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犬とハモニカ 江國香織

小説を読むことの意味のひとつに、読みながらある感情に浸るということがあるように思う。ストーリー展開にハラハラするでもなく、最後のどんでん返しを楽しみにするでもなく、ただ読んでいる時に感じる思いに浸るという読書がある。本書は、まさにそうした読書をすることを楽しむ一冊だ。楽しむといっても、本当に楽しい気分になることもあれば、沈鬱な気分になることもある。本書はどちらかといえば、静かに孤独な気分になるという類の話が収められている。空港を行き交う人々、自分の部屋で寝る時に感じる思いなど、何れを読んでも、何となく人というのは孤独なんだなぁ、同じ場所で同じものを見ていても結局人はそれぞれ違うものを見ていて違うことを考えているんだなぁという気分になる。元気を貰える小説ではないが、こうした気分を味わった先に、人生色々という開き直りに近い感情が湧き上がってくる気がした。(「犬とハモニカ」 江國香織、新潮文庫)

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