現在の中国もそうですが、世界史を読んでいて不思議に思うのは、民衆は貧困に苦しんでいるのに、なぜ多額の不正蓄財が出来るのかです。中国を例に、民衆から少しずつ搾取すればどれくらいの金額になるのか、試算してみました。
まず日本を想定すると、1億人から一万円ずつ搾取すると1兆円。大したことないなあ。
本題の中国を想定すると、10億人から数万円ずつ搾取すると数十兆円。この数万円の搾取を数年かけてやると、一年に1万円でよい。なるほど、結局、全中国国民から1年間で1万円搾取すれば、数年で数十兆円になる。誰かが中国の不正蓄財は数十兆円になると言っていたので、おおよそ計算は合う。
(実際の日本の人口は1億3000万人弱、中国の人口は13.5億人と言われています)
こうしてみると、中国の不正蓄財(共産党による搾取)の数十兆円なんて簡単にできる。リーマンショック後に中国がばら撒いた金額もやはり数十兆円になるらしいが、ひょいひょいと引っ張り出せる金額です。中国の巨額の不良債権(金額不明)も大したことない。
ここから、話はがらっと変わります。
私の以前のブログ、2014年10月14日の「科学の捏造は、今に始まったことでは無い」でも引用しましたが、「陽月秘話」というブログの2009年2月6日と2014年9月28日に、最近亡くなられた経済学者・宇沢弘文氏の講義で直接聞いた話が載っています。
http://imogayu.blogspot.jp/2009/02/blog-post_06.html
http://imogayu.blogspot.jp/2014/09/blog-post_28.html
この逸話は気に入っているので、より詳しい資料が無いか検索したところ、本人が話した講演会の要旨(下記)が見つかりました。そこから少し長く引用します。。
日本大学での2010年の宇沢氏の講演要旨です。
http://www.eco.nihon-u.ac.jp/center/ccas/pdf/news_letter_no8.pdf
宇沢氏が1980年代の初め頃、中国・瀋陽の近郊の農村に滞在して当時始まったばかりの請負生産を中心とする農村改革の実態につて調査した時のこと。当時の農村の悲惨な現実と共産党幹部による徹底的な搾取を知って強烈な衝撃を受けたそうです。
それで、「資本主義的搾取には市場的限界があるが、社会主義的搾取には限界が無い」と題する報告書を党中央に提出したところ、宇沢氏は中国共産党幹部に呼び出され査問された。
中国共産党幹部連中(そのなかにはトウ小平や趙紫陽もいた)が怒る中で、一番若く末席にいた趙紫陽だけが周囲の人たちをなだめてくれたそうです。
(ブログの内容と若干異なりますが、本人の講演要旨に従いました)
「社会主義的搾取には限界が無い」なるほど! その通り!
上記の試算をしてみて、共産党による搾取は笑い話では無く本当にそうだと納得した次第です。しかし、共産党が国民から搾取する金額を計算するとは思いませんでした。
-------------------------------------------------------
(付録)宇沢弘文氏の中国農村部の調査について
宇沢弘文氏による中国農村の調査報告書を読んでみたくなり、インターネットで捜しましたが出てきません。残念ですが、こんな都合の悪い論文は出てこないでしょう。この調査は中国政府か中国共産党の依頼だったのでしょうか? 日本人の経済学者に中国の農村を調査させるというオープンな時期があったのは、現在の日中間の状況を考えると驚きです。
この中国の農村の調査時期を宇沢氏は1980年代初めと言っています。80年代初めは胡耀邦が党主席だった時代なので、これだけオープンだったのかなと推測します。その頃、宇沢弘文氏は東大教授で50歳代でした。少し気になるのが、1919年生まれの趙紫陽は1980年に首相になっているので、共産党幹部の中で、「一番若い」「末席」とは思えませんが・・
日大の講演要旨とほぼ同じ文章は、朝日新聞 2010年5月14日夕刊に「私の収穫 趙紫陽」として載っています。残念ながら、付け加えられた新しい内容はありません。
参考までに、簡単な中国の年表を付けておきます。
-------------------------------------------------------------
1966年:文革開始
1968年:劉少奇失脚
1972年:ニクソン大統領訪中。田中首相訪中
1975年:トウ小平復活
1976年:周恩来首相死去。第一次天安門事件、胡耀邦・トウ小平失脚。毛沢東死去。4人組逮捕。
1977年:胡耀邦・トウ小平復活。文革終了。
1978年:トウ小平実権掌握。
1980年:華国鋒辞任。趙紫陽、首相に。
1981年:胡耀邦、党主席に
1987年:胡耀邦、党主席を解任される。趙紫陽、総書記代理に。
1989年:胡耀邦死去。第二次天安門事件。趙紫陽失脚。
-------------------------------------------------------------
2015.05.09
2015.05.13 朝日新聞の記事を確認したので、その部分を書き加えました。
2015.06.06 (追加)
日本経済新聞社2014年11月刊「経済と人間の旅」116頁に「中台の指導者」という項目があります。ここに「資本主義的搾取には市場的限界があるが、社会主義的搾取には限界が無い」という結論に至った経緯が簡単に書かれていますが、日大の講演要旨などと少し事情が違うようです。この本は、日本経済新聞の2002年に連載された「私の履歴書」を編集したもので、著者はもちろん宇沢弘文氏です。