著者の本はこれで2冊目。本書の存在をどこで知ったのか、面白いという情報をどこで得たのかあまり記憶にないのだが、自分のネット書店の「お気に入りスト」に入っているのを見つけて購入した一冊。本書は全編が対談と対談者の心の内が交互に記述されている独特の文章。本書の最初に「そうした形式が最初のうちは読みにくいと思うが慣れるまで我慢して読んでほしい」という著者からの文章が添えられている。しかし実際に読んでみると、対談で喋っている人物がその後の独白の本人という関係がきちんと保たれているので、読んでいる部分が誰の視点の文章かがすぐに分かって、むしろ変に視点が変わる文よりも読みやすい気がした。話は、人の本心なんてこんなものかという程度の話からどんどん逸脱して登場人物全部が犯罪者という様相になり、さらに二転三転、最後は自分自身よく整理できないくらいにはちゃめちゃになって終わる。これで良いのかという疑問も受け付けないくらいのドタバタ劇だ。ツッコミどころは沢山あるが、面白かったので全く文句はない。(「殺意の対談」 藤崎翔、角川文庫)