百田尚樹『永遠の0』を読んだ。先日映画を鑑賞しにトウホウシネマズ下田に行った時、予告編で『永遠の0』が近日上映となっていた。私は、表題から内容を想像できなかったのだが、日本海軍の名戦闘機と言われた零戦にかんするものらしいと知った。それで書店を眺めると「ベストセラー」になった本らしいではないか。もともと「はやりもの」や何々賞受賞作とかを読み漁る方ではないのだが、これは読んでおかないとと思い購入しておいた(講談社文庫876円=本体)ものである。
百田尚樹は1968年、大阪生まれ、同志社大学を中退し放送作家。2006年『永遠の0』で作家デビュー。『海賊と呼ばれた男』で第10回本屋大賞を受賞した。
物語は、健太郎という26歳の男が姉に頼まれて戦死した祖父の足跡を追っていく。祖母が戦後今の夫と結婚したので、健太郎たちは現在の「祖父」とは血がつながっていないという設定。戦死した祖父の残した子供である母に、祖父がどう生きたかを知らせるために、当時の戦友たちに話を聞いていく。祖父は零戦のパイロットで、真珠湾攻撃、ミッドウエー海戦にも参加した名パイロットだったが、「家族のもとに必ず帰る」と言い、臆病者とも言われれていた。しかし、その実像はまさに名人芸の操縦をする人だった。そして「生き残る」ことが戦いに勝利する道だという信念を持っていたが、特攻という必ず死ななければならない作戦に怒りを持ち、終戦の直前に自らも特攻に加わって戦死してしまう。同時に出撃した教え子と機体を入れ替わり、その機は故障で喜界島に不時着するのだがその機を操縦した教え子に家族の将来をたくす手紙を残す。そして彼が、祖母の再婚相手となってのである。エピローグで、超低空飛行で米空母に迫って飛行甲板に突入した零戦があったことを書いているが、それが亡くなった祖父であることを暗示している。
アニメ『風立ちぬ』以来、なぜか零戦の書かれたものを読んでいる。零戦は素晴らしい戦闘能力を持った戦闘機であったが、旧日本軍の徹底した人命軽視の思想を反映した飛行機でもあったらしい。それは長距離を飛んで敵を攻撃できる点で極めて侵略的であるとともに、パイロットを守る防御装置はほとんどなく、燃料タンクも防御されていない。私は、この本がそうした旧日本軍の体質を厳しく告発するものになっている点を感じながら読んだ。欲を言えば、その戦争が絶対主義的な天皇制政府のもとで進められたことについても踏み込んでほしい気がしたが…。
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