Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

彼の願い

2015-12-05 01:00:00 | 雪3年4部(彼女の意図~彼の願い)
バンッ



河村亮は握っていた姉の腕を、思い切り振り払った。

そのあまりの勢いに静香は木に打ち付けられたが、そんなことなど構って居られないくらい、亮は苛立っていた。



先程目にしたあの諍い。

あの時声を掛けなければ、今にも殴り合いが始まりそうだった。




いくつになっても血の気の多い姉。

亮は声を荒げて彼女を責める。

「なんで毎度毎度イチャモンつけんだよテメーは!!大概にしろよ?あぁ?!」



「淳にも!アイツにも!もう関わんなよ!」



佐藤広隆からもらった美術の本はコーヒーの染みで汚れ、濡れてしまった。

ガミガミと小うるさい弟の説教も加わって、静香の気分は最低だ。

「つーか淳に目つけられんの怖くねーのか?!手ぇ引けよ!」

「知るかよ‥クソ野郎‥



姉は弟の方を振り向こうとはせず、気持ちを持て余していた。

亮は静香に近づくと彼女の肩を掴み、無理矢理自分の方を向かせる。

「静香!おいっ!」



「姉ちゃん!頼むよっ!」



その叫びは怒りだけではない、どこか切羽詰まったような口調だった。

亮は静香の肩を揺さぶりながら、必死に説得を試みる。

「今からでも人間らしく生きようぜ!な?!姉ちゃんも!オレも!」



「‥真っ当な暮らしをしてみようぜ」



消え入りそうな声でそう呟く亮。

しかし目の前の姉はただ顔を顰めるばかりで、一向に弟の話を聞こうとしない。

「もうテメーだって潮時だろ!?なぁ!聞いてんのかよ?!」

「あー‥ムカツク



身を捩ってこの場から逃れようとする静香。

亮は必死に言い聞かせようとした。

「オレの話わかんねぇか?!答えろよ!」「ちょっ‥



しかしその言葉は静香には届かない。

亮は改めて顔を上げた。苛立ちのあまり、首元に青筋が浮かんでいる。



亮は強い力で姉の肩を掴むと、真っ直ぐにその目を見ながらこう口にした。

「静香。オレの願いなんだよ。オレは真っ当な暮らしがしたい。

そんな風に、生きたくなったんだよ」




言葉を紡ぐ内に、怒りはどこかへ消えて行った。

この胸の中にあるのはただ、純粋な願いが一つだけ。

「ちゃんとした人間になりてぇんだ」




「オレ‥」




それが彼の願いだった。

今まで逃げてばかりだった、彼の覚悟だ。




けれどその心の叫びは、静香の心には届かない。

バカバカしいと言わんばかりに、姉はただ顔を顰めているだけだ。



亮は再び顔を上げた。

逸る気持ちをぶつけるように、また大きな声で姉に詰め寄る。

「テメーはそうじゃねぇのかよ?!オレはそうしたいんだよ!!頼むよ!なぁ!」



真面目に、真っ当に、誰からも逃げることなく。

「なぁ!頼むから‥!!」



陽の下を堂々と歩きたい。

「なぁっ‥!!」



その魂の叫びが、秋の空に消えて行く‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<彼の願い>でした。

少し短めの記事で失礼しました。

亮さん‥こんなにも切羽詰まって‥。

でも全然静香に響いてないですよね‥。

「コイツまた何か言っとるわ」くらいにしか思ってないっぽいですよコレは↓‥



亮さんの気持ちが先走ってしまってる感じですね。静香は地方で働いていた時の社長のことも知らないわけですしね。

この姉弟は自分の主張ばかりをぶつけ合って、互いの気持ちを推し量ることが出来てないような気がしますね‥。


次回は<事件勃発>です。


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