じいちゃんの誘いに飛びつくように、ノリに乗った孫次男坊のカー君と、広島マツダスタジアムへ。
彼にとっては初めてのプロ野球観戦。どんなドキドキワクワクがあったのだろうか。
普段は何をやってもゆっくり目の彼が、この日ばかりは学校から走るようにして帰ってきて「じいちゃん何時に出るの」と電話してくる張り切りよう。
予定通り迎えに行って岡山行きの電車に乗った。ガラガラに空いた電車の一番前に走る。運転手さんのすぐ後ろに立ったまま、広島駅まで座りもしない。わき目もふらず、運転手さんに合わせて指差し呼称。それほどに、電車に乗るのも見るのも、時間の経過も眼中にないほどののぼせよう。
そういえば6年前に、東京タワー見学をせがまれて連れて行ったとき、何に一番興味を示したか。
それは東京駅新幹線ホームで、東海道・上越・東北など各新幹線の顔とお尻を見ること。電車の模様、連結の仕方をつぶさに観察することであった。
それ以来、日本各地の電車にはまって、彼なりに色々学習したのかな。パソコン開けば電車のことばかり調べていたと、母親が言う。
さて、カープの応援に喉を枯らした帰り道。広島駅で行列の後ろに並び、22時3分発の電車を待っていた。カー君はホームギリギリのところで入ってくる電車を覗きこんでいる。「この電車は4両編成なのに、連結して8両になったので、連結した車両に乗りたい」と言い出した。ごった返す中でやっと確保した座席がもったいないから、「一人で行っておいで」と、しばし別行動することにした。あの興奮状態の野球応援から、一気に鉄道マニアにヘンシーン、本来の姿剥き出し。じいちゃんも付いていけない世界を持っている。
岩国駅まであと一駅、和木駅に着いたところで「ただ今、上りの貨物電車が岩国・和木間で小動物と衝突し、安全点検のためしばらく運転を見合わせます」というアナウンス。ナヌッ?いい加減遅くなったのに、家に着くのがもっと遅れるのか、こりゃ困ったなと、6年生の就寝時間が心配になる。それにしてもいつまで待ってもカー君が戻ってこない。仕方なし、停車中の車両を探すと、話の通り連結した5両目にいた。それも、ちょっとやんちゃそうないかついお兄さん4人を相手に、得意満面におしゃべりしているではないか。時々兄ちゃん達の代表が、なにか質問している。
「この電車はね、モハなんとかのなんという車両」。「動物とぶつかったのは貨物電車だから、機関車は桃太郎だったかもしれん。桃太郎でなかったら、なんとなんとかよ」と、小難しいカタカナ名前をスラスラっと並べる。「貨物電車には直流と交流があって、引っ張る重量によって、直流車と交流車を使い分ける」。「この電車の連結の仕方は〇〇という方法なんよ」。
まるで鉄道博士にでもなったように、とうとうとしゃべり倒す。お兄さんたちが「ホ~~すごいね君は」などと言えばまだまだ続けてしゃべっている。間には「じいちゃんが孫新聞を作ってくれる。今日の野球観戦も新聞になるんよ」などと、ジジを持ちあげる世辞も忘れてはいない。
6年生が大人4人を煙に巻きながら、思いもかけない緊急停車の待ち時間を、退屈させずに独演会を開いている。
どう考えても普段は見せない彼の別な姿である。腹の中で大笑いしながらジジも聞き入ってしまった。
あれこれおねだりもあって大きな散在にはなったが、久しぶりに心底楽しめる一日になった。
翌々日の新聞に「イノシシと電車衝突」の見出しで「後続の普通電車上下9本が最大35分遅れた」と報じていた。
それも、生半可な興味ではなく、勉強熱心な所もすごいと感じます。
お兄さん4人カー君ワールドに引き込まれたことでしょう。
緊急停止記事を昨日朝見ましたが、影響を受けた1400人の内の二人だったとはね~。
これもカー君にとっては忘れられない思い出となったことでしょうね。
それにしても、いかつい兄ちゃん4人が、カー君に引っ張られて連結部分を覗きに行ったり、大笑いしている様子は見ていて楽しかったです。
色んな事で、この日が印象付けられたらありがたいのですが。
「和木駅」は岩国・大竹間にある、和木町に、5年前に新しくできた駅です。
岩国・大竹コンビナートに働く人の拠点駅となっています。