Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

その答え

2014-07-22 01:00:00 | 雪3年3部(静香との邂逅~万華鏡の様に)
「志村教授のレッスン受けてらっしゃる所、たまにお見かけしたんですよ!

私達もあの教授に師事してるんです~」


「同じ弟子同士、仲良くしましょうよ~」



彼女達が持って来たお昼をつまみながら、亮は彼女達の言葉に適当に相槌を打った。

彼女らは自己紹介したり教授の話をしたりと、黙々と食べる亮の前でペラペラとお喋りを続ける。

「志村教授って超~厳しいでしょう?大学生になっても叩かれるなんて!笑っちゃいますよね」

「それにしても、志村教授の特別教習ってのはすごいですね!」



「以前から弟子だったんですって?すごい深い間柄ですね~!」

あのジジイ、オレをそんな風に言ってんのか‥



亮は相変わらず適当に返事をしながら、教授が他の人に自分のことをそう口にしていることを知る。

彼女達は亮に向かって、編入して来たのかそれとも復学かと、矢継ぎ早に質問を繰り出し続ける。

「今学期から突然お見かけしたんで気になってたんですよ!

交換留学生かなって話もあって。本当にピアノお上手ですよねー!」




暫し沈黙していた亮であったが、彼女のその言葉を聞いた途端、動きが止まった。

心の中の海が、苛立ちに騒ぎ始める。

ピアノが上手だと?からかってんのか? テメーらの方がよっぽど上手いじゃねーか。

オレは完全にぶっ壊れてるってのに‥お世辞もほどほどにしやがれ。知ってか知らずか知らねーが‥




志村教授が、亮の手のことまで話しているかどうかは分からない。

けれど亮は、挫折を知らなそうに見えるこの小娘達には、それを知られたくないと本気で思った。

彼女達は気楽そうに会話を続ける。

「河村さんは最近どんな曲練習してるんですか~?」「あたし練習曲変えよっかな~」

 

全てが順風満帆であろう彼女達の隣で、亮は心の海が荒れ行くのを感じていた。

オレは一体何をやってるんだと思いながら、亮の表情は段々と曇って行く。

「河村氏はどうするんですか?」



不意に、長髪の子が自分のことを「河村氏」と呼んだ。

好きな曲何かあります? と彼女は続けたが、亮はそれには答えず沈黙する。




脳裏に、鈴の鳴るような声が突然響いた。


「河村氏!」



瞼の裏に浮かんだのは、雪の姿だった。

数学は得意でした? あ、不得意でしたか? じゃあ国語は?



思い出すのは、つい先日店で話した、何気ない会話だった。

あ、それで本は準備しました? まだ考えられないですか?

もし決心ついたら、絶対話して下さいね




そう口にして微笑む彼女が、亮の瞼の裏に焼き付いている。自分を心配して、進むべき道を一つ余分に作ってくれた彼女が。

脳裏に浮かぶ何気ないそんな一コマが、亮の心を激しく揺さぶった。

「シューベルト‥」



亮は無意識のうちに、女学生からの質問の答えを口にしていた。

女学生は「あたしも好きです」と口にしていたが、それ以降の会話など、亮の耳には入って来なかった。



自分が守りたいものは、雪の笑顔なんだと先程亮は悟った。

そしてなぜ彼女の笑顔を守りたいのかー‥。

その答えが、亮の心に今ハッキリと浮かぶ。



そして亮は立ち上がった。何の脈絡も無く席を離れる彼に、

女学生達は驚いて声を上げる。

「えっ?どこ行くんですか?」「あの‥っ!」



女学生達の声など、もう耳に入らなかった。

心の中には、ただ一人の姿しかもう映らない。



亮は走った。彼女の元へと。

頭の中には、先程浮かんでは消えて行った数々の「Why」が掠めて行く。

どうして彼女が淳と笑い合っている所を見てあんなに胸が疼いたのか。自分はなぜ彼女の笑顔が守りたいのか。



その答えが、今胸いっぱいに広がって堪らなかった。

亮は駆けた。全速力で。

早く彼女に会いたい。ただそれだけの思いを、胸に抱えて。








その頃彼女は、授業を終えて図書館へと向かう所だった。

絆創膏が貼られた彼女の顔を見て、通りすがりの人達がヒソヒソ噂するのが聞こえる。雪は気まずそうに俯いていた。

「ダメージヘア!」



すると背後から、聞き覚えのある声が彼女の愛称を呼んだ。

振り返った雪が目にしたのは、膝に両手をつき、肩で息する河村亮の姿だった。



亮は汗を拭いながら、息を切らせて顔を上げた。

真剣な面持ちで彼女を見つめる。



雪は不思議そうな顔をしながら、「河村氏?」と呼び慣れた彼の名を口にした。

亮はまだ息を切らせながら、もう一度彼女の愛称を呼ぶ。

「ダメージ‥」



広いキャンパスの中で、二人は向き合った。

彼女の愛称を口にしたまま沈黙する亮を前に、雪が疑問符を浮かべる。



亮は何も言うことが出来なかった。

胸がいっぱいで、この感情を上手く言葉に紡げる自信など無い気がした。



真剣な表情で自分を見つめる亮を見て、雪は彼に質問する。

「何かあったんですか?」



冷静にそう問われると、亮は何を言うべきか分からず戸惑った。

えっと‥と言葉を濁しながら、一旦地面に視線を落とす。



そして先程脳裏に浮かんだ何気ない会話の一コマがふと過り、亮は口を開いた。

「一緒に勉強しても‥構わねぇかな」



「え?」と雪が聞き返すと、亮は取り繕うように言葉を続けた。

「その‥ほら高卒認定試験とか何とか言うアレ‥。

一緒に‥。オレ一人じゃ‥だから一緒に‥お前とオレと‥。オレはよくわかんねぇから‥」




亮は切れ切れに言葉を紡いだ。

”一緒に” ”オレとお前” と言葉の端々に、彼女への思いが込められる。

亮は黙ったままの彼女を前にして、視線を彷徨わせながら小さく言葉を続けた。

「勉強とかってよぉ‥したことねぇっていうか‥」



「だから‥」



そう言って亮は彼女の方へと視線を上げた。


目に入って来たのは、亮が見たくて見たくて堪らなかった彼女の笑顔だった。


「良いですよ!」




笑っている雪。

その笑顔は青い空を背負って、キラキラと輝いている。





その笑顔を見た時、亮は敬愛するシューベルトのピアノソナタを奏でた時のように、星が降るような気持ちが胸の中に広がった。

そしてようやく、胸の中でその答えが言葉になったのだ。


ずっと彼女の笑顔を傍で見ていたい。

彼女が笑顔で居られる、その未来を守りたい。


そしてそう思うのは、彼女が好きだからだとー‥。



「早く行きましょ!」



そう言って自分を手招きする雪の背中を見て、亮は切なそうに微笑んだ。

胸を弾ませるようでいて、どこかじれったい感情が胸の中いっぱいに広がって。



亮が高卒認定試験を受ける決心がついたことを、雪は喜んで言葉を続けた。

その足取りは、先程と違い軽かった。

「よく決心しましたね。

家にも勉強する時間をちょっと作ってもらいますよ。お給料はちょっと減っちゃうかもだけど‥」




「あ、ところで本は買いましたか?」



亮は胸の中に生まれた確かな思いに気を取られ、暫しその場に立ち尽くしていた。

そして自分を惹きつけてやまないその感情のままに、やがて彼女の方へと足を踏み出す。



かつては”亡霊”のように自分を導いていたその感情が、今ハッキリとした名を持って亮を動かしていた。

ようやく自覚したその感情を胸に抱えて、亮は彼女の後を歩いて行く‥。



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<その答え>でした。

亮さん、ようやく自覚した!の回でしたね~~!^^

この回の広告にも、

横山:「お前は片想いしろよ~? 俺は美少女とデートするからさ~」 



と、亮の思いが明記してあったという‥!(CitTさん訳頂戴致しました。毎度お世話になっております!)


ここからまた物語が動き出しそうですね~!

ということで、亮さんの思いの自覚を記念して(?)明日は亮さんムービーをアップします~。

通常記事はお休みさせて頂きます。

本家の連載速度にブログが迫りつつあるので、少し休憩ということで‥(といっても一日ですが

どうぞご理解の程よろしくお願い致します!




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