ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

結局は

2018-08-31 08:11:41 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「結局は」8月24日
 論点欄では、『「ゲーム依存」の対策は』というテーマで、3人の専門家の方がそれぞれの立場から持論を述べていらっしゃいました。東京アニメ・声優専門学校名誉教育顧問馬場章氏は、『「どう付き合ったらよいか」という知識や能力を身につける機会を日本も増やすべき』と述べ、相模女子大准教授七海陽氏は、『小学生までの段階でゲームとの付き合い方を親と一緒に学んでおくことが大事だ』とおっしゃっていました。
 要するに、「ゲームとの付き合い方」も他の教育課題と同じように、学校が担うべきだという主張です。予想された主張であり、何でもかんでも学校教育に持ち込んでくることの弊害をここで繰り返しても仕方がないので止めておきますが、今まで触れてこなかった点について触れておきたいと思います。
 それは、七海氏が述べている「親と一緒に」ということです。ゲーム依存とは、基本的に家庭の管轄下に於いて顕在化します。学校で授業中にゲームをやり続けるということは非常に考えにくいですから。これは、早め早起きやきちんとした食事を、という躾と同様、いくら学校で、科学的に、体感的に工夫をして指導しても、家庭がきちんとした対応をしない限り、身につかない種類のものなのです。
 家で夕食を作らず、小学校低学年の子供を連れて9時過ぎに居酒屋で焼き鳥やユッケを食べさせて夕食代わり、親が満足するまで飲んで深夜に帰宅し、朝は8時頃にベッドから出てくる、という家庭で、規則正しい生活習慣や健康な食生活など不可能なのです。親が子供の前でもたばこを我慢できないヘビースモーカーで大酒飲みというのでは、喫煙や飲酒の弊害をいくら教育しても、まだ幼い小学生の子供だけが、喫煙飲酒の罪を自覚するということは難しいでしょう。おなじように、「ゲーム依存」も、親が「ゲームをしていれば大人しいから楽だ」という発想では、どうにもなりません。
 だからこそ「親と~」という七海氏の主張になるのでしょうが、そこまで学校に期待されても困惑するだけです。学校は、保護者への啓発活動を行う機関ではありませんし、そうした機能も権限ももってはいません。保護者としての責任への自覚に乏しく、子供の教育に関心が薄い保護者を学校に呼び出すことは困難ですし、無理強いをすればトラブルが発生するだけです。だからといって、参加自由の講習会を開いても、そんな保護者は参加しません。プリントや資料を配付したところで、目を通すかも定かではありません。そしてそうした無理解非協力的な保護者が多い地域というのが現実に存在し、そうした地域では「ゲーム依存」の問題がより深刻な状況になってしまうのです。
 これは、親の経済力や教育への関心度が子供の学力に影響を及ぼすという、学力テストの分析と同様、厳粛な事実であり、学校の、教員の努力だけでどうにかなるというレベルの問題ではないのです。結局は保護者格差の壁を越えられないのです。
 仕方がありません。子供に対する「ゲーム依存」対策指導は、学校が担っていきましょう。でも、親への対策は、学校任せでなく、首長部局が智慧をひねって欲しいものです。学校を潰さないためにも。

 

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