老化について考えてきましたが、そもそも老化とは悪い事なのでしょうか、殆どの方は老化にネガティブな考えをお持ちではないでしょうか。
純粋に生物学的な観点から見ると、老化とは生体のもつ防御システムととらえることもできます。 例えば、ヒトの細胞は生きている間分裂を繰り返しますが、回数を重ねるごとにDNA複製エラーの頻度が増し、その結果、異常細胞(がん細胞)出現のリスクが高くなってくるといわれています。 そのために、テロメア短縮の機能を使ってこういった異常細胞の出現を老化という現象で抑制しているという説もあります。
つまり、我々の体は自己細胞のがん化を避ける代償として細胞死を選択しているのだというのです。 アポトーシスによる細胞自殺も、見方を変えればある一定以上の細胞障害を起こさせないようにする、一種の防御システムといえるかもしれません。
また、肉体的な若さだけが、人間が生きていくうえで価値あるものでしょうか。 人生の集大成としての老年期、人生経験がかもしだすあたたかさ、というのもあるでしょう。
体の老化現象が始まっても、幸い、不思議なことに脳の活動能力自体はそう衰えないといわれています。 歴史をひもといても芸術分野などでは晩年のほうが円熟味にあふれた、評価が高いものがあります。 つまり、自然の摂理として、身体機能は落ちても、知的活動は死ぬまでさほど衰えないということです。
かの日野原重明先生は、その著書『生き方上手』のなかで「老いとは衰弱ではなく成熟すること」といわれてます、知的な活動は年をとってこそ達成できるものも少なくないのです。
今回はこの辺で、何でも鑑定します、という番組見てても、やはり晩年の作というのは若いときにはない素晴らしいものがあります。