芥川龍之介といえば、近代日本を代表する文豪の一人である。その芥川について、おもしろい記事を読んだ。ちょうど100年前、関東大震災が起こったときのことである。
「妻の文(ふみ)は『追想 芥川龍之介』に書き残している。一人で逃げた芥川を『赤ん坊が寝ているのを知っていて、自分ばかり先に逃げるとは、どんな考えですか』と叱ると、芥川は『人間最後になると自分のことしか考えないものだ』と語ったとされている。」
(朝日新聞9月1日)
この記事から判断すると、芥川はよほどのエゴイストであり、また、生命への執着が人一倍強い人物だったと推察できる。
ここで私は疑問を持った。芥川は関東大震災から4年後の1927年、睡眠薬を飲んで自殺している。芥川はなぜ自殺したのか。生命への執着が人一倍強かった芥川が、なぜ自殺したのかーー。
しばらく考えて、私は次のような結論にたどり着いた。彼はエゴイストだから自殺したのだ。自分のことしか考えられないエゴイストだから、彼は自殺したのだ。
普通の人なら、いくら悩みが深く、苦しくても、遺される妻や子供のことを考えて、自殺を思いとどまる。だが芥川は、妻や子供のことなど全く考えなかったのだ。考えられなかったのだ。
彼の頭の中には、妻も子供もおらず、親も兄弟も友人もいなかった。そういう係累は一切存在せず、ただ自分一人が独りで存在するだけだった。
そういう〈自分〉が彼に苦悩を与える存在だったとしたら、彼は迷わず自殺しただろう。実際、彼にとって〈自分〉はそういう存在だったに違いない。わかるよなあ。
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