Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

無数の目

2015-07-02 01:00:00 | 雪3年3部(握った手~幕間)


青田家、本宅。

リビングで息子の帰りを待ち侘びていた父に向かって、淳は挨拶を口にした。

「遅れてすみません。呼ばれましたか?」



その傷だらけの顔を見て、父は思わずあんぐりと口を開けた。

しかし淳はその反応は想定内とばかりに、無表情でそれに応える。

 

父は淳の方へ歩み寄ると、大きな声で息子を問い質した。

「お前‥これは一体どういうことだ?!その顔で出勤したのか?!」

 

「お前は一体何をやって‥!」

「知ってるくせに」



ポツリと一言口にした、淳の言葉。父は目を見開いた。

「何だと?」



そして淳は真っ直ぐ父と向き合い、こう言ったのだった。

「全部知ってるくせに、何を聞くっていうんです?」






いつもなら、謝罪の言葉がある筈だった。

けれど今息子は、自分には何の落ち度も無いと言わんばかりに堂々としている。

父は険しい表情で、息子にもう一度その意味を問うた。

「今何と言った?」

「何でも無理に押しつけてたら、いつかは爆発すると思いますけど。父さんにとっては驚きでしたか?

まるで関係無いような顔してる父さんに、俺はむしろ驚いてますけどね」


 

本心で父と相対する淳の瞳に光が灯る。

父は息子の言葉を聞いて、その意味を察した。

「まさか亮か‥?」






淳はその質問を前にして、軽く肩をすくめて見せた。

断定した答えを口にすることなく、飽々した口調でこう返す。

「気になるならそれも調べてみてはいかがですか」

「お前ー‥」



父は幾分動揺していた。

今まで自分の言いつけ通りに動いて来た息子が、急に制御不能に陥ってしまったのだ。

「どうしてこんなことになった?どうしてこんな風に反抗する?

家に呼んでも遅れるかどうかの返事もない、挙句こんなに遅くなって‥何を考えてるんだ?」




怒りを滲ませながら、父は息子を自分の方に呼んだ。

けれど淳は首を横に振る。

「こっちに座れ。ちょっと話をしよう」

「お断りします」



「父さんとこれ以上話をする必要がありますか?全部知ってるじゃないですか。

俺を監視する目はどこにでもあるんだから」


 

そして淳は仮面を被った。

柔らかな口調で彼は、監視者に向かって扉を閉ざす。

「俺が間違ったことをした時に、その都度仰って頂ければ良かったのに」



淳は口元に微笑みを湛えたまま背を向け、それ以上のやり取りを拒絶した。

「疲れたので今日はここに泊まって行きます」



そう言ったきり振り返りもせず、淳は自室へと歩いて行った。

まるで別人のようになってしまった息子。その背中を見つめる父は、驚きを隠せない‥。



張り巡らせた無数の目で、息子のことは把握しているつもりだった。

けれど今一つの不安が胸を覆う。

息子の本当の姿については、何も見えていなかったのではないかー‥。








彼はそこに佇みながら、寝台に横たわった彼女のことを見つめていた。

健やかな寝息が微かに聞こえる。







河村亮はそんな雪の横顔を見つめながら、先ほどの自分の姿を回想した。

「静香の鞄とか売っちゃダメか?

予備の金とかあるはずだろ‥」




仕舞っておいたはずの非常用の現金が見当たらなかった亮は、焦っていた。

ウロウロと歩き回りながら姉の声を待ったが、携帯は非情にも機械音を繰り返すのみだ。

ただ今電話に出ることが出来ません‥



「あー使えねえなぁもう!」



苛立ちながら携帯を耳から離す亮。すると、静香からメールが入って来た。

待ってな。お姉ちゃんはクソ素敵な場所に来てんのよん!

ここでヒットかまして倍返しだ!なんつって




意味不明な文面‥。思わず亮は白目である。

「あんのクソが‥話が通じねぇ‥」



あームカつく!くそったれ!あいつクスリでもやってんじゃねーか?!イミフすぎだろ!








結局何も解決策は見つからない。

亮は暗い気持ちになりながら、目の前の雪を見つめている。



小さく声を出しながら寝返りを打つ雪。

もし彼女に何かあったら‥。それを想像するだけで、胸はズキリと痛み出す。

鼓膜の裏に吉川社長の言葉が蘇った。

ぶっちゃけお前、金稼ぐアテもねぇんだろ?



まるで全て見透かしているかのようだった。亮は苛立ち、頭の中のその声に、心の中でこう答える。

「ああそうだよ!ねえよ!集めた金、全部はたいても足りねーよ!

ソッコー儲けられる仕事っつったら‥」




身体を使ったオシゴト‥。

亮は「ダメだ‥」と言いながら、そのモザイクを追い払う。

残された方法は‥



亮は、ギリッ、とキツく歯を噛んだ。

出来ることなら一番避けたかったその方法を、頭の中に思い浮かべながら‥。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

<無数の目>でした。

虚飾の笑顔を浮かべながらリビングを去る淳の姿が、



淳が高校三年の時、剥がれた壁を目にした後の場面の、父(裏目)の姿に重なります。



「受けた分だけ返す」淳の本領発揮でしょうか‥。


そして亮さん‥ピアノが弾けるホストとか‥結構儲かると思います‥よ‥?


お知らせ‥
*今週の本家は、作者さん胃炎でダウンの為休載だそうです~*


次回は<柳 in the trap>です。


人気ブログランキングに参加しました
人気ブログランキングへ

引き続きキャラ人気投票も行っています~!