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ほぼ週二 横浜の山の中通信

人と異なる視点から見る

また中国の新規ビジネス? 今度は出前サービス

2017年11月28日 | 国際・政治(中国)

週刊東洋経済の1118日号に、中国の「美団点評」という会社が急成長しているという記事が載っています。そして既存の有名な会社が、続々とこの「美団点評」に多額の出資をしていると書いています。この会社の主要事業は

・出前サービス

・共同購入サイトの運営

・レストランの評価

 

下二つの事業「共同購入サイトの運営」と「レストランの評価」(どっかで聞いたような?)にはそれほどの人手はかからないが、「出前サービス」の配達部分は人手がかかりそう。同業に「餓了麼」というのがいる。

 

京都には仕出し屋というのがあって、宴会に食事を届けてくれる。また日本の職場にも料理店のメニューが置いてあって、欲しいものを注文するシステムはどこにでもある。

 

朝日新聞社は宅配サイト「出前館」と業務提携して、全国2000店以上の新聞販売店の宅配網を活用し、食事や弁当を配達する食事宅配の実証実験を20173月から始めるという記事もあった。

 

インドには、奥さんが作った昼飯を遠く離れた職場の旦那さんに届けるサービスがあるというのをTVで見たことがある。

 

「美団点評」の記事には写真が1枚付いていて、昔のそば屋のように自転車の荷台に四角い箱を載せている。

 

前記の記事には、「出前サービス」の詳しいシステムが載っていなかったので、勝手に推測すると

スマホで食べたい食事を選んで注文する。

「スマホ決済」で料金を払う

近くの店から出前が食事を運んでくる

この出前はスマホで募集して応募した人が運ぶ

これまでの中国の新規ビジネスから私が推測するとこんなものでしょうか。

 

上記のように、日本でも食事の出前のサービスはあるので、この中国のシステムのウリは何かと想像すると、

・「スマホ決済」

・食事を作る店と食事を運ぶ「配達人」は別で、食事を作る店からの配達の注文を「配達人」がスマホで受注し配達する

が私の想像です。 

 

「配達人」は事前に登録しておいて、ヒマな時に応募するのでしょう。「配達人」が余剰にいる時は良いけど、不足している時はどうするのかな? 

 

中国の新規ビジネスは、以前に取り上げた「シェア自転車」もそうだし、今回の「出前サービス」も人手に頼る事業。インドとか、有り余る人口のある国を除けば、そのままでは他国に転用できるビジネスモデルでは無い。

 

「シェア自転車」に関してはこちらのブログ参照。

 

この記事をブログに上げようとしていたら、1127日の朝のNHKニュースで、Uber日本の一般人を使った食事の配達システムが広まっているという話をしていた。なんだ、Uberを参考にしたんだ! 中国の新規ビジネスは、米国のビジネスモデルをいかに早く換骨奪胎して中国に持ち込むかにかかっているんだ。あほくさ!

 

これでアメリカを追い越すなんて、中国の夢のまた夢あるよ。

 

2017.11.28




中国の「新四大発明」と中国式新規ビジネス

2017年11月06日 | 国際・政治(中国)

新四大発明とは?

 

2017年10月12日の日経新聞に中国の「新四大発明」という記事が載っていました。中国の「四大発明」は、「火薬・羅針盤・紙・印刷」ですが、「新四大発明」は「高速鉄道・モバイル決済・シェア自転車・インターネット通販」だそうです。

 

旧「四大発明」の火薬・羅針盤・紙・印刷は確かに中国で発明されたと教科書で習った。しかし「新四大発明」の「高速鉄道・モバイル決済・シェア自転車・インターネット通販」が中国の発明と言えるかどうか、かなりあやしい。高速鉄道とインターネット通販は、明らかに中国で「発明」されたものではない。

 

「シェア自転車」の「乗り捨て自由」と「料金の決済方法」に新規性があるし、「モバイル決済」にも新規性があるが、日本の発明の定義からすると、これくらいで発明とは言えないし、ましてや大発明とは言えない。

 

(発明とは)

日本の特許法では、「「発明」とは自然法則を利用した技術的思想の創作のうち高度のもの」と定義されている。「大発明」の定義は無いが、さらにレベルが上がるはず。

 

この「新四大発明」はどうして選ばれたかというと、北京の大学(大学名は書いてない)の調査結果で、「一帯一路」の沿線各国からの(あまり世界を知らない?)留学生が選出したもの。調査対象が偏っているので、あまり突っ込みを入れても仕方がないかもしれない。

 

中国の新規ビジネス

 

ところで、中国で新規のビジネスが沢山出て来る理由として、「とりあえず、やってみよう」「まずいところがあれば、直せば良いや」という精神でやっているというのが、時々記事に出ています。「まずいところがあれば」ということを深読みすれば、この記事を書いた人は中国の新規ビジネスをあやしいと思っている。「直せば良いや」ということは、中国の新規ビジネスの現在の形が変わる可能性があると思っている。私が考えても「新四大発明」の中の「モバイル決済・シェア自転車」は現在の形が最終形では無いと思う。そうはいっても、現在慣れ親しんでいる便利なシステムを不便に変えるのは現実問題として大変難しい。共産党独裁の政府なら変えられるかもしれないが、一般大衆が付いて来てくれるかどうか?

 

シェア自転車

 

中国の「シェア自転車」は、「乗り捨て自由」で、乗り終わったらどこに放置してもOKなので、それを回収し再配置するために、上海では数千人がその仕事をしている。しかし、Forbes誌によると、当局は「乗り捨て自由」を禁止して、指定した駐輪場所に返却するよう指示を出している。中国のシェア自転車の一番の特徴が、この「乗り捨て自由」だったので、それが禁止されれば、「発明」のレベルが下がる。それにもまして、シェア自転車の利用者がこんな不便を受け入れてくれるかどうか? 

 

中国のシェア自転車に関する私のブログは下記。

中国では「まさか」が起きる~シェア自転車を再び検証する~

中国のシェア自転車には裏があった

 

モバイル決済

 

支付宝(アリペイ)や薇信支付(ウィーチャットペイ)などのスマホ決済は、中国で多くの人に利用されている。これらのスマホ決済は、金の流れを購入者本位に変えた点やQRコードを用いるのは新規性があるが、システム自体はお手本があるので発明とは言えない。

 

もしスマホ決済の安全性に問題が出ると当局の考え方が変わり、新たな規制が作られる可能性もある。そうなると使い勝手が悪くなる。しかし、一度便利を手にしたユーザーは、不便を強いられる規制に従ってくれるかどうか?

 

中国で「モバイル決済」が急速に普及した理由として、

①中国は偽札が多い

の他に

②中国の紙幣が汚くて触りたくない

を挙げている人がいました。

中国は広いし、いろいろな事情の人がいるので、①や②が主な理由かどうかわからないし、他に理由があるかもしれない。しかし、①や②は「中国ならありえる」と納得する理由ではある。

 

「中国人白タク」また「中国式白タク」

 

「中国式白タク」は、「新四大発明」に入っていませんが、中国の商売のやり方の参考になるので取り上げます。この「中国式白タク」について、新聞やTVで近頃多く報道されています。一番詳しいのが9月27日付の私の大好きな産経新聞(電子版)で、ここから引用します。この「中国式白タク」は、関空や成田、羽田、銀座によく出没するそうです。確かに、中国の個人旅行者には便利です。中国では白タクが合法化されたらしいのですが、日本では白タクは違法です。

 

今までの「白タク」との違いは中国のスマホアプリ、「皇包車」とか「Ding Taxi」を使うこと。これらのアプリを利用して、日本在住の中国人と連絡し、「白タク」の運転者を予約する。そして日本に来たら予約した車が来て目的地へ運んでいってくれる。料金は「スマホ払い」などで、ほとんどの人が中国で済ませる。目的地についても、現地での現金の受け渡しが無いので「白タク」としての摘発は難しい。このアプリが実質的に白タクを助長するのは、アプリ開発時に分かっているはずなので確信犯です。日本では違法であっても「中国式白タク」もこのまま突っ走るのでしょう。しかし、中国本国においても「中国式白タク」の問題が出て来るはずなので、このまま突っ走るとも思えない。

 

まとめ

 

「新四大発明」は誇大広告です。しかし、中国のベンチャービジネスは「とりあえず、やってみよう」の精神で、勢いがあるのは分かる。ところが便利と安全は表裏一体。安全性に問題があるので、「まずいところがあるので、直せば良いや」はよっぽどの強権じゃないと無理。中国国民だけでなくても、誰しも一度手にした便利はなかなか手放せない。その時はどうするのかな?

 

「新四大発明」の「モバイル決済」と「シェア自転車」、そして「中国式白タク」は、世界の中でも先進的で、日本は遅れていると言っているTV出演者もいるが、本当にそうなのかな? 私は疑っています。

 

2017.11.6

 

 


中国のシェア自転車には裏があった

2017年10月02日 | 国際・政治(中国)

本題の前に、一言。5年くらい使っているブログの題名に飽きたので、糸井重里氏をパクって10月1日に題名を変更しました。

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それに日本政治にも一言。前原民進党代表は、民進党を分裂させた代表ということで歴史に名を残しますね。

 

さらに一言。今日2日の夕方にノーベル医学・生理学賞の発表があります。日本人の受賞を期待しています。

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今回の本当のテーマは2017923日のブログ「中国では「まさか」が起きる~シェア自転車を再び検証する~」の続きです。

 

上記ブログでは、インターネット上の十数件の記事を参考にして、中国のシェア自転車の状況をできるだけ詳しく紹介しました。当然ながらそれでも十分ではなく、中国のシェア自転車のビジネスモデルに疑問が多く残っています。

 

と思っていたら、中国のシェア自転車への関心が高くなっているためか、最近いろいろな記事が出ています。下記の「現代ビジネス」の記事は面白かった。

 

「現代ビジネス」2017.09.30

中国で生まれた新たな職業「シェアサイクルの回収人」その実態

メンテナンス兄貴の肉体労働物語

http://gendai.ismedia.jp/articles/-/53015

 (削除されていたらご容赦)

 

要旨は、中国紙に載った記事を紹介し、それにコメントを付けています。この中国紙の記事の内容は、シェア自転車の大手の一つ「ofo オッフォ」で、自転車を移動し再配置させる仕事人に密着して、その仕事ぶりを取材したもの。

 

ofo オッフォ」では、客がそこいらに自由に乗り捨てた自転車を回収して再配置させるのは人海戦術で、上海では数千人がその作業をしているという。ひぇ~! 中国以外では成り立たないビジネスモデルだよ。

 

やはり、便利なシステムには裏があるというか、サポートシステムが存在するということ。有名な(古い)話では、水道は蛇口をひねるだけで水が出る便利なものだけど、ダムや浄水場、配水管などの巨大なシステムが存在することは、その気にならないとわからない。

 

このシェア自転車を再配置する仕事に着く人は、「ofo オッフォ」だけではなく、「Mobikeモバイク」にもいるはずなので、そうすると上海では1万人近い人がこの仕事に着いていることになる。あらためてビックリ!


ある中国のサイト(日本語版)に、「なぜ日本では、シェア自転車の期待が盛り上がらないか?」というような主旨で記事が出ていた。この記事を書いた人は、(中国人の記者であるにもかかわらず)再配置人が上海だけで1万人弱も必要と知らなかったようです。

  

この「ofo オッフォ」が欧州の4か国に進出するという記事が先月に出ていたが、シェア自転車の再配置人も連れて行くのかな?

 

(おまけ)

ここからは、この記事で新しくわかったシェア自転車の状況についてです。

 

①自転車を回収する車(トラックというにはおこがましい)はすごい!

自転車を回収する車は、前のブログでは「耕運機に荷台を付けたような」と書いたが、この記事の写真を見ると、「ofo オッフォ」の場合はミゼット(知っているかなあ? ダイハツが1960年代に盛んに作っていた、現在の「軽」より小さい三輪トラック)の屋根を取っ払ったような車。あるいは、スクーターに荷台を付けたような車というべきかも。こんな安定の悪そうなトラックの荷台に山のように自転車を積んでいる。

 

②「ofo オッフォ」の自転車はGPSが付いていない

もう一つの大手「Mobikeモバイク」はGPSが付いているのに、「ofo オッフォ」の自転車はGPSが付いていない。「ofo オッフォ」は、「Mobikeモバイク」よりも低価格路線を狙っているようです。ただし、GPSが付いていても、客や再配置人がシェア自転車を捜すのに中国製GPSの精度で役に立つのかどうか? 

 

③「ofo オッフォ」も「Mobikeモバイク」も自転車に「前かご」付き

この記事に載っている写真を見ると、「前かご」が付いています。他のサイトで見た写真は、「前かご」が無かったので、地域あるいは時期、車種によって自転車の仕様が若干違うかもしれません。まあ「前かご」が付いているほうが便利なので、最新のモデルから付けたのでしょう。

 

前のブログに載せた「ofo オッフォ」、「Mobikeモバイク」の自転車の仕様の表を修正して下に載せます。

 

 2017.10.02

日本のシェア自転車はこちら


 

 


中国の「スマホ決済」のリスク

2017年09月26日 | 国際・政治(中国)

本論の前に、日本のICカードについて。

わたしゃ、根っからの疑い深い性質なので、「パスモ」や「スイカ」などのICカードを不正利用している人がいるのでは?と疑っています。ICカードに課金する場合は、駅の発券機などを利用しますが、賢い人は自分でICカードに課金する方法を見つけ、密かに課金してICカードを不正利用しているかもしれない。そうであっても、それが表面化することは無い?

(これらICカードに使用されているFelicaのシステムの安全性の詳細はわからないが、突破できないシステムは無い)

 

本論に戻ります。

今回は日本より数歩進んでいると言われている中国の電子決済、特にスマホを用いた「スマホ決済」についてです。「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」などの「スマホ決済」のリスクを中国人はどう考えているのか?

 

2017923日の私のブログ「中国では「まさか」が起きる~シェア自転車を再び検証する~」で、シェア自転車の使用料の支払いに「スマホ決済」が使われていることを書きました。

 

中国では、「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」のスマホ決済が高齢者まで広がっていると新聞・雑誌・放送が伝えています。中国では何故スマホ決済が進んだのか? ある人が書いていましたが、中国では偽札が多いので、現金払いよりスマホ決済の方がリスクは小さいと中国人は思っているらしい。あるいは、「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」に前払いしている金に、銀行より利率が良い年23%の利子が付くとか。

 

しかし通常時はそれで良いけど、「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」を経営している会社が倒産しても銀行預金のように(中国でも)保護の対象にはならない。非常時に使えないかもしれないリスク、またはシステムが破綻するリスクを中国人はどう考えているのか、あるいは考えていないのか、よくわからない。

 

もしかしたら、あまりに多くの人が利用しているので、「スマホ決済」の会社が倒産しても、中国政府が救済するはずとたかをくくっているのかもしれない。かって中国人は自分たちの政府を信用していないという話があったが、現在では日本人以上に自分たちの政府を信用しているようです。共産党政府はいつの間にこんなに信用されるようになったのでしょうか? 共産党政府がこれからもず~っと続くと思っているとしか思えない。

 

日本人は自国の政府を中国人より信用しているかというとそうでも無い。高齢者は、終戦直後のハイパーインフレや新円切り替えなどの混乱を経験しているので、政府を信用していない人が多いと思う。

 

「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」は前払い制ですが、一部では340万円を前払いしている人もいるとか。これはレアな場合としても、数万円は預けていそうですが、この程度なら万が一倒産しても「しゃあない」とあきらめる?

 

雑誌などで、スマホ決済について書いている日本人がいますが、意見は二つに分かれています。一つは、世界から有用な技術を導入し、規制が無いうちにその技術を用いたビジネスモデルを作り上げる中国の先進的な取り組みを賛美しているもの。もう一つは、世界で最も先端のビジネスモデルは認めるにしても、リスクを考慮せず、無邪気に利用している様子を胡散臭く眺めている人。私は後者です。便利だけど、その安全性は必ずしも高くないようです。

 

「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」について、その安全性、仮名登録の実態、前払い金の保護が不十分、海外での使用に関わる安全性、そして今後に予想される規制当局の方針変更など、広範囲に使用されている割にわからないことが多い。

 

中国では「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」の不正使用が時々報道されているし、中国当局は「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」の海外での使用を推奨していないなどと報道されていますが、こんなあやふやなことで良いのかな? スマホ決済に関して、日本人が胡散臭いと感じても仕方がない。

 

ここまでが本論の話で、以下はおまけです。

 

インターネットを検索していたら、日本で「スマホ決済」が普及しない理由について書いている在日日本在住(と思われる)中国人がいました。一部を引用します。

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日本新華僑報網の蒋豊(ジアン・フォン)編集長という人は、日本でスマホ決済が普及しない原因として

①日本の消費産業モデルが長きにわたり閉鎖的かつ単調だったために、もはやスピーディーに高い収益をあげるインターネットの時代についていけない

②社会の閉塞性と経済の停滞により、日本人の新しい物を受け入れる力が低下し続けている

③高齢化社会の深刻化に伴うイノベーション活力の欠如

④日本政府による関連産業インフラ作りやサービスへの力の入れ具合が明らかに不足している

を挙げている。そしてまとめとして、「中国人の『スマホ遊び』に対する日本人の感慨には、多くの悲しさとやるせなさが含まれているのかもしれない」と書いている。

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だとさ。

 

中国人の「スマホ遊び」(だいたい「スマホ遊び」って何だ?)を見て、日本人は「多くの悲しさとやるせなさ」を感じます? 日本人はこんな繊細な感覚持っていると、中国人は考えているのかなあ? それより普通の中国人なら、こんなに将来性の無い日本に見切りをつけて、サッサとアメリカやカナダ、オーストラリアに移住すると思うけど、それでも日本に留まっているこの中国人に「多くの悲しさとやるせなさ」を感じるよ。

 

中国人が日本のことを書く場合、根拠を示さず見下したような感覚的な意見を最後にちょこっと付け加えることが多いですね。これはイタチの最後っ屁のように、弱い立場の人がやる行為ですけどね。

 

2017.10.26 2017.09.26




中国では「まさか」が起きる~シェア自転車を再び検証する~

2017年09月23日 | 国際・政治(中国)

2017年8月21日のブログ「中国で流行りのシェア自転車の疑問」の続きです。このブログでは、シェアした自転車を返却する時の「乗り捨て自由」とは、まさか街中どこでも自転車を乗り捨てられることでは無いだろうと書きましたが、中国のシェア自転車はその「まさか」のようです。街中どこにでも「乗り捨て自由」なんて、中国以外では許されないビジネスモデルです。

 

最近は、中国のシェア自転車が日本にも進出してきたので、メディアでも取り上げられることが多くなり、徐々に実態がわかってきました。フジテレビでは、中国の都市の道の端に大量の自転車がずらっと並んでいて、一部は投棄されている様子を紹介していた。そして兄ちゃんがトラック(トラックというよりは耕運機に荷台を付けたような車)の荷台いっぱいに自転車を乗せて、自転車を移動させていた。

 

それで改めてインターネットで捜した多くの記事の中から妥当そうな事柄を抽出し、中国のシェア自転車の実態をより明らかにしようと思います。下記点線内は、そのまとめです。

 

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(中国におけるシェア自転車の状況)

・中国全土で1600万台の自転車を1億6000万人が利用している。

これだと、10人で1台の自転車をシェアしている勘定になるけど、シェアする人が10人は多いと思う。適正は4~5人では? もしかしたら、シェア自転車を実際に利用している人はもっと少ない?

 

(中国でシェア自転車が伸びた理由)

・目的地が駅から1~3㌔と遠い場合が多いが、他に交通手段が無い

・自転車の盗難が多いので、自分で自転車を保有するのは神経を使う

・自転車天国だった頃のインフラ(自転車専用レーン、歩道に白線で区切られた駐輪スペースが多数あるなど)が残っている

・シェア自転車の使い勝手が良い(乗り捨ててある自転車が近くにある、あるいはGPSで自転車を直ぐに捜せる、乗り捨て自由、使用料の決済が簡単、使用料金が安い)

・平地が多いので自転車が使い易い(これは私の推測)

・交通政策として、政府が支援

・民間が多くの投資をしている。例えば

Ofo・・・アリババ主導で7億ドル調達

Mobike・・・テンセントから今年だけで8億ドル以上。鴻海精密工業も出資

 

(シェア自転車の事前準備)

①スマホで登録する

携帯電話番号、全国統一の身分証、実名登録、銀行口座に結び付いた(アリペイなどの)決済口座が必要。

 

「アリペイ」や「ウィーチャットペイ」は仮名登録が可能らしいので、シェア自転車の会社によって上記の条件通り登録しているのか不明。上記の条件通り登録すると、仮名が実名と結びつくことになる。上記登録が実際にどのようにされているのかは詳細不明。わかったら、別の機会に紹介します。

 

中国政府は実名登録を推し進めていて、シェア自転車を正しく利用しているかなどの信用情報を他の信用情報と統一して管理することを目指しているが、現在はそこまで至っていない。

 

②数千円の保証金を預ける

 

(借りる一般的手順)

①利用者が自転車を見つける、またはスマホで近くの自転車を捜して予約(15分とかの予約の有効時間あり)

②自転車に付いているQRコードをスマホで読み取って、シェア自転車の会社に送信すると電子キーを解除してくれる

③乗る

④自転車を止めて、手動でキーを掛けると使用終了になる。

⑤解錠していた時間だけ課金され、使用料はスマホで決済

 

(業者)

オレンジ色の「Mobikeモバイク(摩拝単車)」と黄色の「Ofoオッフォ(共享単車)」が大手で、他に中小業者が多数。

 

(シェア自転車の仕様)

 

*使用料が30分0.5元(約8円)というシェア自転車もある

 

(シェア自転車の問題点)

・シェア自転車が道に溢れて通行の邪魔になる。捨てられた自転車の山が出来ている

・シェア自転車の盗難、破壊、放置、個人使用などルールから外れた使用が多い

・シェア自転車を経営している会社が倒産した時、保証金が返済されない事例がある

・政府は、信用情報の一元管理を目指していて、政府に信用情報が筒抜けになる(現在は過渡期で、一元管理までには至っていない)

 

(倒産する会社も)

・重慶の悟空単車Wukong Bike

投入した1200台のうち、9割が回収できず。多くで電子キーが破壊された。GPSは非搭載で、行方不明の自転車を追跡できないことも一因か?

・河北省・福建省で事業をしていた3Vbike

投入した約1000台のほとんどが戻らず。キーが破壊されたか? 盗難にあう自転車を当初2割と予想していたが、実際は投入した自転車のほとんどが盗難にあった

・南京市の町町単車

保証金の返金が未だ行われていない

・広州市の小鳴単車

保証金を返せない

・北京市の酷騎単車

保証金を返さない。保証金は5000円で100万台の自転車なので、保証金の総額は数十億円以上。「保証金目当ての事業じゃないか?」と非難されている。

 

(当局の規制の動き)

Forbes誌によると

・自転車が多すぎるので、総量規制を試みる(既に実施している都市もある)

・保証金の禁止

シェア自転車の会社が倒産しても、保証金を返済しない(できない?)会社があるため。また、保証金が違法な目的で使用されるのを防止するため。

乗り捨て場所を決められた場所のみに限定。指定エリア外に駐輪した場合は罰金

これは、今まで「乗り捨て自由」だったビジネスモデルの大転換になり、中国流シェア自転車のビジネスモデルが崩れてしまう。こんな時期に、こんな大転換有りか? 

・利用可能年齢を12歳以上に限定する

・実名での利用登録

・保険への加入(事故対策)

・(上海市・天津市の規制)自転車の使用年数を3年以下に

・(上海市・天津市の規制)200台の自転車に最低1人のメンテナンス要員

 

(事業の採算を考える)

モバイクの例で採算を考える

・使用料は30分16円

・自転車にライトが付いて無いので、1日8時間有料で使用すると仮定する

・自転車の原価16000円(ノーパンクタイヤ・GPS付きにしては安いような?)

・1日の使用料合計は、16円×2×8時間=256円

・自転車の原価16000円を稼ぐには、16000円÷(16円×2×8時間)=62.5日

2カ月程度で元が取れるのは、魅力的。稼働時間8時間は長いような気がするので、有料時間を半分の4時間としても4か月程度で元は取れる。

 

(日本に進出した「モバイク」の自転車事業)

札幌市でスタート

・自転車は「モバイク」の中国仕様そのまま(外観を見る限り。ただし、前かごは追加されているが、ライトは無い)

・保証金3000円

・決められた駐輪場所から自転車を借り、決められた駐輪場所(借りた場所でなくて良い)に戻す。

・定期的に自転車を再配置する

・駐輪場所は、コンビニ・ドラッグストアなどに設定

・使用料30分50円(キャンペーン価格)、8月中は無料という記事もあった

・使用料の支払いはクレジットカード

 

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ここまでが中国のシェア自転車の状況です。シェア自転車の利便性が高く、利用者も多いようですが、問題点も多いようです。このビジネスが中国で成り立っても、他の国で成立するかどうか?

  

2017年8月21日のブログ「中国で流行りのシェア自転車の疑問」では、決められた場所にシェア自転車を返却するという前提で問題点を考えてみましたが、ここでは街中どこでも「乗り捨て自由」という前提で問題点を再度考えてみます。

 

  • 中国におけるシェア自転車の課題

 

①街中あちこちに乗り捨てられた自転車の回収、あるいは移動はできる?

 

中国では、兄ちゃんが小さいトラックに自転車を積んで移動していたが、街中の狭い路地や見つかり難い場所に乗り捨てた場合は、GPSでも見つけ難いし、回収に手間がかかる。こういう自転車は使用頻度が少なくなるので、採算が合わない。

 

②タイヤの空気は抜けるし、パンクする。部品は破損するし、電池の寿命が来る

 

「モバイク」はノーパンクタイヤなので、空気抜けやパンクの心配は無い。その分、自転車は高価になる。「オッフォ」の自転車は、写真で見ると空気を入れるバルブが出ているので、普通のタイヤと思われる。そうすると、1カ月に1回は空気を入れなきゃいけないのでメンテ要員が必要になる。

 

ライトが付いてないので部品の破損は少ないかもしれない。錠やGPS用に電池は必要ですが、寿命は十分長いはず。

 

③盗難や廃棄された場合は対応できない

 

いくらGPSが付いていても、鍵を壊せば盗めるし、電池を抜けばGPSも電子キーも機能しなくなる。

 

④中国人のモラル(自転車を返却スペースまで返しにいくかどうか?)

 

これは言わずもがな。街中どこでも「乗り捨て自由」の場合でもモラルが必要だし、決められた駐輪スペースに戻す場合はもっとモラルが必要。中国人に出来るのかな? あるいはモラルに頼らず、強制的(違反者は法律で、または信用情報を利用して罰を与えるなど)に自転車を決められた場所に返却させるとか。GPSが付いていれば、決められたエリアに返却したか、直ぐにわかる。ただし、中国のGPSの精度による。

  

  • 中国におけるシェア自転車の今後

 

中国でシェア自転車の利用が増えている大きな理由を考えると、

①借りる時に簡単に見つけられる(それだけシェア自転車が街にあふれている)

②決められた返却場所まで返す必要なし

だと思います。

 

しかし、Forbesの記事によると、当局は「乗り捨て場所を決められた場所のみに限定」することを打ち出している。「乗り捨て自由」は、中国でシェア自転車の利用が増えている理由の一つと思われるので、返却場所を駐輪スペースに限定するとジェア自転車のビジネスモデルに大きな影響を与える。

 

だいたい、中国人が決められた返却場所まで、自転車を返しに行くかどうか? 歩道上に白線で区切られた駐輪スペース(ここに戻すようになるようです)は多くあるが、それでも行って帰ってこなくてはならない。そんな面倒なことを中国人がやるかな? いずれにしても、こんな基本的な変更をビジネスが進んでいる最中にやるか?

今後、中国におけるシェア自転車のビジネスがどうなるのか、興味津々ですね。中国のシェア自転車に関する日本人の意見を見ると、「中国は進んでいる」という少数意見と、「続くわけねえだろう」と冷ややかに見ている多数意見がありました。

 

  • 日本におけるシェア自転車の課題

中国でシェア自転車をやっている会社が日本に進出したとTVで紹介していたが、さすがに日本では街中どこにでも「乗り捨て自由」とはいかず、コンビニなどに駐輪場所を確保するらしい。日本でも、既にシェア自転車が都心などで営業しているが、サービスが広がっているという話は聞かない

 

ここで先に揚げた(中国でシェア自転車が伸びた理由)の各項目を日本に当てはめた場合について検証します。⇒の後が私の判断です。

・目的地が駅から1~3㌔と遠い場合が多いが、他に交通手段が無い

⇒都会はある

・自転車の盗難が多いので、自分で自転車を保有するのは神経を使う

⇒盗難は少ない

・自転車天国だった頃のインフラ(自転車専用レーン、歩道に白線で区切られた駐輪スペースが多数あるなど)が残っている

⇒もともと少ない

・シェア自転車の使い勝手が良い(近くに自転車がある、あるいはGPSで自転車を直ぐに捜せる、乗り捨て自由、決済が簡単、使用料金が安い)

⇒ほとんどがダメ

・平地が多いので自転車が使い易い(これは私の推測)

⇒平地は少ない

・交通政策として、政府が支援

⇒無い(今のところ)

・民間が多くの投資をしている

⇒無い(今のところ)

 

こうしてみると、中国で「シェア自転車が伸びた理由」として挙げた項目のほとんどが日本では当てはまらない。

 

ということで、結論。こういうシェア自転車が身近にあれば便利と思う反面、日本中のどこでも永続的なビジネスとして成り立つのか(採算が取れるのか)、大いに疑問です。

 

2017.09.23

 

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