「本当?」7月8日
『「学校ウサギ」ピンチ』という見出しの記事が掲載されました。『ウサギの学校飼育をやめる-。今春、各地の学校でそんな動きが相次いだ。「命の大切さを教える」などとして長く続いてきた学校飼育だが、その風景は変わりつつある』ということで、その現状や背景を探る記事です。
私は以前から、学校飼育に対して否定的な考えをもっています。記事では、大手前大学教授中島由佳氏の『(学校飼育は)人間以外の種と世話を通して深く触れ合い、命を実感する得難い機会』という言葉を紹介されていましたが、本当にそうなのか疑問だからです。
予算や体制の問題、教員の多忙化の問題はここでは触れません。あくまでも教育的な効果に話を絞りたいと思います。まず、中島氏の指摘のような効果があるのであれば、なぜ、中高でも学校飼育が行われないか、ということです。高齢者がペットを飼うことで生活の質、満足感が高まるという報告があります。生き物との触れ合いの効果が小学生段階に限られるということはないはずです。学校という場で、多くの人的時間的コストを払いながらも、コストを上回る効果があるのであれば、中高においても飼育が積極的に行われるはずですが、そうはなっていないのです。
また、「触れ合い」といいますが、具体的にどのような触れ合いを想定しているのでしょうか。私が勤務した学校でも、飼育活動は行われていました。しかし、それは高学年の児童で構成される飼育委員会が担当し、他の子供が動物に触れる(触る)機会はほとんどありませんでした。全校児童350人程度の小学校の場合10数人の委員会所属児童を含め、実際に動物に触ったことのある子供は1割前後、というのが私の実感です。1割の子供にでも効果があればいいという考えなのか、見ているだけでも、校内に動物が飼われていると意識するだけでも何らかのプラスの効果があるという考えなのか、それは正しいのか、疑問なのです。
さらに、社会の変化という視点からも現状通りが良いという考え方には疑問があります。かつて、家でペットを飼っているという家庭は多くありませんでした(東京下町の実感)。経済上の問題などがあったのでえしょう。しかし現在では、犬や猫の飼育数は右肩上がりで、多くの家庭でペットが、それも家族同様に大切に飼われるようになってきています。
つまり、動物と触れ合う機会は増えているのです。それなのに昔と同じように、日本がそれほど豊かでなくペットのいない家庭の方が多かった時代と同じように、学校飼育を続けなければいけないのか、ということです。
学校飼育は、原則廃止とし、特色ある教育活動として取り組む学校だけに認めるという方向が望ましいと考えます。