バンッ
河村亮は握っていた姉の腕を、思い切り振り払った。
そのあまりの勢いに静香は木に打ち付けられたが、そんなことなど構って居られないくらい、亮は苛立っていた。
先程目にしたあの諍い。
あの時声を掛けなければ、今にも殴り合いが始まりそうだった。
いくつになっても血の気の多い姉。
亮は声を荒げて彼女を責める。
「なんで毎度毎度イチャモンつけんだよテメーは!!大概にしろよ?あぁ?!」
「淳にも!アイツにも!もう関わんなよ!」
佐藤広隆からもらった美術の本はコーヒーの染みで汚れ、濡れてしまった。
ガミガミと小うるさい弟の説教も加わって、静香の気分は最低だ。
「つーか淳に目つけられんの怖くねーのか?!手ぇ引けよ!」
「知るかよ‥クソ野郎‥」
姉は弟の方を振り向こうとはせず、気持ちを持て余していた。
亮は静香に近づくと彼女の肩を掴み、無理矢理自分の方を向かせる。
「静香!おいっ!」
「姉ちゃん!頼むよっ!」
その叫びは怒りだけではない、どこか切羽詰まったような口調だった。
亮は静香の肩を揺さぶりながら、必死に説得を試みる。
「今からでも人間らしく生きようぜ!な?!姉ちゃんも!オレも!」
「‥真っ当な暮らしをしてみようぜ」
消え入りそうな声でそう呟く亮。
しかし目の前の姉はただ顔を顰めるばかりで、一向に弟の話を聞こうとしない。
「もうテメーだって潮時だろ!?なぁ!聞いてんのかよ?!」
「あー‥ムカツク」
身を捩ってこの場から逃れようとする静香。
亮は必死に言い聞かせようとした。
「オレの話わかんねぇか?!答えろよ!」「ちょっ‥」
しかしその言葉は静香には届かない。
亮は改めて顔を上げた。苛立ちのあまり、首元に青筋が浮かんでいる。
亮は強い力で姉の肩を掴むと、真っ直ぐにその目を見ながらこう口にした。
「静香。オレの願いなんだよ。オレは真っ当な暮らしがしたい。
そんな風に、生きたくなったんだよ」
言葉を紡ぐ内に、怒りはどこかへ消えて行った。
この胸の中にあるのはただ、純粋な願いが一つだけ。
「ちゃんとした人間になりてぇんだ」
「オレ‥」
それが彼の願いだった。
今まで逃げてばかりだった、彼の覚悟だ。
けれどその心の叫びは、静香の心には届かない。
バカバカしいと言わんばかりに、姉はただ顔を顰めているだけだ。
亮は再び顔を上げた。
逸る気持ちをぶつけるように、また大きな声で姉に詰め寄る。
「テメーはそうじゃねぇのかよ?!オレはそうしたいんだよ!!頼むよ!なぁ!」
真面目に、真っ当に、誰からも逃げることなく。
「なぁ!頼むから‥!!」
陽の下を堂々と歩きたい。
「なぁっ‥!!」
その魂の叫びが、秋の空に消えて行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<彼の願い>でした。
少し短めの記事で失礼しました。
亮さん‥こんなにも切羽詰まって‥。
でも全然静香に響いてないですよね‥。
「コイツまた何か言っとるわ」くらいにしか思ってないっぽいですよコレは↓‥
亮さんの気持ちが先走ってしまってる感じですね。静香は地方で働いていた時の社長のことも知らないわけですしね。
この姉弟は自分の主張ばかりをぶつけ合って、互いの気持ちを推し量ることが出来てないような気がしますね‥。
次回は<事件勃発>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
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河村亮は握っていた姉の腕を、思い切り振り払った。
そのあまりの勢いに静香は木に打ち付けられたが、そんなことなど構って居られないくらい、亮は苛立っていた。
先程目にしたあの諍い。
あの時声を掛けなければ、今にも殴り合いが始まりそうだった。
いくつになっても血の気の多い姉。
亮は声を荒げて彼女を責める。
「なんで毎度毎度イチャモンつけんだよテメーは!!大概にしろよ?あぁ?!」
「淳にも!アイツにも!もう関わんなよ!」
佐藤広隆からもらった美術の本はコーヒーの染みで汚れ、濡れてしまった。
ガミガミと小うるさい弟の説教も加わって、静香の気分は最低だ。
「つーか淳に目つけられんの怖くねーのか?!手ぇ引けよ!」
「知るかよ‥クソ野郎‥」
姉は弟の方を振り向こうとはせず、気持ちを持て余していた。
亮は静香に近づくと彼女の肩を掴み、無理矢理自分の方を向かせる。
「静香!おいっ!」
「姉ちゃん!頼むよっ!」
その叫びは怒りだけではない、どこか切羽詰まったような口調だった。
亮は静香の肩を揺さぶりながら、必死に説得を試みる。
「今からでも人間らしく生きようぜ!な?!姉ちゃんも!オレも!」
「‥真っ当な暮らしをしてみようぜ」
消え入りそうな声でそう呟く亮。
しかし目の前の姉はただ顔を顰めるばかりで、一向に弟の話を聞こうとしない。
「もうテメーだって潮時だろ!?なぁ!聞いてんのかよ?!」
「あー‥ムカツク」
身を捩ってこの場から逃れようとする静香。
亮は必死に言い聞かせようとした。
「オレの話わかんねぇか?!答えろよ!」「ちょっ‥」
しかしその言葉は静香には届かない。
亮は改めて顔を上げた。苛立ちのあまり、首元に青筋が浮かんでいる。
亮は強い力で姉の肩を掴むと、真っ直ぐにその目を見ながらこう口にした。
「静香。オレの願いなんだよ。オレは真っ当な暮らしがしたい。
そんな風に、生きたくなったんだよ」
言葉を紡ぐ内に、怒りはどこかへ消えて行った。
この胸の中にあるのはただ、純粋な願いが一つだけ。
「ちゃんとした人間になりてぇんだ」
「オレ‥」
それが彼の願いだった。
今まで逃げてばかりだった、彼の覚悟だ。
けれどその心の叫びは、静香の心には届かない。
バカバカしいと言わんばかりに、姉はただ顔を顰めているだけだ。
亮は再び顔を上げた。
逸る気持ちをぶつけるように、また大きな声で姉に詰め寄る。
「テメーはそうじゃねぇのかよ?!オレはそうしたいんだよ!!頼むよ!なぁ!」
真面目に、真っ当に、誰からも逃げることなく。
「なぁ!頼むから‥!!」
陽の下を堂々と歩きたい。
「なぁっ‥!!」
その魂の叫びが、秋の空に消えて行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<彼の願い>でした。
少し短めの記事で失礼しました。
亮さん‥こんなにも切羽詰まって‥。
でも全然静香に響いてないですよね‥。
「コイツまた何か言っとるわ」くらいにしか思ってないっぽいですよコレは↓‥
亮さんの気持ちが先走ってしまってる感じですね。静香は地方で働いていた時の社長のことも知らないわけですしね。
この姉弟は自分の主張ばかりをぶつけ合って、互いの気持ちを推し量ることが出来てないような気がしますね‥。
次回は<事件勃発>です。
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