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夜明けのカルテ 牛島志季他

医師作家の短編アンソロジー集。9作品が収められているが、そのうち作品を読んだ記憶のあるの作家の作品は2つだけ。世の中には予想以上に医師作家が多いんだなぁと感心すると同時に、それらのエンタメ要素以外に訴えてくる内容の重さ、文章の面白さに驚かされた。人の生死と向き合う職業柄、色々なドラマがあることがその最大の理由だろうが、読んでいると、旧態然とした医学会という世界の権威主義とかパワハラ体質への強い憤りが大きな背景の一つとしてあるような気がする。どの作品も面白かったが、ガンの生体検査がガンの転移を誘発するという論文発表をめぐる攻防を描いた「闇の論文」は、その内容の真偽は別にして、非常に悩ましい問題提起に考え込まされてしまった。また、伊豆市の周産期医療センターの医師の活躍を描いた「峠を越えてきた命」はつい先日オリジナルの連作集を読んだばかりだったが、改めてこの作品のすごさを実感した。(「夜明けのカルテ」 牛島志季他、新潮文庫)
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