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レプリカたちの夜 一條次郎

各方面で高い評価を受けているようなので、読んでみることにした。舞台は、多くの動植物が絶滅してしまったという近未来。未来とはいってもあまりテクノロジーは進歩していないところが面白い。主人公は、その未来世界で、絶滅してしまった動物の観賞用のレプリカを作っている工場で働く青年で、その彼がある日工場内で絶滅したはずのシロクマが歩いているのを目撃するところから話は始まる。その後も、かれの周りでは様々な奇怪な現象が巻き起こる。荒唐無稽な出来事が起こる物語では、通常読み手の関心は、これがこの作品の世界の中で本当に起きている出来事なのか、それとも主人公の心の中の妄想なのかという点に収れんする。前者ならばすごく立派なSF作品ということになるだろうし、もし後者であればSFというよりは幻想小説ということになる。本書はそのちょうど中間のようなものかもしれない。ビックリするような結末ではないが、読んでいて面白かったし、色々考えさせられる一冊だった。(「レプリカたちの夜」 一條次郎、新潮社)

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