Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

歪む軌道

2015-07-12 01:00:00 | 雪3年3部(握った手~幕間)


ランチの後、萌菜を送って行った雪は、再び大学の構内を教室へ向かって歩いていた。

萌菜とは夜にもう一度会う約束をし、それまでは再び授業に勤しむ予定である。



しかし何と言っても昨日ストレス性胃腸炎で入院していた身だ。未だ疲労は抜け切れていない。

山は山、水は水、という禅の言葉を呟きつつ、広大な宇宙のイメージを脳裏に思い浮かべて雪は歩く。



地球は自分、そして周りの惑星はさながら雪の日常生活の中に出てくる人々だろう。

惑星は軌道上を安全に周回し、その平和は今のところ保たれていた。



途中大あくびをしつつ、雪はこれからのことをぼんやりと頭の中で考える。

さっさと授業受けて家帰って寝よ‥。

先輩に連絡して、萌菜にも連絡して、聡美のことちょっと気に掛けて‥。

とりあえず授業から‥




するとそんな雪の耳に、突然大きな声が飛び込んで来た。

「だから俺がやったんじゃないって!」



それは柳楓の声だった。

雪が振り返ると、柳と健太が何やら言い争っている。間に佐藤の姿も見えた。

 

雪は目を丸くしつつ、暫しその口論に耳を澄ませる。

「点けてすぐ青い画面が出たんだよ!本当だって!健太先輩何とか言って下さいよ!

マジで先輩が使ってた時は壊れてなかったんすか?!」


「ったく!何回言わすんだよ!そうだったって言ってんじゃねーか!」



「お前が触った途端壊れたんじゃねーか。俺は見てたぞ!」

「あーもう!マジ勘弁してくれよ!!

俺はマウスさえ触ってないし、起ち上がりすらしなかったんだってば!!」




身に覚えのない罪に問われた柳は、涙目で首を横に振り続けていた。

彼は潔白なのだ。そして佐藤もそれに気づいている。



佐藤は柳ではなく、PCを壊した真犯人へ疑心の籠もった視線を投げかけた。

するとその視線を向けられた健太が、高い所から彼に向かって凄み出す。

「あ?何だその目は。お前、俺が壊したとでも言いてぇってのか?」

「だから早く返せってあれほど‥」



その佐藤の物言いに、健太は荒い声を上げる。

「この野郎!何だその言い方は!?それとウイルスとは何の関係もねーだろが!

PC壊したのは柳だぞ!変な言いがかりつけんなや!」


「だから俺じゃないですってば!人のせいにすんなよ!」「んだとぉ?!」



呆気にとられてそのやり取りを見ている雪。

間に挟まれた佐藤は、むっつりと黙りこんでいる。

「そんじゃ俺がウイルスに感染させて壊して、テメーにその罪なすりつけてるとでも?!」

「違うんすか?!どうりでやけに親切なはずだよな!」

「おま‥人がせっかく‥!助けてやろーとしたんだろーが!!」



ヒートアップする二人の口論。すると佐藤は顔に青筋を立てながらも、ポツリと一言こう言った。

「‥もういいです」



そして佐藤はプイと背中を向け、そのまま歩いて行こうとする。

「何だアイツ。どうした?」



佐藤が席を外したことで、健太への罪の追及はそれ以上されないこととなった。

柳は苛立つ感情を捨て切れない。



柳は佐藤へと走り寄った。

「おい!」



「おい、口座教えろよ。俺が弁償するから」 「いいって」



柳からの申し入れにも首を横に振る佐藤。

しかし柳は到底納得出来ず、佐藤の手からPCを取った。

「いや。このままじゃ俺の気が収まらん。払うわ」

 

柳はそう言うと、ギッと鋭い視線で健太を睨んだ。

佐藤は柳から顔を背けると、そのままその場を後にする。

「勝手にしてくれ」



すると険しい顔をした柳と、雪の目が合った。

思わず雪は身を固くする。



そして三人はそれぞれ背を向け合うと、別々の方向へと歩いて行った。

誰も互いの背中を振り返らない。



雪は何か不穏な空気を感じつつ、柳に同情し眉を寄せる。

柳先輩‥とばっちりじゃん‥








三人の姿が見えなくなってから、雪はそっとその場を後にした。

白いスニーカーで、沢山の葉が落ちた秋の道を歩く。



先ほどの揉め事は、柳先輩と健太先輩、そして佐藤先輩、その三人の問題である。

実際雪には何の関係もないはず‥。



しかし何度もそう思ってみても、不吉な予感が止まらない。

雪の頭の中で、地球(自分)の周りの惑星に隕石が突っ込んだイメージが回る。



一つが狂えば、その軌道上にある惑星全てに影響が出るはずだ。

しかし厄介なのは、それがいつなのか、一体どんな影響なのか、その時にならないと分からないということ‥。

授業‥授業行かなきゃ‥



雪はそんな不穏な空気を振り払うかのように、とりあえず目の前の自分がこなすべきことに神経を集中させた。

まずは自分がしっかりしなくてはいけない。

惑星の軌道が歪む波が、自分の所へ押し寄せてくるまでは‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<歪む軌道>でした。

潔白なのに、自分の気が済まないからとPCを弁償する柳の男気‥好きだ‥!

それに引き換え健太‥どんどん残念になっていきますね‥。


次回はすごく短い記事になりますので、明日更新することにします。

<幕間>です。

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