Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

笑顔の裏に

2015-07-20 01:00:00 | 雪3年3部(張子の虎~繋がり)
胸に不安の影が過る。

とんでもない災難の余波が、じわじわと近づいて来ているような‥。

不吉‥どうも不吉だわ‥



柳瀬健太と柳楓、そして佐藤広隆のトラブルがこんなにも近くで起こっている。

今までの経験上、巻き込まれずに済んだ試しが無い‥。

何かが水面下でジワジワ進行してるような‥そんな感じ‥

 

そこまで考えたところで、見覚えのある人影が目に入った。

彼は一人でベンチに腰掛けている。



思わぬ人物との邂逅に、目を丸くする雪。

「河村氏?」







野外に座る亮の周りには、北風の音や車の走行音が響いている。

けれどそのどの音も耳に入っていないかのように、彼は深い沈黙の中に居た。



虚ろな、それでいて恐ろしいほどの激情を宿しているような、危ない眼差し。

瞬きもせぬまま、亮は何かを見据えている。



まるで手負いの獣のような、張り詰めた空気を纏う彼。思わず雪は立ち止まった。

声を掛けることも出来ずに。






やがて立ち尽くす雪の存在に、亮は気づいた。

雪は多少気まずい気持ちになりながら、苦笑いを浮かべる。

「あ‥」



頭を掻きながら、亮の方へと踏み出す雪。

「河村氏‥ここで何してるんですか?」



すると亮は雪の方へ向き直り、笑みを湛えた。

「ダメージ!」



先ほどの雰囲気とガラリと違ったその姿に、雪は妙な違和感を覚えた。

今の彼は彼らしくあるようで、彼らしくない‥。




「‥‥‥」



胸の中に感じるそんなしこり。

けれど雪は感じた違和感をそのままぶつけるではなく、茶化すような口調で亮に話し掛けた。

「なにを悲愴ぶってんですか?」「あ?そう見えたか?」「何かあっ‥」「お前身体大丈夫なの?」

 

亮は雪が質問を繰り出す前に、逆に質問を返した。二人のいつもの言い合いが始まる。

「入院していくらも経たねぇうちから学校かよ!」「大丈夫ですよ。ただのストレスで‥」

「お前ってば頭はイイみてーだけどストレスには耐性ねーのな。ちっとは運動しろ!」

「元々胃炎持ちなんです



雪は諦めずもう一度質問しようとするも、

「それより河村氏は‥」

「あ、そーだ!オレさっきよぉ、志村教授に会いに行ったんだけどー‥」

 

また話出す前に逸らされてしまった。

亮は先刻志村教授から聞いた話を雪に教える。

「約一月後に、規模は小さいがピアノコンクールが開かれるんだ。出てみないか?

そんなに権威あるコンクールではないが、こういうのも経験してみたらどうだ?

色々悩みはあるかもしれんが、一旦切り替えてこっちに集中してみたらいい」




その教授の話を聞いた時、亮の心の襞が、微かに震えた。

告げに来た別れの言葉を、その振動は喉元で押し留める。



そして亮は頷いた。

その結論だけを、今雪に伝えている。

「えっ!コンクールに出るんですか?!」「ま、そんなとこ?」



その吉報に、雪は拍子抜けしながらこう思った。

なんだ‥かなり良いニュースじゃん



けれど先ほど確かに感じた、あの妙な感覚は捨て切れない。

じゃあさっきの違和感は何だったんだろう‥私の勘違い‥?



明らかに尋常でない様子だった。けれどそのことについて、亮は何も言わない‥。

未だ完全に胸の中の霧が晴れたわけではないが、とにかく吉報は吉報だ。

雪はニッコリと微笑んだ。

「良かったじゃん!」



まるで自分のことのように喜ぶ彼女。その笑顔を前にして、亮は感情を奥に隠した。

浮かべる笑顔のその裏に。



亮は雪と視線を合わせずに、こんなことを語り出した。

「ここ何日かすげーグチャグチャ考えてたんだ。オレらしくもなくな」



色素の薄い前髪が目にかかって、雪はその眼を見ることが出来ない。

亮が語るその言葉の意味も、見えないままだ。

「それでずっと、らしくねぇことばっか味わったんだろうな。だからこれからは、もう何も考えねぇ」

「??」

 

一向に話が見えない雪の前で、亮は溜息を吐くと、いつもの憎まれ口を叩いた。

「ま、今まで死にそうなお前見てたら、ウジウジ悩んでばっかだと身体壊すってこと学んだからな、オレ様は。

お前ってばもう、悩める国のプリンセスだな。言うならば悩み姫?」


「はぁ~?!違いますって!」



「とにかく、」と亮は口にし、雪に横顔を向けたままこう言った。

「考えんの終わりにしたら、確証が持てたんだよ」



秘められた感情の一片が、亮の口から漏れる。

雪はその匂いを嗅ぎ取り、質問する。

「‥何のですか?」



亮の眼は遠くを見つめていた。

まるで過去を辿るような、もう戻れない場所を眺めるような。

「オレがどうしてここに来たのか」



違和感は続いている。

亮の口からその断片が語られる程、違和感は強くなって行く。

「‥‥‥‥」



亮は雪の方へ向き直ると、さらりとビッグニュースを口にした。

「あ、それとオレ、お前んちの麺屋辞めっから」



「えっ?!」



あんぐりと口を開ける雪に、亮は涼しい顔で言葉を続ける。

「あー他のアルバイト探すまでは働くから、そこは心配すんな。社長にはオレから言っとくから」

「突然どうしちゃったんですか?!河村氏?!何か問題でもー‥」



アタフタと動揺する雪。その意図を聞こうとするも、やはり亮ははぐらかした。

「今はピアノに集中しなくちゃなんねーんだ。予選まで残り少ないからな」

「??」 「とにかく!」 



そう話を締めくくると、亮は最後にこう言った。

「今まで色々あんがとな」



色々なものを笑顔の裏に隠し、彼は雪に背を向ける。

「じゃーな!」

 

突然やって来た嵐のように、彼は雪の心を掻き乱して去って行った。

まだ何も合点のいっていない雪は、目を丸くして首を捻る。

「‥はぁ‥?」



まるで青天の霹靂。

突然の出来事に気を取られ、雪は亮が笑顔の裏に隠したものを見過ごしてしまった。


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<笑顔の裏に>でした。

亮さん‥いなくなってしまうんでしょうか‥ 切なすぎる‥(T T)

ピアノコンクールが何か大きな意味を持ちそうな、そんな予感がします。


次回は<健太の指摘>です。まだ出るか‥健太‥orz


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