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ほぼ週二 横浜の山の中通信

人と異なる視点から見る

社会主義的搾取には限界が無い~中国の不正資金を試算してみる~

2015年05月09日 | 国際・政治(中国)

現在の中国もそうですが、世界史を読んでいて不思議に思うのは、民衆は貧困に苦しんでいるのに、なぜ多額の不正蓄財が出来るのかです。中国を例に、民衆から少しずつ搾取すればどれくらいの金額になるのか、試算してみました。

 

まず日本を想定すると、1億人から一万円ずつ搾取すると1兆円。大したことないなあ。

 

本題の中国を想定すると、10億人から数万円ずつ搾取すると数十兆円。この数万円の搾取を数年かけてやると、一年に1万円でよい。なるほど、結局、全中国国民から1年間で1万円搾取すれば、数年で数十兆円になる。誰かが中国の不正蓄財は数十兆円になると言っていたので、おおよそ計算は合う。

(実際の日本の人口は1億3000万人弱、中国の人口は13.5億人と言われています)

 

こうしてみると、中国の不正蓄財(共産党による搾取)の数十兆円なんて簡単にできる。リーマンショック後に中国がばら撒いた金額もやはり数十兆円になるらしいが、ひょいひょいと引っ張り出せる金額です。中国の巨額の不良債権(金額不明)も大したことない。

 

ここから、話はがらっと変わります。

私の以前のブログ、2014年10月14日の「科学の捏造は、今に始まったことでは無い」でも引用しましたが、「陽月秘話」というブログの2009年2月6日と2014年9月28日に、最近亡くなられた経済学者・宇沢弘文氏の講義で直接聞いた話が載っています。

http://imogayu.blogspot.jp/2009/02/blog-post_06.html

http://imogayu.blogspot.jp/2014/09/blog-post_28.html

この逸話は気に入っているので、より詳しい資料が無いか検索したところ、本人が話した講演会の要旨(下記)が見つかりました。そこから少し長く引用します。

 

日本大学での2010年の宇沢氏の講演要旨です。

http://www.eco.nihon-u.ac.jp/center/ccas/pdf/news_letter_no8.pdf

 

宇沢氏が1980年代の初め頃、中国・瀋陽の近郊の農村に滞在して当時始まったばかりの請負生産を中心とする農村改革の実態につて調査した時のこと。当時の農村の悲惨な現実と共産党幹部による徹底的な搾取を知って強烈な衝撃を受けたそうです。

それで、「資本主義的搾取には市場的限界があるが、社会主義的搾取には限界が無い」と題する報告書を党中央に提出したところ、宇沢氏は中国共産党幹部に呼び出され査問された。

中国共産党幹部連中(そのなかにはトウ小平や趙紫陽もいた)が怒る中で、一番若く末席にいた趙紫陽だけが周囲の人たちをなだめてくれたそうです。

(ブログの内容と若干異なりますが、本人の講演要旨に従いました)

 

「社会主義的搾取には限界が無い」なるほど! その通り!

上記の試算をしてみて、共産党による搾取は笑い話では無く本当にそうだと納得した次第です。しかし、共産党が国民から搾取する金額を計算するとは思いませんでした。

 

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(付録)宇沢弘文氏の中国農村部の調査について

宇沢弘文氏による中国農村の調査報告書を読んでみたくなり、インターネットで捜しましたが出てきません。残念ですが、こんな都合の悪い論文は出てこないでしょう。この調査は中国政府か中国共産党の依頼だったのでしょうか? 日本人の経済学者に中国の農村を調査させるというオープンな時期があったのは、現在の日中間の状況を考えると驚きです。

 

この中国の農村の調査時期を宇沢氏は1980年代初めと言っています。80年代初めは胡耀邦が党主席だった時代なので、これだけオープンだったのかなと推測します。その頃、宇沢弘文氏は東大教授で50歳代でした。少し気になるのが、1919年生まれの趙紫陽は1980年に首相になっているので、共産党幹部の中で、「一番若い」「末席」とは思えませんが・・

 

日大の講演要旨とほぼ同じ文章は、朝日新聞 2010年5月14日夕刊に「私の収穫 趙紫陽」として載っています。残念ながら、付け加えられた新しい内容はありません。

 

参考までに、簡単な中国の年表を付けておきます。

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1966年:文革開始

1968年:劉少奇失脚

1972年:ニクソン大統領訪中。田中首相訪中

1975年:トウ小平復活

1976年:周恩来首相死去。第一次天安門事件、胡耀邦・トウ小平失脚。毛沢東死去。4人組逮捕。

1977年:胡耀邦・トウ小平復活。文革終了。

1978年:トウ小平実権掌握。

1980年:華国鋒辞任。趙紫陽、首相に。

1981年:胡耀邦、党主席に

1987年:胡耀邦、党主席を解任される。趙紫陽、総書記代理に。

1989年:胡耀邦死去。第二次天安門事件。趙紫陽失脚。

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2015.05.09

 

2015.05.13 朝日新聞の記事を確認したので、その部分を書き加えました。

2015.06.06 (追加)

日本経済新聞社2014年11月刊「経済と人間の旅」116頁に「中台の指導者」という項目があります。ここに「資本主義的搾取には市場的限界があるが、社会主義的搾取には限界が無い」という結論に至った経緯が簡単に書かれていますが、日大の講演要旨などと少し事情が違うようです。この本は、日本経済新聞の2002年に連載された「私の履歴書」を編集したもので、著者はもちろん宇沢弘文氏です。


AIIB(アジアインフラ投資銀行)に思う (下)英国の参加を検証

2015年05月03日 | 国際・政治(中国)

私はAIIBが将来どうなるか、判断がつきかねます。なぜなら、これに関わる政治的・経済的・人的・時間的要因が多過ぎる割に情報が少ないから。経済評論家やいろいろな人がいろいろな意見を言っていますが、現時点ではわからないことが多過ぎる。

 

ところで、イギリスはAIIBへの参加という実利を選択したと後から言う人はいても、イギリスのAIIB参加を予測した人は(私が知る限り)いませんでした。今から振り返ると、いろいろなサインは出ていたのに。

 

2012年キャメロン首相がチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世と会談し、英中関係は悪化しましたが、双方の腹の中はどうであれ、その後は関係改善が進んでいました。

 

・2013年12月、キャメロン首相が訪中し、習近平主席と会談、英国の原発事業や高速鉄道建設への中国企業の参入を歓迎する考えを伝えた。また、キャメロン氏は「チベットは中国の一部。独立を支持しない」と表明。

 

・2014年6月、李克強首相がエリザベス女王と面会。また、キャメロン首相はHS2高速鉄道プロジェクトへの中国による投資を歓迎するとコメントした。

 

(注)HS2高速鉄道プロジェクト

第一期区間はロンドンとバーミンガムを結び、2017年に着工、2026年に開通する予定。第二期区間は2030年に完成し、バーミンガムからマンチェスターとヨークシャーを結ぶ

 

・2015年3月、ウィリアム王子訪中

 

こうしてみると、参加に至る地ならしをしています。

 

これとは別に、英国は中国・香港と密接な関係の二つの銀行を持っています。HSBC(元の名前は香港上海銀行)とスタンダード・チャータード銀行はいずれも英国の銀行ですが、メインの収益源はアジアで、両行は香港ドルの発券銀行(もう一行は中国銀行(香港))です。HSBCは、時価総額でアメリカのシティ、バンカメに続いて世界第3位の大銀行です。

イギリスは香港を領有していたので、古くからの関係(利権)があるのは当然です。

 

ところで、米国は英国のAIIB参加を予測していたのでしょうね。英国からの事前連絡で知ったのなら、日本よりアメリカの方が重症かも?

 

(追加)

ある雑誌に、「ヨーロッパの主要国がAIIBに参加したのは経済的利益のため」と書いている人がいましたが、ヨーロッパの主要国は「経済的利益のために参加して何が悪い」と言うと思います。そもそも、アメリカは経済的利益のために行動します。理念で動いているように見えるのは、アメリカがそう思わせているからであり、アメリカへの信奉者が勝手に勘違いしているからです。アメリカは参加した方が経済的利益を多く得られると考えたら、AIIBに参加するでしょう。中国がアジアから米国の影響力を排除しようとしない限り。アメリカは日本のことを気にしないでしょう。後を付いて来ると思っているから。

2015.05.03


AIIB(アジアインフラ投資銀行)に思う (上)祈る外交

2015年05月01日 | 国際・政治(中国)

中国が主導するAIIB(アジアインフラ投資銀行)に、日本とアメリカは現在のところ不参加です。「参加しないと日本は世界から取り残される」という意見から、「AIIBはうまく行くわけがないので、参加する必要が無い」という意見まで、いろいろな意見が飛び交っています。私のように古い人間から見ると、今出ている意見は、おおよそ予想できた意見です。

 

中国はAIIBのような経験が少ないのでうまく行かないと言う人がいますが、東京財団の小原凡司氏は週刊東洋経済4月18日号で、中国は「やりながら改良していく」と指摘しています。小原氏は海軍の例をあげていますが、新幹線のように技術を導入して自分のものにした例もあります。

 

AIIBはどうなるか? 私には情報不足でわかりません。ただし現状は、日本とアメリカが数の上で劣勢であり、「AIIBはつぶれろ」とか「失敗しろ」と祈るような立場になっていて精神衛生上良くありません。

 

本来は今の日本のような立場にならないような外交が必要だったのは言うまでもありませんが、もう手遅れです。ここから挽回できる外交力が日本にあるとは思えないので、後はアメリカに頼るしかありません。ただし、アメリカの後ろをのこのこ付いて行って、結局AIIBに参加することになるのはカッコ悪いですよ。

 

ところで安倍首相は、多くの海外訪問をしています。その時に相手国とAIIBの情報を交換しなかったのでしょうか? 海外訪問が単なる顔つなぎや挨拶だけが目的では、何ら成果を得ることが出来ません。世間はそれほど甘くない。安倍首相は何らかの戦略を持って訪問したのでしょうか?

TVによると、安倍首相のストレス発散の方法は、一番目がゴルフ、二番目が海外訪問だそうです。そうでしょうね、海外訪問していると野党から責められない。しかし、そんな魂胆なら成果は上がらない。

 

前にも書きましたが、先日亡くなった元外交官の岡崎久彦氏が「アングロサクソンに付いて行ったら良いんだ」とか「アメリカの言う通りにしていたら良いんだ」とTVで言っていました。岡崎久彦氏の教えに沿っていたら、アングロサクソンのイギリスに裏切られ、アメリカとイギリスの股裂きにあってしまいました。それに比べて、ドイツのメルケル首相はやさしいですね。「一緒に入らないか?」と誘ってくれたし。

 

それに気になるのは、安倍首相に近い人たちが戦時中の大本営発表(もちろん私は直接聞いたことはありません)と似たことを言うことです。アメリカと海戦をしてボロ負けした時、大本営は「撤退」や「退却」を「転進」と言ったように。

 

もう一つの不参加国アメリカはAIIBにどのように対応するのでしょうか? AIIBをアメリカによる世界秩序への挑戦と受け取るのか、それともAIIBを利用してアメリカの企業がアジアのインフラ整備に関わるという実利を取るのか? 前者ならAIIBを潰す作戦に出るかもしれません。かって日本が提唱したアジア開発銀行に横槍を入れたように。後者ならアメリカは中国に一本取られたことになります。

どちらにしても、この問題の結果によっては、世界の転換点になるかもしれません。

 

2015.05.01


中国は共産党独裁のままの方が日米は都合が良い?

2015年04月30日 | 国際・政治(中国)

週刊ダイヤモンド2015年4月14日の加藤嘉一氏のコラム(下記URL参照)に、「中国が民主化されない限り、アメリカの世紀は終わらない」と書かれていました。

中国はハードやソフトにおいて、何かを「創造」する能力は未だ貧弱であり、この「創造」する能力を高めるには民主化が前提と言っています。

http://diamond.jp/articles/-/70039

 

私は民主化にもいろいろあって、民主化だけが「創造」に導く唯一の解とも思えません。アメリカが優秀な移民を数多く受け入れていることが、その大きな要因の一つであって、アメリカがその解の一つを持っているのは確かです。

 

中国は下記の①②ができれば、国力はもっと増大するのは確かでしょう。

①中国は「世界の工場」から脱皮する

②社会不安を克服する

 

①中国は「世界の工場」を脱皮する

中国はそのうち米国を追い抜くと言っている人がいますが本気なのでしょうか? 昔の日本の80年代のように、今の中国経済は、リーマンショック対策でバラ撒いた金で潤っていますが、そういう時ばかりが続くわけがない。中国は「世界の工場」であって、「世界の本社」でもなく、「世界の開発・設計部門」でもない。したがって、「世界の本社」や「世界の開発・設計部門」のあるアメリカやヨーロッパや日本を質で越えられるわけがない。

「世界の工場」を脱皮するのに、民主化が必ず必要かどうか?

 

②社会不安を克服する

現在の中国のように、官僚の汚職による不正蓄財、蓄財の海外への不正持ち出し、民衆による抗議活動などが大規模に存在する限り、国力が削がれてこの程度で済んでいる。これらが適正化された場合、中国の国力は今よりももっとすごいことになる。

この社会不安を克服するには共産党独裁を止めて、民主化するのが必要。

 

こういう矛盾を抱えた中国に日米が手を貸して、共産党が政権を維持できるようにしている限り、中国の国力は制限されるので、日本やアメリカにとって都合の良いことになる。

 

ホンマかいな?と思うのは、民主化したら却って国力を削ぐ場合もあるのでは?と思います。今の中国には民主化の受け皿が見当たらないし、民主化したとしても欧米のようにはならないでしょう。「アラブの春」のように元の木阿弥になるか、ロシアのようになるのか、インドのように混沌とした国になるのか、見当もつかない。場合によっては、旧ソ連のように分裂するかもしれない。

したがって、しばらくは米国の天下が続くことになるというのが、上記コラムと同じ私の結論です。

2015.04.30


習近平は毛沢東か?

2015年03月27日 | 国際・政治(中国)

習近平が権力を握った2012年からしばらく、歴代の共産党総書記と比べると権力基盤が弱いという観測が複数のメディアに載っていました。

例えば http://www.chuokoron.jp/2013/08/post_198.html

また、人民解放軍における基盤が弱いので、クーデターの可能性に言及した記事もありました。

 

習近平はその頃から「腐敗と徹底的に戦う」とか「ハエもトラも一緒に叩く」と言っていましたが、未だトラ(大物)は叩けていない段階でした。

それから約2年、習近平は自分の息のかかったトラを除いて、「ハエもトラも一緒に叩く」ことで、自分の権力基盤を強化しました。

週刊ダイヤモンド(ウェッブ版)の3月17日付の「加藤嘉一 習近平の支配から逃れられる者などいない」という記事が載っています。

http://diamond.jp/articles/-/68498

見出しの通り、習近平が腐敗取締を口実に権力基盤を強化したことが書かれています。

 

一方で、3月16日の日経新聞は、習近平が強権を手に入れると同時に、習近平の身辺警護が厳重になっていると言う記事を載せています。摘発されたトラの周辺にいる者は不満を募らせているでしょうが、腐敗摘発が続いている限り正面きって文句は言えないでしょう。

 

問題は、この先習近平は「ハエもトラも一緒に叩く」のを続けるのでしょうか? 江沢民元総書記の勢力を一掃しても、胡錦濤前総書記の勢力は残っているので、これも叩く?

それとも江沢民元総書記の勢力を一掃して、自分の息のかかった幹部を主要ポストにつけたら、もう安心と「ハエもトラも一緒に叩く」のを中止するのでしょうか?

 

習近平は、「ハエもトラも一緒に叩く」ことで権力基盤を強化できたし、「人民」の人気も出た。そこで「ハエもトラも一緒に叩く」のを中止すると、「人民」の期待は低下するし、権力基盤も弱くなるので、続けるしか手が無いとも思える。 

 

それでも腐敗摘発を続けるのは難しいでしょう。腐敗の温床は共産党が全て決めると言う統治形態の問題ですから「ハエもトラも一緒に叩く」のを続けると、共産党の統治形態の問題まで行き着くかもしれないし、官僚や党幹部の恨みをさらに買ってどこで暴発するとも限りません。

 

いずれの場合にしても、汚職や所得格差に対する人民の不満を外国に向かうように仕向けるかもしれません。今年は第二次世界大戦終了70周年なので、特に都合が良い。

 

中国のように、世界に大きな影響を与える国でありながら、その権力構造が不透明で、しかも最高権力者の政策が不明瞭なのは困りものです。

2015.03.27