昔は、日光浴が健康に良いと言われていましたが、最近では皮膚ガンの原因とされたり、シミやしわ、美白の大敵とされ、忌み嫌われているようです。夕方や雲が厚い日も、日傘をさしたりアームカバーをしたり、なかには顔を全て覆っている人もいます。
ここでは、美容への影響は置いといて、健康・医療への影響について考えてみます。
オーストラリアの皮膚がん
紫外線の害の例として、オーストラリアでの皮膚がんの多さが取り上げられますが、日本での紫外線の害の例としては不適切です。オーストラリアでの皮膚がんを取り上げる場合、意図的なごまかしがあります。
実際にオーストラリアでは、毎年数百人が皮膚ガンで死亡しているようです。
皮膚がんの1種のメラノーマの発生率は、
日本 :1.5~2人 /10万人
オーストラリア:20数人 /10万人
だそうです。出典は、
http://皮膚がん.net/shibouritsu/Is-how-long-skin-cancer-mortality/
しかし、これは
・オーストラリアで特に紫外線が強い(日本の数倍)
・太陽光の弱い地域から移住した白人の白い肌は、紫外線に弱い
の二つの要因が重なって起きるものです。
オーストラリアで特に紫外線が強い理由は、オゾンホールの破壊が言われています。
日本における紫外線の増加は、気象庁の下記サイトによると、1990年代と比べて5%程度です。
http://www.data.kishou.go.jp/obs-env/uvhp/diag_cie.html
また日本人の肌は、白人ほど紫外線に弱くありません。
日本あるいは世界で、皮膚がんは増加傾向のようですが、具体的なデータが見つからないので、省略します。
紫外線のメリット・デメリット
従来から言われていることは、次の通りです。
【メリット】
・紫外線を適度に浴びると、皮膚組織内でコレステロールから、ビタミンDが生成します。
ビタミンDは、魚関係の食品を食べると摂取できます。また、錠剤・サプリでも補給できます。
・ビタミンDは、「くる病」や「骨粗鬆症」になるのを防止します。他に、ガンやインフルエンザ予防に効果あるという発表もありますが、明確ではないようです。
【デメリット】
・皮膚がんの原因
・「紫外線にたくさん当たったり、日焼けすると、活性酸素が大量に発生し、卵巣の働きが悪くなる」と、あるサイトには書いてありますが、微妙な書き方なので原典を探しましたが、見つかりませんでした。
次に、最近の研究で新しい知見が出てきているので、それを紹介します。いずれも、新聞に掲載されたり、報道されています。≪≫内は、それぞれのサイトからの引用です。
l活性酸素の精子幹細胞に対する増殖促進作用を解明
京大プレスリリース 2013年6月7日
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/news6/2013/130607_1.htm
≪これまで活性酸素は精子の運動率や機能を低下させる作用があることが知られており、男性不妊症の原因の一つとして考えられていました。今回の研究成果は活性酸素の低下が精子を作るもととなる幹細胞の増殖を低下させる作用があるということを明らかにしました。このため、不妊男性の活性酸素を低下させると幹細胞の能力が低下し、必ずしも精子形成全体には良い影響があるとは言えないことを示唆します。≫
要は、従来から、活性酸素が精子の機能を低下させることがわかっていたが、今回、活性酸素が精子の元になる幹細胞を増殖させる作用もあることがわかった。活性酸素は、紫外線・たばこ・ストレスなどで大量に発生する。
したがって、紫外線は精子に良い作用と悪い作用をするということになります。
l体脂肪率の低下やビタミンDの不足が、若いうちに卵子を減少させる可能性がある
2013年9月4日 NHK
http://www3.nhk.or.jp/news/html/20130904/k10014271881000.html
NHKのニュースは、ホームページから早く消えるので、無い時は悪しからず。
順天堂大学の発表はありません。
≪順天堂大学などの研究グループは、20代と30代の100人の女性を対象に、卵子の残りの数を推定できるとされるホルモンの量と、生活習慣や食生活などおよそ600項目との関連を調べました。
その結果、卵子の残りの数が40代と同じくらい少なくなっていると推定された女性は、20代の場合は、体脂肪率の平均が22.6%とそのほかの女性の平均より4%低くなっていたほか、30代は、血液中のビタミンDが不足状態だったことが分かりました。
研究グループは、体脂肪率の低下やビタミンDの不足が、若いうちに卵子を減少させる可能性があるとみて、さらに大規模な調査を行うことにしています。
同じような研究結果は、去年アメリカでも報告されているということです。
順天堂大学の佐藤雄一医師は「若い女性はきれいになりたいと極度に痩せようとしたり美白を求めたりする傾向が強いが、不妊にならないためには、適度な体重を保つとともに、ビタミンDを体内で作るため毎日少しずつ日光を浴びることも大切だ」と話しています。≫
要は、卵子の減少が速い人は、体脂肪率が低く、ビタミンDも不足している傾向にある。今後さらに、大規模な調査を行うということです。
l日本人正常新生児にはビタミンD欠乏症が高頻度に見られ、母乳栄養児で特に改善が遅れる 京大プレスリリース 2008年3月31日
http://www.kyoto-u.ac.jp/ja/news_data/h/h1/2008/news6/080331_1.htm
≪ビタミンD欠乏症は日光の弱い北欧や皮膚を隠す習慣のある民族以外ではまれであると考えられていましたが、近年先進諸国においても決してまれではないことが報告され、また本邦の小児科領域でも骨変形、けいれんなどで受診する患者さんが増加しています。≫
≪乳栄養児にはビタミンD欠乏の危険があることも従来欧米では認識されており、たとえば米国小児科学会の勧告では新生児全員に一日200単位のビタミンDを赤ちゃんに投与すべきだとの記載が既にされています。≫
日本でも、ビタミンD欠乏症の患者が増えていて、それが小児科でも増えているそうです。
なお、ビタミンDの薬剤は、「生」と「活性型」の二種類があり、日本では「活性型」しか認可されていないようです。ただし、サプリは「生」と思われます。また、≪活性型ビタミンD剤は専門医が注意して使わないと過剰症をおこしかねない製剤≫だそうです。
【結論】
魚類食品を沢山食べる人やサプリでビタミンDを飲む人以外は、適度に日光を浴びた方が良いと思います。
人類はその誕生以来、ずうっと紫外線を浴び続けてきたわけですから、紫外線は人類にとって良いことも悪いこともあって当然です。結局、各個人がどのようなライフスタイルを選ぶかによります。
余計ですが、人類はその誕生以来、宇宙から、あるいは地中から、放射線を浴び続けています。
(参考)
Nikkei BP Net「増える日本人の皮膚がん、男性も紫外線対策を」2005年8月19日
http://www.nikkeibp.co.jp/archives/392/392586.html
には、国立がんセンターの皮膚科 医長の話として、
≪海外旅行に行って、肌を焼いているのは、日本人の若者ぐらいです。海外の皮膚がん研究者からは、「いったい日本は、どうなっているのだ?」と質問されることさえあります。専門家にしてみれば、日本の若者がこぞって肌を焼く行為は、自ら命を縮めているに等しい行為なのです。≫
という記事が載っていました。2005年の記事ですが、「肌を焼いているのは、日本人の若者ぐらいです」というのは、本当でしょうか? 私は世界のビーチに行っていませんが、TVやネットで見ていると、今でも白人と思しき人はガンガン日光浴しています。医者の話も専門外のことは、注意して聞かないとダメです。
2013.09.08