は、日中それぞれの国の地方の国民が、親密な交流を重
ねながら、両国の絆を支えている具体例を、いくつか紹介している。

たとえば、中国近代芸術の巨匠・呉昌碩を慕う多くの日本人が、呉昌碩
の関係者と交流を深め、領土をめぐって日中関係が悪化したときでも、
この関係を存続させたケース。

また、日本での留学経験を経て、二十年前に出版社・日本僑報社を創設
した段躍中さんが、民間交流に尽力し、日中関係の悪化などものともせ
ず、日中文化の懸け橋となる三百冊余の本を陸続と出版してきたケー
ス。

東京新聞の社説は、国家指導者が「自国第一主義」の傾向を強めている
昨今の趨勢を指摘し、こうした趨勢にあってこそ、地方同士の民間交流
が「安全弁」として、(補完的でありながらも)重要な意味を持つのだ
と強調している。

この東京新聞の社説を読んで、私は、国家と、国民であることとはどう
関係するのだろうかと考えた。

国家同士の関係にかかわらずに深められる国民同士の交流、ということ
で言えば、ビジネスを通して知り合った両国の民間人同士が、飲み会の
席などで親交を深める、といったケースも考えられる。二人が男女であ
る場合には、それが恋愛関係に発展して、めでたくゴールインといった
こともあり得るだろう。

国家は、限りなく自国の国益の増大を追求する。国家と国民は、それぞ
れ別個の論理で動いている。国家が、国民とは別の論理に従って、自国
の国益の増大を追求するとき、その結果としてある国とある国との利害
が衝突し、国交断絶や戦争寸前という事態に至ったとき、両国の国民同
士の交友関係はどのような作用を及ぼすのか。

B国と敵対関係にあるA国で、次の指導者を選ぶ選挙があり、好戦派
のp氏と戦争慎重派のq氏が立候補したとき、B国の国民と親交を結ぶ
A国の国民が多ければ、戦争慎重派のq氏が当選する蓋然性は高くなる、
とは言えるだろう。

この問題領域に考えるべき点は多いが、「アメリカ・ファースト」で
突っ走る、あのトランプ次期アメリカ大統領の場合はどうだろうか。東
京新聞には、この問題を考えるための縁(よすが)として、日米におけ
る民間交流の事例を、いくつか紹介していただけると有難い。
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