ヒマローグ

毎日の新聞記事からわが国の教育にまつわる思いを綴る。

今は髪もなくなったけれど

2018-10-29 07:51:47 | 我が国の教育行政と学校の抱える問題

「女性性・男性性」10月24日
 近藤サト氏が、『白髪を出して自由を得た』という表題でコラムを書かれていました。『白髪を隠さずにテレビに出始めたら、新聞、雑誌、テレビ、インターネットと各方面から驚くほど取材依頼がきました』という近藤氏は、ある記者から『女性性は捨てたんですか?』と聞かれたそうです。
 この質問を契機に取材ラッシュの意味を考え直した近藤氏は、『白髪を染めることが、女らしさのようなものに暗に直結しているのだ』という仮定に思い至るのです。うーん考えさせられますね。女性は綺麗でいるべき→白髪よりも染めた髪が綺麗→だから女性は白髪を染めるべき→白髪を染めるのを止めた女性は綺麗でいることを放棄した→白髪のままテレビに出る近藤サトは女性性を捨てた→美人キャスターとして認知されていた近藤サトが女性性を捨てたのはなぜか、という謎を解き明かしたくて取材が殺到したという絵解きです。
 これは明らかな女性差別です。近藤氏はそこまで指摘してはいませんが、男性優位社会において、男性の鑑賞物として綺麗であることに価値がある存在として女性を位置付ける発想に基づく問いだからです。この事例を学校の授業で取り上げ、女性差別の問題を考えさせることも出来ると思います。そういう実践を試みる教員もいるかもしれません。でも、それだけでは不十分なのです。
 私もかつては白髪を染めていました。今では染める髪が乏しくなり、禿が目立ちにくい白髪のままでいます(小堺一機さんや所ジョージさんのように?)が、男性も白髪を染めるのです。私の場合は、外見上の理由でした。つまり、少しでも若く見られたい、という動機です。そういえば、私が教員時代に仕えた校長も白髪を染めていました。尋ねたことはありませんが、おそらく私と同様若く見せたいということだったように思います。
 女性が白髪を染めるのが女性性を保つためなのだとすれば、男性はなぜ白髪を染めるのでしょうか。まさか女性性を獲得するためではないでしょう。では、男性の白髪染めも男性性保持のためなのでしょうか。男性は髪が黒いと若く見える→若いことは力強いこと→力強いことは男性性の象徴というような図式になるのかもしれません。だとすれば、ここにも偏見や差別の発想が潜んでいます。高齢者差別であり、男性の価値は力強さにあるという偏見だからです。そこまで掘り下げていかなければ、本当の人権尊重教育にはなりません。
 さらにいえば、外観で人を判断するという問題にも結びつきます。顔にできた痣や先天的な縮毛などに悩む子供がいますし、外国人差別も肌の色等の外観の違いの基づくケースが少なくありません。デブやチビなどのからかいも広義の意味での外観による人権侵害なのですから。
 白髪染め騒動は、人権について考える格好の教材になると思います。

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