Trapped in me.

韓国漫画「Cheese in the trap」の解釈ブログです。
*ネタバレ含みます&二次使用と転載禁止*

疎ましいライオン

2014-07-01 01:00:00 | 雪3年3部(偽物への警告~疎いライオン)
蓮と恵は青田淳と別れた後、構内で恵の時間割を共に見ていた。

恵の試験も、あと専攻一つと教養二つの合わせて三つを残すのみだ。



手元のノートを二人して覗き込んでいる内に、蓮は自分の心が疼くのを感じた。

不意に恵の手をギュッと握る。

「まだイチャつかないの」「手だけ握るだけだってぇ~手だけ~」



諭すように真顔でそう口にする恵と、ニヤニヤしながら彼女の手を握る蓮。

そんな二人の元に、大声を上げながら彼等のお姉さんが近付いて来た。

「あんた達何やってんのぉーっ!ギャアアア!!」



本当なの?!と言いながら雪は二人に近付いた。

恵は蓮を突き飛ばし、「雪ねぇ!」と言って笑顔を浮かべる。



雪は「信じられない‥」と口にしながら驚愕の表情で二人を交互に見た。

そんな雪に蓮は「祝パンをよこせ」と手を差し出す。恵は姉弟のそんなやり取りを笑って見ている‥。



三人はその場でワイワイと会話を重ねた。

恵は「やっぱ蓮より雪ねぇの方が好き」と口にして、蓮がズッコケて皆が笑う。



そんな彼等が談笑するのを、遠くで見ている人物が居た。

清水香織である。



香織は信じられない思いでその場に立ち尽くしていた。

あの男の子が、赤山雪と楽しげに笑い合っている‥。



しかも間に入っているお団子頭の女の子と、あの男の子は顔を見合わせて嬉しそうに笑っていた。

なんだかただならぬ仲に見える。



すると、ふとあの男の子がこちらを向いた。香織からの視線に気がついたのだろう。

香織は顔をさっと青くし、ビクッとその場で身を強張らす。



しかしすぐに男の子は視線を逸らすと、また二人の方に向き直って笑顔を浮かべた。

向かい合う赤山雪も、楽しそうに笑っている‥。



香織は木に凭れながら、絶望と驚愕の混ざり合ったような表情でその場に立ち尽くしていた。

雪達三人がその後手を振り合って別れるのを、何も出来ずにその場で見送る。

 

なぜ、赤山雪があの男の子と笑い合っていたのか。

どうして、あの男の子はもう一人の女の子と手を握り合っていたのか。

なんでこちらを向いたあの男の子は、自分と目が合ったのに視線を逸らしたのか。

   

香織の脳内で、あの三人がヒソヒソとこちらを向いて内緒話をしている。

ちょっとあそこ見てよ 何見てんのあの子? ここに入りたいんじゃね?



クスクスと、香織をバカにしたように笑う彼等の笑い声が鼓膜の裏で反響する。

口角を歪めた彼女の口元が、香織の脳裏に焼けるように張り付いた。




胸の中に、どす黒い感情が燃えるのを香織は感じた。

不条理な事態を嘆くその叫びが、心の中で大きく響く。


欲しいもの全部、いつもアイツが邪魔するせいでこの手の中に入らない‥!




記憶の海が荒れ出し、波は海底に沈めておいた忌まわしい記憶を掬い上げる。

私は元々ああいうファッションが好きだったの!!



私を無視して‥!何様のつもりよ?!



一旦考え始めると、沈めてあった記憶は芋づる式に海面に顔を出す。

香織は爪を噛みながら、瞬きもせず記憶の海を見つめる。

私は発表も上手く出来たのよ?!ただ時間が無くて、一度だけ課題を買った‥

たったそれだけで、チャンスを奪って私自身を握り潰して‥!




私が青田先輩からあんなこと言われたのも、



この胸を潰すような惨めさも、



全部赤山が邪魔するせいよ‥!あらゆる手を使って私の努力を阻むせいよ‥!

私の何が間違ってるって言うの?!




一体私の何がそんなに間違ってるって言うのよ?!!



忌々しい記憶の断片が香織の精神を蝕み、今にも心の堤防は決壊しそうだった。

息を荒げる彼女の足元はフラつき、ふとカバンに付いた揺れる人形に目が留まる。



最初は可愛かったこのライオンが、どんどん疎ましくなって来る。

どこか赤山雪に似たこの人形など、もう香織には不要だった。

カバンにくくりつけてあった紐を外し、強い力でギュッと握った。





香織は暗い眼差しをしながら、赤山雪の居るであろう教室へと移動した。

もうテストは終了し、出入口には学生が溢れていた。その中で香織は、伊吹聡美と赤山雪の後ろ姿を探した。



見つけた。彼女らは他愛の無い世間話をしている。

香織は胸の中で荒れ狂う海の揺れに突き動かされる様に、勢い良く赤山雪の肩に自分のそれをぶつけた。



その拍子に、香織は握り締めていた人形を床に落とした。

肩を押さえた雪が顔を上げるのを見計らって、香織は彼女に声を掛けた。

「あ、ゴメン」



「見えなかったわ」



香織はそう言って人形を踏み潰した。

どこか雪に似た可愛いライオン人形は自分によって足蹴にされ、みるみる薄汚れて潰されていく。



雪が目を見開いてその光景を前にしているのを、香織は胸がすく思いで見つめていた。

思わず顔が綻び、今にも笑い出しそうになる。



そして香織は人形を踏んづけていた足をどかすと、今度はそれを思い切り蹴った。

人形は学生達の足にぶつかりながら、遠くへと転がって行く。

 

雪は一瞬何が起こったのか分からなかったが、気がつけば人形が転がって行った方向へ足を踏み出していた。

「ちょっ‥ちょっと待って‥!」



雪は人波を掻き分けて人形を探した。

聡美が雪を追いかけてその背中に追い付くと、彼女はライオン人形を握ってその場にしゃがみ込んでいた。

「うわっ?!」



雪が手にしているその人形は、見るも無残に黒く汚れてしまっていた。

何があったの、と慌てる聡美の隣で雪は、湧き上がる怒りを必死に押さえながら、静かにこう口にした。

「‥ううん‥何でもない‥」



「あんな子のために‥試験を台無しにする訳にはいかないから‥」



雪の声は掠れていた。怒りで震えているせいで。

そんな雪の後ろ姿を、香織はいい気味だと言わんばかりにニヤついて眺めている。




雪は昨夜一人感じていたはずだ。

静かである程、何だか全てがギリギリに感じられる と。



例えるならば、うず高く作られた砂の城。

少しでも衝撃が加われば壊れてしまうような。




そして今雪は、怒りに震えながらその先を思う。


それはギリギリである程、すぐに崩れてしまう と。



砂を重ねれば重ねるだけ、それが崩れる瞬間は早くやって来る。

雪は自らをギリギリのところで律しながら、明日の中間考査最終日にその戦いを持ち越した‥。


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<疎ましいライオン>でした。

ここの蓮が言っている「祝パン」とは‥何なんでしょう?!?!



ご飯をおごれという意味?それとも単純にそういうパンがあるんですか?(お祝い用とか贈答用に‥?)

お詳しい方、教えて下さると嬉しいです~!



そして雪×香織の戦いもいよいよクライマックス‥!

人形を蹴った後の香織のあの表情‥!なんて人を苛つかせる表情なんでしょう!



(よく見れば見る程イライラするので小さく貼ります 笑)


次回は<砂の城(1)ー主人公ー>です。



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