「俺が、女性を馬鹿にしているって、どういうことだよ!え、イズミ!」
僕もビールをけっこう飲んでいたので、思わず、直情的な言葉を吐いてしまう。
「だって、女性を簡単に考えすぎてるよ。パパは・・・」
と、イズミも一歩も引かない構えだ。
「おい・・・ちょっと二人共、ヒートアップし過ぎだぞ・・・イズミも、パパは今日フラれたばっかりなんだ・・・少しはやさしくしてやれよ・・・」
と、この中で、一番大人なガオが、二人の間に割って入る。
「はあ、まあ、それはそうですけれど・・・」
と、イズミは、幾分冷静さを取り戻して、勢いを止める。
「俺はイズミ程、女性心理は、わからん。わからんがー・・・」
ガオは、今度は僕を見ながら、何かを言おうとする。
「パパは、少し、自分を卑下し過ぎなんじゃないかな・・・イズミは、そういうパパの姿が見たくないんだよ。だから、あえてキツイことを言ったんじゃないかな?なあ、イズミ」
と、ガオは、年上の男性として、イズミの性格を考えながら話す。
「ええ・・・まあ、そうですけどね・・・」
と、イズミは、酔っぱらないながらも、言葉を返す。
「女性は確かに、男性を外見で見る・・・確かに小太りより、スマートな方が一見有利に見える。でも、女性はパパタイプの自分の父親みたいな男性にも甘えるんだ」
と、イズミは豊富な女性体験から、女性心理を話してくれる。
「女性は外見だけで決して判断しない・・・外見だけで判断する女性は、その程度の女性ってことですよ。パパの良さのわからない、その程度の女なんだ」
と、イズミは、自分の思いを話してくれる。
「だって、パパの良さって、そのやさしそうな笑顔と、責任感にあふれていて・・・その頼り甲斐でしょ?何を聞いても親切に教えてくれそうな、その頼り甲斐ですよ」
と、イズミは、イズミなりの答えを出そうとしている。
「それを理解し、そんなパパを好きになったのが、エイコさんじゃ、ないんですか?そういうパパの外見を好きになったのが、エイコさんじゃ、ないんですか?」
と、イズミは、結論を出そうとしている。
「ほう、なるほど・・・イズミは女性心理がよくわかっているようだな・・・であれば、エイコちゃんは、パパの外見が美しくないから、嫌いになったわけじゃないんだな」
と、ガオがイズミに質問する。
「何か別の理由なんじゃないかな・・・少なくとも、パパが美しくないから、なんて思ってないよ、エイコさんは。それだったら、最初から好きになるはずない」
と、イズミは結論づける。
「パパさー・・・そのーエイコちゃんの友人が言ったっていう「パパは大きい」って、セリフ・・・パパは美しくないって言質みたいにとってるけど、違うんじゃない?」
と、ガオが話してくれる。
「どういうこと?」
と、僕はガオの顔を静かに見つめる。
「いやあ、俺は女性心理は苦手だから、そこから先はわからんが・・・その言葉をエイコちゃんがパパに言った意味は、また、別なんじゃないのかなー」
と、ガオは疑問を呈している。
「その言葉・・・エイコさんとパパが付き合い始めてから、どれくらいで、言ったの?」
と、イズミが真面目な顔をして、質問してくる。
「うーん、かなりすぐだったんじゃないかな。付き合いだしてから、3週間とか、1ヶ月とか、それくらい・・・」
と、僕が素直に話すと、
「エイコさんが「わたし、大きなくまさんを恋人にしているの・・・パパみたいなひとを恋人にしているの」そう言ったら、大きなひとでいいな・・・そう友人が言ったとか?」
と、イズミは、女性になりきって、そう言葉に出す。
「女性にはいろいろな好みのひとがいます。もちろん、イケメンが好きなのは共通するけど・・・女性はお父さんが大好きなモノですからね」
と、イズミは、女性通なところを僕らに見せる。
「だって、3年続いたんでしょう?だから、その言葉は・・・エイコさんにとっては、褒め言葉で・・・プラスの意味だったと思います。そうじゃなければ、3年も・・・」
と、イズミは、言葉の解釈に対して、結論づける。
「うん。俺も、イズミの解釈の方に軍配を上げるな・・・だからさー、パパの言うこともわかるけど・・・そんなに自分を卑下する必要ないって」
と、ガオは、僕の肩を豪快に叩くと、
「それに、女と別れたってことは、新しい女との、また、新しい出会いが始まるってことじゃないか!そっちの方を楽しみにしようぜ!」
と、ガハハと笑いながら、豪快に缶ビールを飲む、ガオ。
「そうですよ。パパは、自分に自信持ってりゃ、いいんです!」
と、こちらも静かに缶ビールを飲む、イズミ。
「パパは、パパなんだから」
ガオもイズミも何かが一件落着したように、さわやかな顔になって、ビールを飲み始める。
僕もそんな雰囲気になっていたけれど・・・今日はその程度で辞めておこう。
いろいろなことがあって、疲れた、今日は。
「モンブランかー。いやあ、一生に一度でいいから、フランスって行ってみてーよなー」
僕はエイコの部屋でテレビを見ていた。
夜、二人でピザを取り、ブラックタワーというドイツワインを飲みながら、楽しい時間を過ごしていた。
「ふーん、たくさんのひとが自転車に乗っているけど・・・これは、何て言うレースなの?」
と、エイコはワイングラスを片手に不思議そうな表情でテレビ画面を見つめている。
「ツール・ド・フランスだよ。・・・俺も中学生の時に、「なるほど・ザ・ワールド」っていう番組で知ったんだけど、ヨーロピアン・スポーツのひとつなんだ」
と、僕が説明する。
「ヨーロピアン・スポーツ?・・・他には何があるの?」
と、エイコが聞いて来る。
「ツール・ド・フランスの他にも、F1だろー、アメリカズ・カップだろー、パリダカだろー・・・みんな、すっげー大人のかっちょいーレースなんだよー」
と、僕は話す。
「すっげー、あこがれ。いつか、本場で、この目で見てみたいよなあ・・・」
と、僕が話すと、
「鈴木さんって、すっごい物知りなんだねー」
と、エイコは目いっぱいの笑顔で、僕を見る。
「なーんか、今日の鈴木さん・・・すっごい好きー」
と、エイコは、僕に抱きついてくる。
「おいおい・・・ワインがこぼれちゃうだろ・・・」
と、僕はそのエイコの行動に目いっぱいのうれしさを感じている・・・。
「・・・夢オチかあ・・・」
僕は自分の布団で目を覚ますと・・・午前6時・・・まだ、起きるには、早い時間だ。
ガオもイズミも気持ちよさそうに、自分の布団で寝入っている。
僕は二人を起こさないように、静かに、ガサゴソと自分のバックの中をまさぐり・・・エイコの写真を取り出してみる。
少しはにかんだような笑顔。
彼女が夕飯を作りに僕の部屋へ来てくれた時に撮った写真・・・付き合いだして1ヶ月くらいの頃の写真だった。
ジーンズ姿の彼女は、すっぴんでリラックスしている。
「いい笑顔の写真・・・彼女は心からパパを好きだったんだね」
と、いつの間にか隣で目覚めたイズミが一緒になって、写真をのぞき込んでいる。
「ほんと・・・まだ、身体が、別れた事実に、なじんでいないや・・・」
冬の鎌倉の朝は、すっかり、冷え込んでいた・・・タケルの心はまだ、少し暖かだったけれど。
(つづく)
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僕もビールをけっこう飲んでいたので、思わず、直情的な言葉を吐いてしまう。
「だって、女性を簡単に考えすぎてるよ。パパは・・・」
と、イズミも一歩も引かない構えだ。
「おい・・・ちょっと二人共、ヒートアップし過ぎだぞ・・・イズミも、パパは今日フラれたばっかりなんだ・・・少しはやさしくしてやれよ・・・」
と、この中で、一番大人なガオが、二人の間に割って入る。
「はあ、まあ、それはそうですけれど・・・」
と、イズミは、幾分冷静さを取り戻して、勢いを止める。
「俺はイズミ程、女性心理は、わからん。わからんがー・・・」
ガオは、今度は僕を見ながら、何かを言おうとする。
「パパは、少し、自分を卑下し過ぎなんじゃないかな・・・イズミは、そういうパパの姿が見たくないんだよ。だから、あえてキツイことを言ったんじゃないかな?なあ、イズミ」
と、ガオは、年上の男性として、イズミの性格を考えながら話す。
「ええ・・・まあ、そうですけどね・・・」
と、イズミは、酔っぱらないながらも、言葉を返す。
「女性は確かに、男性を外見で見る・・・確かに小太りより、スマートな方が一見有利に見える。でも、女性はパパタイプの自分の父親みたいな男性にも甘えるんだ」
と、イズミは豊富な女性体験から、女性心理を話してくれる。
「女性は外見だけで決して判断しない・・・外見だけで判断する女性は、その程度の女性ってことですよ。パパの良さのわからない、その程度の女なんだ」
と、イズミは、自分の思いを話してくれる。
「だって、パパの良さって、そのやさしそうな笑顔と、責任感にあふれていて・・・その頼り甲斐でしょ?何を聞いても親切に教えてくれそうな、その頼り甲斐ですよ」
と、イズミは、イズミなりの答えを出そうとしている。
「それを理解し、そんなパパを好きになったのが、エイコさんじゃ、ないんですか?そういうパパの外見を好きになったのが、エイコさんじゃ、ないんですか?」
と、イズミは、結論を出そうとしている。
「ほう、なるほど・・・イズミは女性心理がよくわかっているようだな・・・であれば、エイコちゃんは、パパの外見が美しくないから、嫌いになったわけじゃないんだな」
と、ガオがイズミに質問する。
「何か別の理由なんじゃないかな・・・少なくとも、パパが美しくないから、なんて思ってないよ、エイコさんは。それだったら、最初から好きになるはずない」
と、イズミは結論づける。
「パパさー・・・そのーエイコちゃんの友人が言ったっていう「パパは大きい」って、セリフ・・・パパは美しくないって言質みたいにとってるけど、違うんじゃない?」
と、ガオが話してくれる。
「どういうこと?」
と、僕はガオの顔を静かに見つめる。
「いやあ、俺は女性心理は苦手だから、そこから先はわからんが・・・その言葉をエイコちゃんがパパに言った意味は、また、別なんじゃないのかなー」
と、ガオは疑問を呈している。
「その言葉・・・エイコさんとパパが付き合い始めてから、どれくらいで、言ったの?」
と、イズミが真面目な顔をして、質問してくる。
「うーん、かなりすぐだったんじゃないかな。付き合いだしてから、3週間とか、1ヶ月とか、それくらい・・・」
と、僕が素直に話すと、
「エイコさんが「わたし、大きなくまさんを恋人にしているの・・・パパみたいなひとを恋人にしているの」そう言ったら、大きなひとでいいな・・・そう友人が言ったとか?」
と、イズミは、女性になりきって、そう言葉に出す。
「女性にはいろいろな好みのひとがいます。もちろん、イケメンが好きなのは共通するけど・・・女性はお父さんが大好きなモノですからね」
と、イズミは、女性通なところを僕らに見せる。
「だって、3年続いたんでしょう?だから、その言葉は・・・エイコさんにとっては、褒め言葉で・・・プラスの意味だったと思います。そうじゃなければ、3年も・・・」
と、イズミは、言葉の解釈に対して、結論づける。
「うん。俺も、イズミの解釈の方に軍配を上げるな・・・だからさー、パパの言うこともわかるけど・・・そんなに自分を卑下する必要ないって」
と、ガオは、僕の肩を豪快に叩くと、
「それに、女と別れたってことは、新しい女との、また、新しい出会いが始まるってことじゃないか!そっちの方を楽しみにしようぜ!」
と、ガハハと笑いながら、豪快に缶ビールを飲む、ガオ。
「そうですよ。パパは、自分に自信持ってりゃ、いいんです!」
と、こちらも静かに缶ビールを飲む、イズミ。
「パパは、パパなんだから」
ガオもイズミも何かが一件落着したように、さわやかな顔になって、ビールを飲み始める。
僕もそんな雰囲気になっていたけれど・・・今日はその程度で辞めておこう。
いろいろなことがあって、疲れた、今日は。
「モンブランかー。いやあ、一生に一度でいいから、フランスって行ってみてーよなー」
僕はエイコの部屋でテレビを見ていた。
夜、二人でピザを取り、ブラックタワーというドイツワインを飲みながら、楽しい時間を過ごしていた。
「ふーん、たくさんのひとが自転車に乗っているけど・・・これは、何て言うレースなの?」
と、エイコはワイングラスを片手に不思議そうな表情でテレビ画面を見つめている。
「ツール・ド・フランスだよ。・・・俺も中学生の時に、「なるほど・ザ・ワールド」っていう番組で知ったんだけど、ヨーロピアン・スポーツのひとつなんだ」
と、僕が説明する。
「ヨーロピアン・スポーツ?・・・他には何があるの?」
と、エイコが聞いて来る。
「ツール・ド・フランスの他にも、F1だろー、アメリカズ・カップだろー、パリダカだろー・・・みんな、すっげー大人のかっちょいーレースなんだよー」
と、僕は話す。
「すっげー、あこがれ。いつか、本場で、この目で見てみたいよなあ・・・」
と、僕が話すと、
「鈴木さんって、すっごい物知りなんだねー」
と、エイコは目いっぱいの笑顔で、僕を見る。
「なーんか、今日の鈴木さん・・・すっごい好きー」
と、エイコは、僕に抱きついてくる。
「おいおい・・・ワインがこぼれちゃうだろ・・・」
と、僕はそのエイコの行動に目いっぱいのうれしさを感じている・・・。
「・・・夢オチかあ・・・」
僕は自分の布団で目を覚ますと・・・午前6時・・・まだ、起きるには、早い時間だ。
ガオもイズミも気持ちよさそうに、自分の布団で寝入っている。
僕は二人を起こさないように、静かに、ガサゴソと自分のバックの中をまさぐり・・・エイコの写真を取り出してみる。
少しはにかんだような笑顔。
彼女が夕飯を作りに僕の部屋へ来てくれた時に撮った写真・・・付き合いだして1ヶ月くらいの頃の写真だった。
ジーンズ姿の彼女は、すっぴんでリラックスしている。
「いい笑顔の写真・・・彼女は心からパパを好きだったんだね」
と、いつの間にか隣で目覚めたイズミが一緒になって、写真をのぞき込んでいる。
「ほんと・・・まだ、身体が、別れた事実に、なじんでいないや・・・」
冬の鎌倉の朝は、すっかり、冷え込んでいた・・・タケルの心はまだ、少し暖かだったけれど。
(つづく)
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