ひまわりの種

毎日の診療や暮しの中で感じたことを、思いつくまま書いていきます。
不定期更新、ご容赦下さい。

大変なことになってしまった!!

2011年03月05日 | 医療
つい最近、肺炎球菌ワクチンとヒブ(髄膜炎菌)ワクチン接種後に、
4人の乳児が死亡したとのこと。
お亡くなりになったお子さん方のご冥福を、心よりお祈りいたします。

今日3月5日から、因果関係など詳細が解明されるまでの当面の間、
それぞれのワクチンの接種を見合わせるとのことです。
国や厚労省というお役所の立場とすれば、これは仕方ない対応なのでしょう。

・・が、
かつてのMMR(麻しん・風しん・おたふくかぜの混合)ワクチンや、
最近の日本脳炎ワクチンの二の舞にならなければいいが・・・、
と危惧しています。

肺炎球菌ワクチンもヒブワクチンも、一部の途上国をのぞいた世界各国で、
もう10年以上も前から「定期接種」としてすすめられているワクチンです。
先進国の中では一番遅くに、ようやく日本でも導入され、
高価なワクチンながらも、だいぶ普及してきたところでした。
最近になってやっと、公費補助の制度もできつつありました。

そこへ持ってきての、この出来事です。
全国の小児科医たちも、当惑しています。

乳児が肺炎球菌や髄膜炎菌に感染し髄膜炎を発症すれば、
命を落とすか、助かっても殆どに後遺症が残ってしまいます。
これは、麻しんなどにも起こりえます。(麻しんはウイルスですが)
わたしも、そういったお子さんたちを何人か診てきました。
また、年長児でも、治りにくい中耳炎の原因菌として、
肺炎球菌や髄膜炎菌はたびたび検出されます。
最近ではこれらの耐性菌(抗生物質が効きにくい)も問題になっています。

髄膜炎を発症して亡くなった、あるいは後遺症を残してしまった、
というお子さんたちの親御さんの思いはどれほどのものか、
それは、わたしにとっても今でも、
「あの時のあの患者さん」として記憶に残っています。
そういう時、医師も悔しく情けなく、気持ちの置き場がありません。

一方、ワクチン接種後にお子さんを亡くした親御さんの思いも、
想像するに余りあります。
今までわたし自身には、ワクチン接種後の重篤な副作用の経験はないのですが、
もし、接種したお子さんたちがそのような状況になったら・・・。

どちらの立場になっても、せつない。辛い。悔しい。

今日から親御さんたちにどのようにご説明すればいいのか・・・、
わたしたちも、混乱しています。

ワクチンの目的は、ただひとつ。
子どもたちの健康と未来です。
国や医師の利益ではなく。