Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

刺した釘

2015-12-21 01:00:00 | 雪3年4部(事件勃発~監視役)
興味を持つであろう餌を撒けば、その先は分かり切っている。

案の定黒木典は、雪のその話に食い付いて来た。

「てか、学科長がどうしたって?」「え?」



「え?ううん、特には何も‥」

「どうして?何かあったの?昨日のことと何か関係あるんでしょ?」



雪が首を横に振っても、典は更に話を掘り下げに来る。

雪は「うーん‥」と言って言葉を濁した。



キョロキョロ



周りを見回す雪と、早く喋ってと先を促す典。

雪は典の耳元に口を寄せると、ヒソヒソ声でこう切り出した。

「それがね、実は‥」



「聡美がね、私の鞄の中をゴソゴソしてる人を見たって‥」「!!!」



雪の話を聞いた典は、驚きのあまり思わず声を出した。

「えっ?マジ?!」



シーッと人差し指を唇の前で立てる雪に気づくことなく、典は大声で続きを促す。

「誰なの?!誰なの?!」

「それは‥名前は口に出せないんだけど‥」



ヒソヒソと小さな声で続ける雪。

「でも持ち出してるところを見たわけじゃないから、確実じゃないのよ」

「あ‥そう。そう‥そうよね。そう思うわ」



そして雪は、先ほど典にした質問と今の話を絡めて話した。

「ただ‥相談してみようかなって思って。学科長は、話に良く耳を傾けてくれるし」

「へっ?」



目を見開く典の前で、雪は柔らかな笑みを浮かべながら言葉を続ける。

「今回のことは‥私一人で解決ってのはちょっとしんどいし、

皆を巻き込んでゴタゴタしちゃうのも嫌だしね」
「そ‥そう。そうよね‥」



典が何度目かの相槌を打った後、雪は申し訳無さそうにこう釘を刺した。

「あ‥このことはオフレコでお願いできる?騒ぎになるとちょっと‥。 それじゃあね」

「え?あっうん!」



しかしその釘は、固く刺してはいない。

うわマジで‥



いつでも逃げられる程度の、ゆるくゆるく刺した釘。

えー!大事件!ありえないんだけど!



案の定、黒木典は逃げ出した。

雪は背後で駆け出す典の気配を感じながら、その意図をなぞっている。

オフレコなわけ‥ない



確実に分かったことが一つあった。

少なくとも犯人はあの子じゃない



そう思う雪の後ろに、一人の人間が立っていたが、まだ雪は気づかない。

頭の中は、今やらなければならないことでいっぱいだからだ。

期末までグループ課題が二つ、個人の課題、勉強会、財務学会、

週末までにそれらに取り組める日が三日‥




やるべきことは山積しており、時間は限られている。

そしてー‥




過去問を盗んだ人間を、そのまま放置するわけにはいかない。




秋風が、雪の髪を舞い上げる。

前髪の間から覗いたその目元には、彼と同じ色が宿っているーーーー‥。







ガッ!



後ろから、突然強い力で腕を掴まれた。

振り返ると、そこには佐藤広隆が立っている。



佐藤は雪の目をじっと見ながら、ここに居る訳を聞いた。

「何してる?呼んだのに聞こえなかったか?」



雪は一瞬硬直したが、佐藤の顔を見てふっと力が抜ける。

「あ‥先輩」「ところでどうしてあっちから来たんだ?赤山の取ってる教養の授業、あの辺だったか?」

「あ‥xx館の方に用事があって‥。佐藤先輩はどうしてここに?」

 

何とも言えない気分でそう聞くと、佐藤は鞄をゴソゴソし始めた。

「あ‥これを‥」






佐藤は一冊の本を取り出し、それを雪に差し出した。

「静香さんの本。これ、赤山から返しておいて」



予想外の展開に、雪はあんぐりと口を開ける。

「佐藤先輩‥」「俺からって言うなよ」



オタオタする雪。佐藤は強い口調でこう続ける。

「どうせ俺が買った本なんだ。一度あげるも二度あげるも大差ないさ」

「でもコーヒーこぼしたのは私で‥」「いいから。とにかく受け取ってくれ」



一貫して譲らない佐藤の態度に、とうとう雪は折れ、本を受け取った。

「‥ありがとうございます」






佐藤はふぅと息を吐くと、頭に手を置きながら口を開く。

「大袈裟なことはしたくないけど、俺は、あの人が会計の勉強よりも‥」



佐藤は自身の脳裏に、以前目にした静香の表情を思い浮かべた。

自分が渡した美術の本を開いた時、彼女の素顔がそこに現れた気がしたのだ‥。







幾分恥ずかしそうに口を噤んだ後、佐藤は雪に別れを告げる。

「‥課題頑張れよ」

「はい。それじゃ‥」



その背中がゆっくりと遠ざかって行くのを、雪はその場に佇んだままずっと眺めていた。

佐藤から渡された、美術の本を抱えて。



まっすぐでどこか不器用なその姿が、いつかの自分に重なった。

では今ここに立っている自分は、一体誰と重なっているのだろう‥。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<刺した釘>でした。

雪ちゃん、遂に嘘を口にするようになりましたな‥。個人的には悪い嘘ではない‥と思いますが‥。

だれかさんの処世術にそっくり‥。大丈夫なんでしょうか‥この先‥

そして佐藤先輩のイケメン度がぐんぐん上がっています

なんて良い人なんだ‥(T T)


次回は<唇>です。


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