「へっ?!太一が?!」
聡美から太一と萌菜のくだりを聞いた雪は、思わず目を剥いた。
聡美は相変わらずゲッソリしている。
「そんなまさか‥」
「いや‥マジみたい‥。気になってる人からもらったって‥あのピアスを‥」
萌菜が耳につけていたあのピアスが、聡美の脳裏から離れない。
あれは自分の目論見では、今頃告白と共に自分に贈られていたはずだったのに‥。
溜息を吐いて俯く聡美に、雪は首を傾げながら口を開く。
「てか私どっちからも聞いてないよ?!」
「それは‥ほら‥どっちも雪の友達だから、まだ大っぴらに言わないでいるんでしょ‥。
出会ってまだいくらも経ってないわけだし‥」
「ほえ‥」
そのあまりにも意外なカップル(?)に、雪はあんぐりと開けた口が閉まらない。
聡美は青い顔をしながら、頭を抱えて悶絶している。
「あああ‥!一体どんなリアクションすれば良いのかサッパリだよ!」
「いやでも‥さすがに違う‥と思うけど‥あの二人だよ‥?」
雪はそう言ってフォローするが、聡美の耳には一向に入って行かないようだ。
「お祝いしなきゃ‥なのにね‥」
雪はというと、太一のことでこんなにも動揺している聡美を、
初めて目にした気がしていた。
なるほど‥頭ン中、そのことでいっぱいいっぱいなんだな‥
どこか微笑ましい気持ちになりながら、雪は聡美を優しく抱き留める。
「私、調べといてあげよっか」「ううん、ううんううん」
暗い表情のまま、首を横に振る聡美‥。
やがて雪と聡美は、肩を並べて教室へと戻って行った。
ずっと首を横に振っていた聡美も、どうやら雪の提案に乗ることにしたようだ。
「そ‥それじゃこっそり聞いてみてくれたら‥」
「うんうん」
そう言って席に就こうとした時だった。
「ん?」
マフラーが鞄の下敷きになって潰れている。
その光景を目にした時、まずそんな違和感を感じた。
胸を過る、ある種の予感。
けれど雪は確かな判断を下す前に、聡美にこう聞いてみる。
「聡美、私マフラーこんな風に置いたっけ?」「え?あ‥」
聡美はそう言って、雪の視線の先を追った。
鞄が置かれた椅子の下に、ボールペンが落ちている。
私のだ、と小さく呟きながら、
雪は鞄へと手を伸ばした。
バッと鞄の口を開けてみる。
聡美は何も言わず、雪の行動をじっと見ていた。
胸に過ぎった予感は、やがて確信へと変わった。
雪は鞄の中を見つめながら、ポツリとこう口にする。
「無い‥」「へっ?!何が無いの?!マジで?!」
「過去問‥」
鞄に入れておいたはずの、過去問が無くなっていた。
それを仕舞っていたファイルごとごっそりと。
雪は顔を上げ、教室内を見回してみた。
室内には、ザワザワと学生達の話す声が反響している。
まず視線の先に飛び込んで来たのは、柳達のグループだ。
佐藤をはじめとして、彼らと仲の良い学生が集まっている。
次に、健太とその仲間達。
誰もこちらを見る者は居ない。
そして最後に、直美と仲の良い女子達。
いつもの様にお喋りに興じている。
誰も雪の方を窺うような人間は居なかった。
けれど確かに居るのだ。この中に、過去問を盗んだ犯人が。
「はっ!」
思わず息を吐き捨てた。
予想外の事件の勃発。雪は頭を抱えて歯噛みする。
「雪‥どうする‥?」
そんな聡美の言葉に返事をする余裕も無く、雪はただただ俯いた。
彼女の意図の行き先が、ザワザワとした喧騒に溶けて行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<事件勃発>でした。
遂に盗難事件発生ですねーーなんて物騒な!
さてこの先、物語は推理モノへと変化して行きます‥(^^;)じっちゃんの名にかけて‥!
次回は<容疑者No.1>です。
☆ご注意☆
コメント欄は、><←これを使った顔文字は化けてしまうor文章が途中で切れてしまうので、
極力使われないようお願いします!
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聡美から太一と萌菜のくだりを聞いた雪は、思わず目を剥いた。
聡美は相変わらずゲッソリしている。
「そんなまさか‥」
「いや‥マジみたい‥。気になってる人からもらったって‥あのピアスを‥」
萌菜が耳につけていたあのピアスが、聡美の脳裏から離れない。
あれは自分の目論見では、今頃告白と共に自分に贈られていたはずだったのに‥。
溜息を吐いて俯く聡美に、雪は首を傾げながら口を開く。
「てか私どっちからも聞いてないよ?!」
「それは‥ほら‥どっちも雪の友達だから、まだ大っぴらに言わないでいるんでしょ‥。
出会ってまだいくらも経ってないわけだし‥」
「ほえ‥」
そのあまりにも意外なカップル(?)に、雪はあんぐりと開けた口が閉まらない。
聡美は青い顔をしながら、頭を抱えて悶絶している。
「あああ‥!一体どんなリアクションすれば良いのかサッパリだよ!」
「いやでも‥さすがに違う‥と思うけど‥あの二人だよ‥?」
雪はそう言ってフォローするが、聡美の耳には一向に入って行かないようだ。
「お祝いしなきゃ‥なのにね‥」
雪はというと、太一のことでこんなにも動揺している聡美を、
初めて目にした気がしていた。
なるほど‥頭ン中、そのことでいっぱいいっぱいなんだな‥
どこか微笑ましい気持ちになりながら、雪は聡美を優しく抱き留める。
「私、調べといてあげよっか」「ううん、ううんううん」
暗い表情のまま、首を横に振る聡美‥。
やがて雪と聡美は、肩を並べて教室へと戻って行った。
ずっと首を横に振っていた聡美も、どうやら雪の提案に乗ることにしたようだ。
「そ‥それじゃこっそり聞いてみてくれたら‥」
「うんうん」
そう言って席に就こうとした時だった。
「ん?」
マフラーが鞄の下敷きになって潰れている。
その光景を目にした時、まずそんな違和感を感じた。
胸を過る、ある種の予感。
けれど雪は確かな判断を下す前に、聡美にこう聞いてみる。
「聡美、私マフラーこんな風に置いたっけ?」「え?あ‥」
聡美はそう言って、雪の視線の先を追った。
鞄が置かれた椅子の下に、ボールペンが落ちている。
私のだ、と小さく呟きながら、
雪は鞄へと手を伸ばした。
バッと鞄の口を開けてみる。
聡美は何も言わず、雪の行動をじっと見ていた。
胸に過ぎった予感は、やがて確信へと変わった。
雪は鞄の中を見つめながら、ポツリとこう口にする。
「無い‥」「へっ?!何が無いの?!マジで?!」
「過去問‥」
鞄に入れておいたはずの、過去問が無くなっていた。
それを仕舞っていたファイルごとごっそりと。
雪は顔を上げ、教室内を見回してみた。
室内には、ザワザワと学生達の話す声が反響している。
まず視線の先に飛び込んで来たのは、柳達のグループだ。
佐藤をはじめとして、彼らと仲の良い学生が集まっている。
次に、健太とその仲間達。
誰もこちらを見る者は居ない。
そして最後に、直美と仲の良い女子達。
いつもの様にお喋りに興じている。
誰も雪の方を窺うような人間は居なかった。
けれど確かに居るのだ。この中に、過去問を盗んだ犯人が。
「はっ!」
思わず息を吐き捨てた。
予想外の事件の勃発。雪は頭を抱えて歯噛みする。
「雪‥どうする‥?」
そんな聡美の言葉に返事をする余裕も無く、雪はただただ俯いた。
彼女の意図の行き先が、ザワザワとした喧騒に溶けて行く‥。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<事件勃発>でした。
遂に盗難事件発生ですねーーなんて物騒な!
さてこの先、物語は推理モノへと変化して行きます‥(^^;)じっちゃんの名にかけて‥!
次回は<容疑者No.1>です。
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