Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

幻影

2014-07-25 01:00:00 | 雪3年3部(静香との邂逅~万華鏡の様に)
雪と亮は図書館にて、テキストを広げ勉強していた。

先ほど亮が高校卒業検定を受けると決心したので、鉄は熱い内に打てということで、二人は早速勉強を始めたのだった。



今日の雪は経営学科の一学生ではなく、先生役だった。

こうしてテキストを見ながら座っていると、心の片隅にいつも引っかかっている彼の、幻影が浮かんで来たりする。



例えば難問に頭を悩ませた時、決まって彼が助言をしてくれた。

答えに辿り着くまでの道筋を、分かりやすく説明してくれたりした。



解けた、と雪が顔を上げると、決まって彼は彼女を見て微笑んだ。

君が正解に辿り着くのは、最初から分かっていたよと言うかのような表情で。



そして彼はまた自分の勉強に取り掛かる。

再び彼女から頼られる時が来るのが、楽しみで仕方がないというような顔をして‥。







いつしか脳裏に浮かんでいた幻影は途切れ、先ほど青田淳が居た場所に、テキストを睨む河村亮の横顔があった。

雪は頭を抱えながら勉強する亮に、説明をしながら一人物思う。先輩からよく勉強を教えてもらったな、と。



尚も説明を続ける雪だったが、その内容が亮にはチンプンカンプンだった。

頭を抱える亮の前で雪は、この人は基本的なスキルも身についてないから気長に行こう‥と腹をくくる。



亮はシャープペンシルを歯噛みしながらも、必死で問題と向き合っていた。

彼のそのひたむきな姿を、雪は微笑ましそうに見つめている。



雪は彼の横顔を見つめながら、一人亮の進路について思いを巡らせていた。

ちょっと生意気な考えかもしれないけど、我ながら良いアイデアだ。

ピアノがうまくいかない時が来たとしても、高校の卒検に合格できたら、そこから自分の道を作ることが出来るもの




雪は今までお世話になって来た彼に、自分の力を最大限に活かして手助け出来る方法は何かと探していたのだ。

幸い雪の両親も理解を示しているし、卒検を取っていれば何にだって潰しが利く。

雪は自分の思いついた良案に自信を持ちながら、再び気持ちを引き締めて彼の勉強を見始めた。

「なぁなぁ、もう一回説明してくれ」

「だからこの中の説明が最も基礎なんです。闇雲に覚えずに、まず概念から理解して‥」



そして雪は一生懸命、亮に理解して貰えるよう易しい言葉で説明を続けた。

そんな彼女の横顔は、真剣そのものだった。



亮は雪の横顔を見つめながら、胸の中が熱くなるのを感じていた。

先ほど自覚した自分の思いに少し戸惑いながらも、亮は隣に彼女が居ることの喜びを知る。




暫し勉強を続けていた二人であったが、少し経ってから雪はおもむろに席を立った。

「それじゃ一旦問題解いてもらってていいですか?私そろそろバイトで‥」



雪の申し出に亮は頷くと、少し申し訳無さそうに彼女に問うた。

「オレお前の勉強の邪魔‥してねぇよな?」



そう言って首の後ろを掻く亮に、雪は「大丈夫ですよ」と言ってかぶりを振った。

以前家庭教師のバイトで教えていた内容だから時間も取られないですし、とも。

「私も、河村氏に沢山助けてもらいましたから」



夏休みの時、メシをおごれと散々追い回された記憶が浮かぶ。

苦学生の雪にはご飯を頻繁に奢ることは難しいが、勉強を教えるというこんな形なら、彼から受けた恩を返せると思ったのだ。

そして雪は周りを見回してから、少し声のトーンを落としてこう口にした。

「それに‥最近ちょっと気がかりなことが多くて‥。河村氏のような強い人についててもらえると心強いんですよ。

友達も授業があって、ずっと一緒って訳にはいかないですし‥」




雪はそう言いながらフフ‥と小さく笑った。対横山という場合を考えると、亮と居ることは雪にとってもプラスなのだ。

すると亮の顔色が変わった。脳裏にあのイタチのような小男が浮かぶ。

「んだと?あの時のあのヤローが、ずっと追っかけ回してんのか?」








そして二人は暫し、横山翔についての会話を重ねた。

そんな二人の様子を、小男は離れた席からコッソリと覗く。



横山翔だった。

彼の視線の先には、いつか見たような男の横顔がある。



あの男は確か夏休み、雪の通う塾に居た外国人講師だ、と横山は思い至った。

赤山と話をしていた路地裏にて、スーツを着たあの男に思い切りぶん殴られ、凄まれた‥。




「‥‥‥」



なぜあの男がここに居るのかは分からないが、横山はモヤモヤと嫌な感情が胸に広がって行くのを感じた。

なぜ自分の隣には赤山が居ないのかと、焦れる思いが幻影を生み出す。

「どうしたの? 何かあった?」



どんなに良いだろう。

自分の方を見て、彼女がそう聞いてくれたなら。

どんなに満足だろう。

自分の隣に居るのが、手に入れたくて堪らない赤山雪であったのなら。

「ん?」



しかしそんな幻影は、現実の前に冷たく冷めるだけだ。

実際に今隣に居るのは、別れたくて仕方の無いこの冴えない女なのだ‥。

「いや別に‥」



横山は冷めた目をしながら、目の前に居る直美を見てゲンナリとした。

再び彼女から顔を逸らすと、他の席を見ていたと言ってそっぽを向く。



直美は年上の彼女らしく、勉強に集中していない横山を諭そうとするが、横山はただウザそうにするだけだ。

直美はそんな横山に向かって、胸に積もった不満の一片を口にする。

「あんたがやけに図書館に来たがるからついて来たんじゃない。試験期間でもないのにどうして‥」



それに対して横山は、「試験期間じゃねーと図書館に来ちゃいけねーのか?」と、

まるで直美が悪者であるかのような口ぶりで言い返した。直美は不満を抱えて彼を睨む。



横山は直美から視線を逸らすと、再び窓際に座るあの男へと視線を戻した。

男は何かに取り組んでいるようで、赤山の方へは行かなそうな気配だ。



横山は男の方を睨みながら、胸の中が苛立ちに騒ぐのを感じていた。

瞳の奥に、嫉妬の炎がメラメラと燃える‥。




そして横山は立ち上がり、直美に対して適当な言い訳を口にすると、

一人赤山雪の元へと向かった。



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<幻影>でした。

今回はいきなり幻が現れるのでちょっとビックリしますね‥。

先輩なんてあまりにリアルで、最初幽霊化に拍車がかかった生霊かと思いましたヨ‥^^;



次回は<想定外の出来事>です。

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