
首相には大きく3つの役割がある。1つは、政治理念の旗を掲げて、国民を引っ張っていく政治指導者としての役割である。人権尊重の理念を掲げて、公正な民主社会を維持・発展させていくことなどがそれに当たる。
もう1つは、行政機関の長として、国民の暮らしを支えていく役割である。厚労省を管轄して、コロナ感染の拡大を防ぎ、国民の「安心・安全」を図ることなどがそれに当たる。
最後の1つは、社会正義の実現である。先ごろ岸田内閣は、18歳以下への10万円相当の「コロナ給付金」をめぐり、(一律給付ではなく)年収960万円の所得制限を設けたが、これは、「援助を必要とする困窮世帯に、必要なだけの援助を」という社会正義の理念(「幾何学的平等」の理念に基づいた正義概念)を実行したものと言えるだろう。
さて、岸田首相は最近、3番目の「社会正義の実現」の面で、注目すべき改革を行い、従来の安倍路線から一歩踏み出して、リベラルな宏池会の領袖としての面目をほどこした。何かといえば、それは、外国人労働者の受け入れをめぐる政策である。
けさのネットの森の散策で出会った記事《岸田首相は早くもリベラル色全開 安倍元首相が避けてきた”事実上の移民政策”で波紋》(「デイリー新潮」11月28日配信)に詳しいが、岸田首相は、外国人労働者の在留期限を事実上撤廃して、外国人労働者の受け入れ拡大へと舵を切ったのである。
この外国人労働者の受け入れ政策は、生産現場の深刻な人手不足に対応しようとするもので、「援助を必要とする困窮者に、必要なだけの援助を」という社会正義の実行とも言えるが、安倍政権は保守層の「移民アレルギー」に気を遣い、結局、実質的な門戸を狭める政策をとってきた。
保守層の狭量な「縄張り意識」を退け、正義に適った寛容主義の政策をとった点で、リベラル・岸田の面目躍如の感がある。私・天邪鬼爺も「グズの岸田」と揶揄した前言を撤回しなければならない。
まあ、メルケルさんの轍を踏まなければいいけど。
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