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放浪探偵と7つの殺人 歌野晶午

最近まとめて読みだした著者の短編集。作者の短編集は初めてなのでどんな感じなのだろうかとか、題名には7つの殺人とあるが、目次をみると短編が8つ収録されていて、ここにも何か作者のトリックのようなものがあるのかなどと思いながら読み始めた。読んでいくと、全ての短編に同じ人物が「探偵役」として登場する。その探偵役の主人公が大変奇妙で、名前は同じで、推理の見事さも共通しているのだが、職業とか登場の仕方がどれもばらばらで、とても同一人物とは思えないような描かれ方をしているのが面白い。特に気に入った作品は「水難の夜」だ。トリックの斬新さもさることながら、後になってわかる人を食ったような語りの面白さ、これは短編ミステリーの傑作だと思う。(「放浪探偵と7つの殺人」 歌野晶午、講談社文庫)

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岬にて 乃南アサ

著者の傑作短編集とのことで、ミステリー色の強い作品から純文学的な作品まで、色々なジャンルの作品を堪能した。何だか辻褄の合わない話なので、ホラーとかSFのような作品だろうかと思ったら、全く別の意味を持った意外な内容だったという作品もあり、これなどは、自分が読んでいる話のジャンルが分からないことが却って話を面白くさせてくれたような気がする。どの短編もそれぞれに味があって粒揃いだが、なかでも日本の職人のこだわりを描いた幾つかの作品は、きめ細かな感性とそこからくる意外な話の展開が素晴らしい。珠玉の短編集という形容詞がおおげさに感じられない一冊だ。(「岬にて」 乃南アサ、新潮文庫)

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プラスマイナスゼロ 若竹七海

女子高校生3人が色々な事件に巻き込まれたり、事件を解決したり、時には事件を引き起こしたりという、かなりドタバタなミステリー短編集。事件の内容も、高校生の日常の些細な事件から、凶悪な殺人事件まで、幅広い。このトリオのシリーズは、長編ミステリーが何冊も出ているらしい。内容的には簡単に読める短編集の方が良い気もするが、長編では別の面白さを見せてくれるのだろうか。とにかくこのシリーズの長編を1つ読んで見なければと思った。(「プラスマイナスゼロ」 若竹七海、ポプラ文庫)

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ポイズンドーター・ホーリーマザー 湊かなえ

作者の作品は、非常に高い確率でかなり面白いと思っていたのだが、最近は少しその面白さが減ってきているような気がしていた。何といっても、これだけの作品を書いていると、やはり粗製乱造ではないが、高い水準を維持していくのは難しいのかなぁと感じていた。それでも、何か面白いことが待っているようでつい手に取ってしまうのが作者の本だ。本書については、作者の短編集ということで、そこに何か新しい面白さがあるのではないか、そんな期待を持って読み始めた。ここに収められた六つの作品は、いずれも娘を束縛する「毒親」と呼ばれる母親に人生をくるわされたと感じる娘の話だ。しかし読み進めるうちに、話はそんなに単純ではなく、毒を放っているのは実は「娘」の方なのではないかということになる。娘がやがて母親になり、その娘が同じように母親を糾弾するのを見ると、この問題の奥の深さが際立つ。何ともやり切れない読後感の一冊だ。より社会的な問題を孕んでいる点で「告白」以上の問題作にも思える。(「ポイズンドーター・ホーリーマザー」 湊かなえ、光文社)

 

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